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首相官邸前抗議、なぜ取り上げられなかった…反原発ドキュメンタリー監督が分析

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「忘れ去られてしまうのは許しがたかった」と製作の理由を語る小熊英二監督
「忘れ去られてしまうのは許しがたかった」と製作の理由を語る小熊英二監督

 歴史社会学者の小熊英二が初監督を務めたドキュメンタリー映画『首相官邸の前で』トークイベントが5日に渋谷のアップリンクで行われ、小熊監督と作家の高橋源一郎が登壇。首相官邸前デモについて、熱いトークを繰り広げた。

映画『首相官邸の前で』場面写真

 2012年夏。首相官邸前は、福島第一原子力発電所事故の政府対応に非難の声を上げる20万人の群衆で埋め尽くされた。「これほどのことがあったのに、忘れ去られてしまうのは許しがたかった」と語る小熊監督は、個人がインターネットを通じて配信していた自主撮影映像を、撮影者の許可を得て再構成。菅直人元首相を含む8人のインタビュー映像を挿入し、1本の作品に仕上げた。

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 「映画を観て10分で、これは素晴らしい作品だと思いました。後半の(音楽が鳴り響く)デモ映像は非常にエモーショナルで、高揚感があった」と感想を述べた高橋に対し、小熊監督は「記録であると同時に映像として力強いものを選んだ。これはどうみても本気だというものを優先させた」と満足げな表情。

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同作を絶賛した高橋源一郎

 「この国の人たちは忘れやすい。その結果、何が起こっても誰も責任をとらない。この記録が持つ意味は忘れさせないということ」という高橋の指摘に、小熊監督は「なぜこのデモがマスコミで取り上げられなかったのか。それは決して政治的な意味合いではなく、記者クラブなどに情報が入ってこなかったから。デモに参加する人は無名の人たちだからつながりもない。どう取り上げていいのか戸惑っているうちに通り過ぎてしまった。逆になぜ全共闘運動が記録に残っているのか。それは東大で起きたからです。無名の人と違ってトップの人は記録に残りやすいんですよ」とコメント。その言葉には高橋も「そういうことか!」と感心することしきりだった。

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 続けて高橋は、「今、国会前では、学生たちによるSEALDs(自由で民主的な社会を守るため)のデモが行われている。この子たちは高校生の時に2011年の反原発デモの周りにいた子たち。あのデモが、若い世代が持っていた政治やデモに対する不安や恐怖心を消し去った。そういう意味で、反原発デモの次の世代が育っている」とコメントすると、小熊監督も「それは確実にこの4年の蓄積。マスメディアも学習して、デモを取り上げるようになってきた。これも化学変化だと思う」と笑顔を見せ、「この記録は共有されてこそ記憶になる。ぜひともこの作品を観てもらいたい」と付け加えた。(取材・文:壬生智裕)

映画『首相官邸の前で』は9月2日より隔週水曜に渋谷のアップリンクで上映予定

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