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娯楽で不倫は許されるのか?上映禁止になり20年間日の目をみなかった名作映画

映画『ゲームの規則』(1939年)
映画『ゲームの規則』(1939年) - Cine Classics / Photofest / Getty Images

 特にここ最近、日本のエンターテイメント業界は不倫にとても厳しい。婚姻状態にいる人間が配偶者以外と恋愛をすることが明るみになった芸能人は罪人がごとく扱われ世間から消えていく。映画やドラマの内容でも不倫がドロ沼に陥っていく作品はかろうじて支持を受けるが、肯定的に扱ったりコメディーのようにちゃかしたりする作品はそれ自体あまり日の目を見ない。

 第二次世界大戦が始まる前、不倫関係が入り乱れるコメディー映画が製作されたのだが、あのフランスでさえ、上映禁止になった映画が『ゲームの規則』だ。

 物語は冒頭から不穏な空気が流れる。偉業を成し遂げた飛行家が、偉業をたたえるその場に大勢の人が集まってきているのに大切な人が出迎えていないことをなげく。その発言はラジオの電波に乗って公のものとなる。だが、その大切な人とは人妻だ。そしてその人妻が侯爵婦人であることから、上流階級の人たちが繰り広げるパーティを舞台に物語は進んでいきやがては侯爵家の屋敷の使用人たちもこの不倫関係に絡み合い物語は思わぬ結末を迎える。

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 公開直後この作品の興行は芳しくなかったのだが、やがて第2次世界大戦が始まり、政府から上映禁止命令が出てしまう。主な理由は社会的な秩序を乱すからだという。その後ひっそりとお蔵入りになったこの映画が、20年の時を経て再び日の当たる場所に登場したのはベネチア国際映画祭だ。

 映画を見る目に超えている映画人たちはこの傑作を見逃さなかった。大勢の人間が入り乱れる画を舞台劇のようにセットや人間を配置しながらカメラを移動させ撮った映像は立体感があり、それがモノクロによく映え芸術点は申し分ない。なにより上流階級の人たちを揶揄するような内容はこっけいでもあり、そのような社会とは縁のない人々の好奇心をあおった。その後、この映画は傑作映画の称号を得て現在に至る。

 不倫は文化だと発言した有名人も過去話題になったことがあるが当事者が発言するのはやはりまずかった。たくさんの非難を浴びた。しかし、多くの人々がこの言葉になぜか心引かれ、いまだに残っているのは理解できる。欲望と理性のはざまでゆれる不倫の渦中にいる人間の行動は矛盾にみちていてどこか滑稽であることからエンターテインメントの題材としてうってつけであり、その刹那的な生き方をする人々を表現することができれば、芸術として傑作になる可能性も秘めている。本作はすこし度を超した不倫関係を描く群像劇だが、芸術作品として見事に成立している。(編集部:下村麻美)

製作年:1939年(110分)モノクロ
製作国:フランス
監督:ジャン・ルノワール
出演:マルセル・ダリオ、ジャン・ルノワール

映画『ゲームの規則』は金曜レイトショーにて11月13日23:00より無料ライブ配信

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