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震災から6年…今一度フクシマ、「生きること」を見つめ直す、今は亡き映画監督が撮った『残されし大地』

震災から6年…今一度フクシマ、「生きること」を見つめ直す、今は亡き映画監督が撮った『残されし大地』
フクシマの音を聞き、今を見る - (C) CVB / WIP / TAKE FIVE - 2016 - Tous droits reserves

 東日本大震災から今日で6年がたった。震災直後には「福島」や「原発」、「被災地」をテーマにしたドキュメンタリー映画が数多く公開されたが、時が経つにつれて震災を切り取った映画の公開は年々少なくなっている。そんな中、3月11日に公開初日を迎える一本の映画がある。監督はベルギーを拠点に活動するサウンドエンジニアのジル・ローラン。本作がドキュメンタリーの監督処女作となる。(森田真帆)

 本作は、震災直後から帰還困難区域に指定された、福島第一原発から約12キロ離れた場所にある双葉郡富岡町に父親と二人でとどまり、街に残された動物たちの世話を続けている松村直登さんを中心に2011年3月11日を境に愛する故郷を<汚染地域>に変えられてしまった人たちの日々を記録したドキュメンタリー。“土地と寄り添いながら生きる人たちの力強さ”をテーマに本作を撮ろうと考えていたというジルさんの目は、時に優しく、時に力強く、福島にとどまる人間を映し出す。

 もともとがサウンドエンジニアだったというジルさんが捉えた、福島の音にも耳を傾けてもらいたい。小鳥のさえずり、風のそよぐ音、虫の音色、昔から変わることのなかったその土地の美しい音が劇場の中に満ちる。変わらない音があるからこそ、一日に数時間だけ許される帰宅者たちに出発の時間を伝える町内放送の声が印象的だ。その声こそが富岡町の現実であり、そしてその音は、震災から5年経ってもなお大変な生活を余儀なくされている人々がいる「今」を私たちに気づかせることだろう。

 だが、妻の故郷である日本に興味を抱き、みずからメガホンをとる決意をし、福島の日常をドキュメンタリーにしたジル・ローラン監督が、初日舞台あいさつに立つことはない。ローラン監督は、パリ同時テロ後の12月、編集作業のために祖国ベルギー・ブリュッセルに一時帰国。編集作業がひと通り終わり、内覧試写をする予定だった2016年3月22日、ベルギー地下鉄テロで命を落とし亡くなった。享年47歳。二人の娘と夫人の鵜戸玲子さんを遺し突然の別れだった。

 筆者は京都国際映画祭のパーティーで玲子さんと言葉を交わすことができたが、その時に聞いたご主人の遺品にお子さんと拾ったどんぐりが入っていたという話が忘れられない。ある日を境に、家族にさようならを言うこともできないまま、この世を去った多くの犠牲者に思いを馳せ、残された土地に生きる私たちもまた、改めて「生」を見つめ直すきっかけになる映画となるはずだ。

映画『残されし大地』は3月11日より全国にて順次公開


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