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ウルトラセブンはまだまだ輝き続ける 森次晃嗣、モロボシ・ダンと歩んだ55年

「ウルトラセブン」55周年インタビュー 森次晃嗣、セブンが愛され続ける理由を語る » 動画の詳細

 1967年の放送開始以来、世代を超えて愛され続けている不朽の名作「ウルトラセブン」が55周年を迎えた。今年の東京国際映画祭で記念上映が実施されるなど、再び注目を浴びているが、ウルトラセブン=モロボシ・ダンを演じた森次晃嗣は、こうした現状をどう捉えているのか? 55年前を振り返り、当時の撮影エピソードと共に、「ウルトラセブン」人気の秘密を解き明かした。

【動画】「ウルトラセブン」55周年、愛され続ける理由とは?森次晃嗣が紐解く

ほとんど即決で決まった初の主演作

「ウルトラセブン」55周年メインビジュアル -(c)円谷プロ

 現在も最新作「ウルトラマンデッカー」が放送されているウルトラマンシリーズ。先日NHKで放送された「発表!全ウルトラマン大投票」のウルトラヒーロー部門では、ウルトラセブンがウルトラマンティガに次ぐ2位にランクインした。最終結果について、森次は「セブンは2位で十分だと思います。今も毎年、新しいウルトラマンが続々と登場する中、『ウルトラセブン』は55年も前の作品。それが2位になるなんて、むしろ不思議なことだし、ありがたいことですよ」と素直な気持ちを見せる。

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 今から55年前、出演当時の状況はいかなるものであっただろうか。本作以前、「ウルトラQ」では佐原健二、「ウルトラマン」は黒部進と、いずれも東宝所属の俳優が主演として迎えられていたが、その流れを鑑みると、森次の起用は異例の大抜擢だったといえるだろう。出演決定時、森次は国際放映で、東宝制作のテレビドラマ「天下の青年」の撮影をしていた。「柔道部の一員としてレギュラー出演していたんだけど、撮影現場にいつも同じ人が見学に来ていた。後々わかることだけど、その人が円谷プロの演技事務の新野悟さんで、2回、3回と来る度に『あ、これはもしかして俺を見に来ているのか?』となんとなく思うようになり、実際に声をかけられました」

 森次によれば、その際に「『ウルトラマン』の次回作の主演を」とオファーを受けたといい、「最終的に新野さんに円谷プロに連れて行かれ、円谷英二さんやご子息で監督の円谷一さん、それから脚本家の金城哲夫さんといった主要なスタッフを前に、ほとんど即決みたいな感じで、出演が決まりました」と昭和42年4月~5月頃のエピソードを振り返った。

 「なぜ選ばれたのかは、僕自身もわからないんですよ。当時は全くの新人で、これから芸能界で頑張って行こうと思っていた中、舞い込んだ仕事がたまたま『ウルトラセブン』だった。だけど、地球に訪れたばかりのモロボシ・ダンを演じることは、自分の人生の生き方と、すごく上手くマッチしたんじゃないかなという気がしています」

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 「ウルトラセブン」では、キャストを現場に馴らした上で、要となる第1話の撮影に入るという製作意図に基づき、特に初期は製作順と放送順が異なる。野長瀬三摩地監督の「湖のひみつ」「緑の恐怖」(第3&2話)を皮切りに、満田かずほ監督(かずほは禾+斉)の「ダーク・ゾーン」「マックス号応答せよ」(第6話&第4話)、円谷一監督の「姿なき挑戦者」「消された時間」(第1話&第5話)といった順番で撮影が進められていった。

 「確かクランクインは7月で、最初に『湖のひみつ』の撮影から入りました。当初、アンヌ役は東宝の豊浦美子さんに決まっていて、衣装合わせ後に確か一度会っていたけど、当時は本編(映画)が主流だったでしょう。彼女は急遽、東宝の映画に出ることになり、ひし美ゆり子さん(当時は菱見百合子)が決まるまでの間は、一人で重たいヘルメットに暑い制服を着て、夏の山中をひたすら走り回っていたよ(笑)」と当時を懐かしんだ。

今思い返してもドラマティックな最終回

第49話「史上最大の侵略(後編)」より -(c)円谷プロ

 故郷の北海道から夢を抱いて上京してきた森次は、「ウルトラセブン」出演当時24歳。無我夢中でモロボシ・ダン役と向き合い、撮影に取り組んだが、そんな中、ターニングポイントとなったのが、ウルトラセブンがダンのモデルとなる青年・薩摩次郎と出会う第17話「地底GO!GO!GO!」である。「ダンの姿にモデルになった人間がいたというのは、最初の企画書には書かれてなかったんだよ。僕自身もあの回の台本を読んで初めて知った設定で、地球に舞い降りたウルトラセブンが、そういう勇気溢れる青年と遭遇し、その人間の姿を借りて、地球で過ごすことを決意する。前日譚的なドラマが後になって描かれるのがまた面白いし、あの回は今もとても好きだね。炭鉱で落盤に遭い、救助を待つ間のネズミのチュウ吉の場面とか、薩摩次郎として演じた部分もよく覚えているよ」

 また、宇宙人役をいかに人間味溢れる役柄として見せるかが、役者としてのやりがいであったとも語る。「アンヌと映画を観ながら、大きな煎餅をかじったり(第28話「700キロを突っ走れ!」)、色々やったよね(笑)。演じる役柄は宇宙人だから、本来なら生活感は全くないわけでしょう。そこを演じる僕自身が作り上げていけば、視聴者の皆さんも感情移入して付いて行くと思うし、難しい顔ばかりしていてもね……。僕自身は黙っていると怖いらしいけど(笑)、ユーモアを見せるのが好きで、そういった場面があれば快活に演じていました」

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 そして迎えた最終二部作が、第48話&第49話「史上最大の侵略」前後編だ。アンヌを前に正体を明かす場面は、今も名場面として語り継がれている。「上司であるキリヤマ隊長に言わないところがいいんだ。多分、隊長だったら『うん、そうだったのか』と一言で終わっていたと思うんですよ。それとなく積まれていたアンヌとの関係性があったし、心身共に深く傷ついたダンを親身になって支えてくれたのがアンヌだからね」

 告白する瞬間、シューマンのピアノ協奏曲が流れると共に、二人がシルエットになる演出もまた印象をより深いものとしている。脚本では「画面は一転して強烈な光をバックにしたダンとアンヌのシルエット」と記されているが、森次によれば、満田監督は真っ赤な太陽をバックに撮るつもりだったという。「自然を相手にした撮影はスケジュール的にも大変だし、なかなか撮れる場所がないでしょう。でも、逆にそれが良かった。(背景は)ベニア板に家庭で使うアルミホイルをスタッフみんなでしわしわにして貼り付けただけ。それも僕とアンヌが立っている間だけくらいの大きさしかなく、それに照明を当てている。普通では考えられない満田監督のアイデアが最大限の効果を発揮したと思う」

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 また、ゴース星人に捕らわれたアマギ隊員を助けに行くダンの純粋さや、キリヤマ隊長の「地球は我々人類の手で自ら守りぬかなければいけないんだ」との力強いメッセージ、そして最後を締め括るダンの笑顔と、いずれの場面も森次の脳裏には今も鮮明に焼き付いており、「今思い返しても非常にドラマティックな最終回だったと思う。今はもうあの笑顔は出せないよね」と心情を述べた。

関わった人間の力が作り上げた「ウルトラセブン」

森次晃嗣が思う「セブン」の魅力は脚本の良さ

 「ウルトラセブン」を終えてからも「帰ってきたウルトラマン」「ウルトラマンタロウ」のゲスト出演を経て、「ウルトラマンレオ」ではMACのモロボシ・ダン隊長としてレギュラー出演した。当初、隊長は別の役名が設定されていたが、森次からの希望でダンとしての登場が決まったという。その後も、特番からOV作品へと派生した平成ウルトラセブンシリーズ、「ウルトラマンメビウス」など様々な作品でダンを演じ続けた。「74歳(『劇場版 ウルトラマンオーブ 絆の力、おかりします!』)までダンを演じたからね。撮影も当時はフィルムだったけど、今は全てデジタルでしょう。後年の作品は、スタジオにセットも何もなくて全てグリーンバックで撮影して背景はCG処理だよ。時代は変わったと思ったね」

 改めて作品の魅力について聞いてみると、「脚本の良さ。30分の簡潔な内容で、バラエティー溢れる内容が一年間続き、それを才能ある何人もの監督が形にした。当時はスタッフも20代後半が中心で、若者たちが結集して、その情熱は映像の中に表れている」と力を込める。

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 森次が参加したのは、本編と呼ばれるドラマ部分だが、同じ撮影所(※東京美術センター、後の東宝ビルト)内で特撮も撮影していた。「特撮は徹夜する人もいるなど、きついスケジュールでした。そうしないと本編の撮影についていけない状況だった。本編のスケジュールもハードでしたね。一年間、走り続けるためには健康第一だし、今思い返せば若かったからできた。だけど、主演といっても、個人の力なんて小さなものだよ。やっぱり関わった人間がどれだけ素晴らしかったかですよ。亡くなったスタッフも多いけど、“セブンはまだまだ輝いてますよ”と、これからも広く伝えていきたい気持ちがあります。そのためにも僕自身、もっともっと長生きしなくちゃいけないね」。(取材・文:トヨタトモヒサ)

「ウルトラセブン」はTSUBURAYA IMAGINATIONで配信中

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