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「今際の国のアリス」てんびん回の裏側 ワンシチュエーションで静の恐怖描く

「今際の国のアリス」シーズン2より村上虹郎演じるチシヤ
「今際の国のアリス」シーズン2より村上虹郎演じるチシヤ - (C) 麻生羽呂・小学館/ROBOT

 山崎賢人土屋太鳳がダブル主演を務めるNetflixシリーズ「今際の国のアリス」シーズン2(全世界独占配信中)。ある日突然、命を懸けた“げぇむ”に強制参加させられる謎の世界“今際の国”で目覚めた人々のサバイバルを描いた本シリーズで、後半戦の山場の一つである“げぇむ”「てんびん」の裏側を、佐藤信介監督が明かした(一部ネタバレあり※山崎賢人の「崎」はたつさきが正式表記)。

【画像】「今際の国のアリス」シーズン2ビジュアルまとめ

 2010年から2016年まで「週刊少年サンデーS」「週刊少年サンデー」で連載された麻生羽呂のコミックを、『図書館戦争』『キングダム』シリーズの佐藤信介監督が実写化した本シリーズ。シーズン1は2020年12月より配信され、世界70か国以上でトップ10入り。昨年12月22日より配信されたシーズン2も90か国でTOP10入りし、日本のNetflix作品として最高視聴数を記録した。“今際の国”ではすべての滞在者に期限を示す“びざ”があり、期限までに“げぇむ”に参加してクリアしなければ抹殺される設定となっている。

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 “げぇむ”には、スペード(肉体型)、ダイヤ(知能型)、クラブ(バランス型)、ハート(心理型)と4種類のタイプがあり、参加者は“ぷれいやぁ”と呼ばれる。時には一人しか生き残れないパターンもあり、仲間同士で敵対関係に陥るように強いられることも。勝ち残る方がつらいとも思えるこの非情な世界で、アリス(山崎)とウサギ(土屋)は大切な仲間を失い絶望に暮れながらもさまざまな“げぇむ”をクリアしてきたが、なかでも異色なのが静の恐怖を描いた「てんびん」(知能型)だ。

阿部力演じるクズリュー

 「てんびん」は裁判所(最高裁)を舞台に、チシヤ(村上虹郎)、クズリュー(阿部力)ら5人の人物によって行われる。0から100の中から数字をひとつ選び、全員の平均値×0.8の数に最も近い数を選んだ者が勝者となる。円卓を囲む5人の人物は椅子に固定され、頭上にてんびんがつるされ、負けるごとにある液体が注がれて徐々に傾き、あふれ出すと死に至る仕掛けになっている。このエピソードが異色なのは、キャラクターたちが椅子に固定されているために肉体的な動きがほぼないこと。それゆえキャストの演技や演出が試されるが、佐藤監督いわく初めの課題は「最高裁」のセットを作ることだったという。

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 「このシリーズや“げぇむ”が特徴的な空間で行われていて、ある意味で空間がもう一つの主役とも言えるんですけど、僕はこういった限定された空間での演出が大好きなんです。『てんびん』回は、その最たる例でまずセット作りからパワー全開でした。セットで最高裁を作ったのですが、さすがに最高裁でのロケハンはかなわないので写真などで分析しながら、嘘くさくならないようギリギリの線でセットを作って、CGを駆使しながらてんびんのシステムを作りました。あとはカメラワークや、どこで誰を撮るのかといったような基本的なことで人物の心理を盛り上げていく。キャストの皆さんはほとんど動きがないんですけど、その人物の心理や見えない動きが見えてくるように工夫して撮っていきました」

 ちなみに、てんびんの仕掛けについても佐藤監督の「徐々に傾いていき最終的に液体がこぼれ落ちるまでをリアルに表現したい」というこだわりがあり、美術の斎藤岩男が専門家に相談してスライドすると液体が溢れるような仕掛けを構築。形、寸法、液体の量、角度などを反映した緻密なデザインとなっている。

 “げぇむ”が進むごとに敗者が決まり、残された“ぷれいやぁ”は敗者の壮絶な最期におびえ、精神的に追い詰められていく。そんなスリル、緊迫感が徐々に増していく展開だが、決して大きな芝居は求めなかったと佐藤監督。「最後はほんの少しまばたきをした、初めてこちらに目線を向けた、あるいは笑みを浮かべたとか、そういうことの表現がこの山場を占めていたように思います。縛りのある演技だったので皆さん大変だったと思うのですが、同時に楽しまれていたのではないかと」

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 “ぷれいやぁ”が減ると同時に訪れる静けさ。とりわけ、これは映像だからこそ伝えられる恐怖表現だ。「5人登場人物がいるんですけど、だんだんいなくなっていくんですよね。気づくとシーンとしているみたいな。最初はいろいろなキャラクターが座っていて、まるでテレビ番組のような面白さがあるんだけど、一人消え、二人消えと段々シリアスになっていく。そういう波というか、空気の変わり方というのはすごくやりたかった表現です。『すうとり』だとか『ちぇっくめいと』だとか、乗り越えても乗り越えても新たな“げぇむ”が立ちはだかって、後半にこの“てんびん”という超巨大な山場があったのでドギマギしていたんです。なんですけど、幸い最後の方の撮影だったので集中して、腰を据えてキャストの皆さんとお話しながら進められたので、楽しんでやらせていただきました」

 佐藤監督の演出欲を掻き立てたワンシチュエーションの「てんびん」回。生き残るのは誰なのか。チシヤ、クズリューの舌戦から浮き上がってくる切実なテーマも余韻を残す。(編集部・石井百合子)

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