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『シン・仮面ライダー』4つ目のサイクロン号が誕生した理由 山下いくとが明かすデザイン制作秘話

『シン・仮面ライダー』に登場するサイクロン号
『シン・仮面ライダー』に登場するサイクロン号 - (C) 石森プロ・東映/2023「シン・仮面ライダー」製作委員会

 庵野秀明が脚本・監督を務め、東映の人気特撮「仮面ライダー」(原作・石ノ森章太郎)をベースに新たな物語をつづる映画『シン・仮面ライダー』。前田真宏出渕裕と共にデザイナーを務めた山下いくとがインタビューに応じ、自身が担当したサイクロン号のデザイン制作の裏側を語った。

【動画】映画『シン・仮面ライダー』追告映像

特撮に触れていない人の貴重な意見

 メカニックデザイナーとして知られる山下は、庵野監督が手がけた「トップをねらえ!」(1988~1989)や、「ふしぎの海のナディア」(1990~1991)に参加したほか、『エヴァンゲリオン』シリーズでは、エヴァンゲリオンを中心とするメカデザインを多数担当した。『シン・仮面ライダー』では、主にサイクロン号と変身ベルトのデザインを手がけている。

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 初代「仮面ライダー」(1971~1973)の直撃世代だったものの、特撮にはあまり触れてこなかった山下。特撮に詳しくない人として意見を投げ続けたが、それこそ、庵野監督が貴重としていた周囲からの声だった。「仮面ライダーを観ていないことを庵野監督に申し上げたところ、『観ていないからこそ、お願いしているんです』とお返事がありました。『シン・仮面ライダー』には出渕さんをはじめ、特撮に詳しい方がたくさん参加されていますが、庵野監督は特撮を知らない人からの意見も求めていたのだと、その時に気づきました」

二人乗りでも映えるベース車

 「仮面ライダー」を象徴するガジェットであるサイクロン号は、仮面ライダーに変身する主人公・本郷猛が乗る高性能バイク。『シン・仮面ライダー』でもその存在は欠かせない。本作では、ベース車としてホンダのCB650R(変形後)、CB250R(変形前)が採用されている。

 デザイン制作は、実際にバイクを見てベース車を選ぶところから始まった。「実は、最初から映画に使用された2台には辿り着いていません。ホンダさんのバイクを使用することは、庵野監督が以前から示唆していましたが、監督は最高峰の技術で生産されたレース用バイクに興味を抱いていました」

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 技術の発展で、バイクは50年前よりもコンパクトになった。撮影で想定している、ヒロイン・緑川ルリ子をバイクの後ろに乗せるシーンも、レース用では見栄えが悪くなってしまう。「今のレース用バイクは技術が突き詰められていて、かなりコンパクトです。CBRを排気量ごとに並べて、俳優と同じ体格の人が乗った状態で比較もしましたが、皆が首をかしげていました」。検討を重ねた結果、バイク好きの前田が注目した2台(CB650R、CB250R)が、二人乗りの状態でも映えることから、映画で使用されることになった。

ライトが4つ目になった理由

 仮面ライダーと同様、サイクロン号のデザインでも“原典回帰”の方向に傾けていった。「オリジナルのサイクロン号に寄せていくという方向性が定まると、いかに当時のサイクロン号的なシルエットに見せられるかを意識しながら、作業していきました」

 『シン・仮面ライダー』に登場するサイクロン号のデザインで特徴的なのが、4つ目のヘッドライトだ。山下によると、これはフロントタイヤとカウル(車体を覆うパーツ)の関係性が理由になっているという。「昔のサイクロン号は、今のバイクと比較して前輪が大きく、カウルとタイヤの隙間があまりないんです。ところが、今のバイクは、まっすぐ走ることよりも、ハンドリングを楽しめるようにデザインされているので、カウルとタイヤの間がどうしても開いてしまいます。その隙間を埋めるために、ライトを2段にしました」

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 庵野監督が特にこだわったのは、後方のマフラー(排気口を覆うパイプ)。オリジナルのサイクロン号をリスペクトしており、山下にも「マフラーは6本、上から出してほしい」と要望があった。「マフラーに関して、庵野監督はかなりこだわっています。特にカラーリングは、納得がいくまで試していた記憶があります。最初は50年前のサイクロン号と同じく全体をブルーシルバーにしたかったそうですが、そうするとただ明るいだけになってしまうので、黒を部分的に入れたり試行錯誤していました」

 「シルエットでそれとわかるメカだったら、いいメカだよ」。『エヴァンゲリオン』の頃に庵野監督から受け取った言葉が、今も印象に残っているという山下。信頼する監督とのものづくりは、どんな作品でも刺激的なようだ。「庵野監督は既存のタイトルを作るにあたって、新しいものを作るべきなのか、自分が好きだったものを作るべきなのかのせめぎ合いをしているようにも思います。監督がその答えに近づけるように、こちらは様々なボールを投げ続けて、外堀を埋めていくようなところがあります。最終的に残った部分で、初めて『自分はこれがやりたかったんだ』とわかるのではないかと思うんです」(取材・文:編集部・倉本拓弥)

映画『シン・仮面ライダー』は全国公開中

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