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この映画は実現しないだろう…人種差別スリラーを大ヒットに導いた監督の本音

何かがおかしい…じわじわ感じる違和感が特徴『ゲット・アウト』
何かがおかしい…じわじわ感じる違和感が特徴『ゲット・アウト』 - (C)2017 UNIVERSAL STUDIOS All Rights Reserved

 低予算ながらも全米初登場1位の大ヒットを記録した人種差別がテーマのスリラー映画『ゲット・アウト』で映画長編監督デビューを果たしたジョーダン・ピールがインタビューに応じ、「この映画は実現しないだろう……」と思っていたなど、本作の成功を独自の視点で振り返った。

映画『ゲット・アウト』予告編

 アメリカではコメディアンとして知られているジョーダンが、監督・脚本を務めた本作。ニューヨークに暮らすアフリカ系アメリカ人の青年クリスが、ある週末に白人の恋人ローズの実家へと招かれ、そこで想像を絶する恐怖を体験するさまを描き出す。

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ジョーダン・ピール監督 - (C)2017 UNIVERSAL STUDIOS All Rights Reserved

 人種差別というなんともタイムリーな題材を扱っているが、本作のアイデアはかなり前からあったのだという。「2008年にこの映画を思いつき、そこから自分でプロットなどを練り始めたんですが、最初は扱っているテーマがテーマなので、完成するわけがないと思っていました。ただ書いていて楽しいので、あらすじや脚本をコツコツと書いては直すのを続けていました。今まで観たことのないような、自分が観たいと思えるような映画を作りたいと、純粋な気持ちで書いていました。プレッシャーもなく仕上げられたのは、この映画は実現しないだろうと思っていたからだと思います」。

 そうして完成した脚本は、シンプルなストーリーに、驚きの仕掛けが散りばめられている。ホラーとコメディーについて「タイミングを計って予想の裏をつくような、そういった手法が似ています」と類似点を指摘するように、人気コメディアンのジョーダンだからこそ書き上げられたのだろうと思わざるを得ない。「あまり深い社会派映画というか、現実的な問題を現実的にそのまま描くのではなく、私がホラーやスリラーというジャンルが好きな理由の一つでもあるのですが、少しオブラートに包む、例えば謎解きや、クスッと笑えるところなどで包み隠して、サラッと社会的なテーマを取り上げていけるジャンルだと思うんです。なるべく軽妙な楽しいトーンで、観客にとって、コメディーやミステリーなど、謎解きをしながら楽しめる映画にしつつ、やはり自分が最初に描きたかった題材をきちんと描けるようにしました。それは、一番心がけたことでもあり、難しかったことでもあります」。

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 そんな脚本にホラー映画のヒットメイカーであるジェイソン・ブラムも興味を示し、本格始動。しかし、いざ製作が決まってからは不安も。「最初は題材が題材なだけに、賛否両論になるだろうな、という心配がありました。というのも表面的に見れば黒人が虐げられて、白人が悪者、というようなストーリーなのでどっちの客層に対しても意見が分かれるのではないか、反発を買うのではないかと思っていました。なので、この映画を撮影していく上で一番気をつけたのはバランスを上手く保つことでした」。

 蓋を開けてみると、全米初登場No.1を記録し、たちまち注目を浴びる。「大ヒットしたのは、自分が結婚した日や、子どもが生まれた時と同じくらい嬉しかったです。自分が目指したのは、とにかくエンターテインメント、娯楽作品で観客を楽しませたいというのが一番の目標でした」とその喜びを口にするジョーダン。「また、観終わってから友達と何時間もその映画について語り合い、盛り上がり、色んな問いかけをしたくなるような映画にしたい、という意味でも成功だったんじゃないかと思います。主人公を演じたダニエル・カルーヤの観客を引きつける共感性にも大きく助けられました。それに、自分が思っていたより客層があまり割れなかったというのと、皆が同じように楽しんでくれ、観客が主人公に共感しながら、自分が普段経験しているものとは全く違う現実を、数時間の間、映画を通して知ることによって色んな問題について改めて考え始めるという、問題提起ができたと思っています」と監督デビュー作にして確かな手ごたえを感じたようだ。

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 すでに次回作の構想もあるそうで、「また社会派スリラーというジャンルを更に深く追求したいと思っています。ただ『ゲット・アウト』とは全く違ったタイプの映画になると思います。テーマは人種差別とかではなく、また一味違った、社会が抱える問題をスリラーというジャンルを通してできたらなと思っています。次回作も私が監督・脚本を担当し、今まさに書いています」と意欲を見せていた。(編集部・石神恵美子)

映画『ゲット・アウト』は10月27日より全国公開

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