『るろ剣』最終章、黒の剣心が意味するものとは?大友啓史監督、これまでのシリーズとの決定的な違い語る

『るろうに剣心 最終章 The Beginning』より“人斬り抜刀斎”時代の緋村(佐藤健)
『るろうに剣心 最終章 The Beginning』より“人斬り抜刀斎”時代の緋村(佐藤健) - (C) 和月伸宏/集英社 (C) 2020 映画「るろうに剣心 最終章 The Final / The Beginning」製作委員会

 現在公開中の映画『るろうに剣心 最終章 The Beginning』。シリーズ第5作、最終作となる本作では、佐藤健演じる主人公・緋村剣心が不殺(ころさず)の誓いを立てた逆刃刀ではなく真剣を振るっていた「人斬り抜刀斎」時代の哀しいエピソードが描かれる。剣心と言えば赤の着物がトレードマークだったが、本作で基調となるのは黒。そこにどんな意味があるのか? シリーズ全作品のメガホンをとった大友啓史監督が語った。

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 和月伸宏の人気コミックを大友啓史監督が実写化した映画『るろうに剣心』シリーズのラストを飾る「最終章」2部作。4月23日より公開された『るろうに剣心 最終章 The Final』では、剣心が彼の過去、そして十字傷の謎を知る最恐の敵・雪代縁(新田真剣佑)と対峙し、熾烈なクライマックスが描かれる。6月4日より公開されたシリーズ完結作『The Beginning』では、剣心が桂小五郎(高橋一生)率いる倒幕派の影の暗殺者として生きていた時代を、雪代巴(有村架純)とのエピソードを軸に描出。剣心の左頬に刻まれた十字傷の謎が、遂に明かされる。

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 もともと剣心が赤い着物をまとうようになったのは、第1作で神谷薫(武井咲)が「人斬り抜刀斎」としての剣心の過去を受け入れ、彼を「人を活かす」刀を振るう神谷道場の仲間に迎え、亡き父の形見である赤い着物を譲ってからだった。『The Beginning』の剣心の着物が黒メインであることは、時代が大きく影響しているという。

 大友監督いわく、『The Beginning』はこれまでのシリーズとは真逆を行く作品。前シリーズでは明治維新後の東京を舞台にしているのに対し、本作では幕末の京都で物語が展開する。「前シリーズまでの時代背景は、維新が終わり、士農工商という身分制度がなくなったことで人々が抑圧から解放された、いわば希望に充ちた新時代です。悪人たちも、一作目の武田観柳(香川照之)に代表されるように、暗闇ではなく白昼堂々登場し、悪事を重ねていく。志々雄真実(藤原竜也)に至っては、廃刀令が発令され、刀を持ってはいけない時代に、“弱肉強食”の論理の下、平然と人を斬り、黒船のような巨艦を建造し、国の転覆を正面から謀っていく。物語のスケールが大きいですよね。100年以上前の時代が舞台ですから、時代劇といえば時代劇なんだけれども、陰影の深い、いわゆる狭い意味での“時代劇”とはちょっと違う。シリーズ当初から僕は、『るろうに剣心』シリーズはマーベル映画のような、ある種の現代性やポップさを備えたエンターテイメント映画であって、時代劇という言葉から想像されるものとは違うものを目指そうと、スタッフに話していたんですね」

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るろうに剣心
巴(有村架純)と抜刀斎

 一方、『The Beginning』の剣心を、「幕末の京都の闇をうごめきながら、桂ら維新の指導者の目指す新時代到来のために剣を振るい、容赦なく人の命を奪ってきた孤高のテロリスト」と評する大友監督。「当時の体制側からすると、剣心は幕府側の人間を何人も切り殺した、まぎれもない犯罪者であり、追手の目を逃れるため、庇護者に匿われ、闇に潜みながら生活しているわけです。映画の中で描かれたように、巴に声をかけられないと祭りに出向くようなことはしない。まだ十代の青年ですからね、外から祭りの囃子が聞こえてきて心を奪われそうになるけれども、白昼の表通りに、そう簡単に顔を出すようなことはできない。そういう『裏街道』を生きているわけですからね。というように、もともと剣心の設定やストーリーのテイストが前シリーズまでとは違うので、自ずとルックも変わってくるんですよね。衣装、映像も含めダークになり、まさに幕末のテイストになっていく。そもそも建物も違いますからね。電気が通った明治になると、洋風のコンクリート建築が見られるのに対し、幕末は木と紙でできた日本家屋が中心ですから」

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 『The Beginning』での剣心の着物は、系統としては黒、プラス寒色。「甘く見えないようソリッドかつシンプルに設計した」という。「剣心の着物についても、黒のほか紺、濃紺など、同系色のグラデーションを意識しています。加えて、燭台の灯りがある場面などでは少し青味を入れて紫系統にしたり、細かく一つ一つのシーンごとに衣装などの色彩を調整しています。後半、ラストの辰巳(北村一輝)との闘いのシーンでは、巴と同系色の薄いブルーに変えました。『The Final』は逆で、縁のオレンジの衣装に代表されるように、もう少し華やかさ、艶やかさを意識しています」

るろうに剣心
後半は薄いブルーの着物に

 一方、最終章だからと言って、佐藤とあらたまって話すようなことはなかったと大友監督。佐藤とは『京都大火編』『伝説の最期編』後の2015年頃から『The Beginning』の話をしていたと言い、「当時から、やる? やらない? やる? じゃあ、しんどいけどまたやろうね。っていう感じで。何をやるべきかというベクトルの方向性については、お互いもう理解していましたからね」と振り返る。「強いて言えば、これまでのシリーズとは全く違った、時代劇に寄せた幕末のラブストーリーだから、できるだけシンプルにいこうと。脚本のことを話しながら、そんなことを話したぐらいかな。今回の佐藤健くんの芝居プランは、できるだけ何もしないでそこにいるということだけを考えていたようですが、それはまさに、前提として常に話していたことですからね。僕らは、佐藤健が常に現場で“剣心として”いられるように、とにかく彼の背中を押すあらゆることを考えようと。衣装に対するオーダーなども澤田石(衣裳デザイン/キャラクターデザイン)が何となくわかっているし、立ち回り、撮影についてもこれまでとは全然違うということを谷垣(健治)さん(アクション監督)、石坂(拓郎)さん(撮影)ら、スタッフがみな認識していた。それは、オーソドックスな時代劇をベースとして、剣心と巴の間に起きた運命的な悲劇の物語を掘り下げて描いていきましょうということです」

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 大友監督と言えば、予定よりも長くカメラを回し続けることで俳優の力を引き出す「長まわし」の撮影スタイルで知られるが、今回に限っては例外で「通常よりテイクが少なかった」とも。その理由は、撮影の負担がこれまでに比べて格段に大きかったことによる。「例えば、前作は前後編だからキャスト、衣装、舞台もほぼ一貫しています。だけど今回は全く違う2本の作品をほぼ同時に準備し、撮っていたことになりますからね。『The Final』は新時代の東京、『The Beginning』は幕末の京都ということでロケーションの場所もロケハンの手間も倍になるし、キャストの数も同様で、その分衣装合わせやメイク、プランニングしなければならないことが膨大で。撮影の裏側でも常に準備に追われていましたね。俳優、スタッフのコンディションも考えながらやらないと大変なことになってしまうので、撮影中、いわば遊ぶ余裕や時間はまったくなかったですね」と、時代も舞台も全く違う2作品の苦労を振り返った。

 剣心がこれまで封印していた過去を明かし、その過去と向き合う『The Final』と、その過去を描く『The Beginning』。まったく異なる佐藤を見られるが、大友監督は、2作は「いわばコインの表と裏」とも言い、2作観ることで完結する伏線が張り巡らされている。(編集部・石井百合子)

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