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『シン・仮面ライダー』漫画化への道のり 山田胡瓜&藤村緋二、SHOCKERを通して描く人間の悲劇

画像は「真の安らぎはこの世になく -シン・仮面ライダー SHOCKER SIDE-」より
画像は「真の安らぎはこの世になく -シン・仮面ライダー SHOCKER SIDE-」より - (c)石森プロ・東映/2023「シン・仮面ライダー」製作委員会(c)山田胡瓜・藤村緋二/集英社

 庵野秀明が脚本・監督を務める映画『シン・仮面ライダー』に登場する秘密結社SHOCKER(Sustainable Happiness Organization with Computational Knowledge Embedded Remodeling)にスポットを当てた、完全オリジナル漫画「真の安らぎはこの世になく -シン・仮面ライダー SHOCKER SIDE-」。漫画脚本を務める山田胡瓜と、作画を担当する藤村緋二がインタビューに応じ、コミカライズの道のりや、劇中で描かれるSHOCKER像について語った。(取材・文:編集部・倉本拓弥)

【動画】『シン・仮面ライダー』追告映像

 「週刊ヤングジャンプ」(集英社)で連載中の本作は、暴力の無い世界を作りたいという願いを叶えるため、秘密結社SHOCKERに加入した主人公・緑川イチローの姿を、SHOCKER目線から描く物語。漫画脚本担当の山田は、元IT記者出身という異色の経歴を持ち、映画にも脚本協力として参加している。作画担当の藤村は、映画化もされた「神さまの言うとおり」シリーズで漫画家デビューを果たし、その後も話題作を次々と放ってきた。

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絶対悪とは何か…きっかけは庵野監督との会話

Q:本作の企画はどのような経緯で誕生したのでしょうか?

山田胡瓜(以下、山田):庵野さんが私の作品「AIの遺電子」を読んでくださり、それがきっかけで、一度お食事をさせていただきました。その際に「絶対悪とは何だ?」という話になり、2019年2月、庵野さんからアイデアやプロットが描いてあるメモをいただき、メールベースでブレストやキャッチボールを重ねていきました。そういった経緯があり、昨年夏にコミカライズ企画のオファーを受けました。私は別作品を抱えていたので「脚本だったらできます」とお返事をして、現在に至ります。

藤村緋二(以下、藤村):私がお話をいただいたのは、ヤングジャンプ編集部でお世話になりはじめた頃でした。連載を目指していた作品が、連載会議で落ちてしまい、空白期間ができた時で「編集部とこのまま連絡が取れなくなり、立ち消えになるのは嫌だな」と思っていました。ちょうどそのタイミングで、担当者さんから「『シン・仮面ライダー』コミカライズ版の作画依頼が来ています」と連絡があり、すぐに引き受けて台本をいただきました。

Q:もともと「仮面ライダー」の物語を執筆すること、キャラクターを作画することに興味はありましたか?

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山田:仮面ライダーの漫画を描くとは思ってもいなかったです。映画に関わっている時も、自分がコミカライズをやるかもしれないということは全く考えてなくて、純粋に楽しい企画として参加していました。映画のために、石ノ森章太郎先生の原作漫画を読み返したのですが、世界観や作品に漂うペーソス(哀愁)が大好きで、悲しさを背負って戦うヒーローはかっこいいと改めて感じました。

藤村:平成仮面ライダーシリーズを観ていたので、「まさか自分がやるのか! こんな未来がやって来るんだ」という驚きと、「本当にやれるのか?」という不安が同時に襲いかかってきました。「仮面ライダー」シリーズ50年の歴史や庵野監督作品の重みを感じましたが、やると決めたからやるしかないと、自分なりにいろいろ試行錯誤しながら作業しています。

映画のデザイナーとも連携して制作

Q:漫画には庵野監督のアイデアも含まれているのでしょうか?

山田:庵野さんにはチェックしていただたりもしました。私が提出した設定に対して「こういう設定を入れたらどうだろう?」などフィードバックが返って来ることもありました。庵野さんは仮面ライダーに詳しいので、「このキャラクターはこの名前にした方がいい」といったアイデアを出してくれることもあります。

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藤村:映画製作陣からキャラクターやCGモデルの資料を参考として送っていただき、その演者が演じているように、キャラクターを現代に蘇らせるイメージで描いています。SHOCKER上級構成員は映画の決定デザインがあるので、違和感なく作画することが私のミッションでした。サソリやイチローくんなどは、山田さんからネームをいただいて、それを僕の画にするという作業です。

山田:第1話冒頭に登場した仮面の男のデザインは、ざっくりとした草案を映画製作陣に出したところ、(『シン・仮面ライダー』デザイナーの)前田真宏さんがリファインしてくださる工程が発生しました。リファインされたものをベースに、漫画で見栄えするように調整しています。前田さんも担当している豪華なキャラクターです。

サソリとイチローの母親の表情が同じ!作画のこだわり

Q:漫画で描かれるSHOCKERについて教えてください。

山田:SHOCKERは、幸福を追求する愛の秘密結社です。絶望や大きな悲劇を経験した人間に力を与えて、彼らが目指す幸福を実際に実現してもらおうとしています。なので、幹部のオーグメントたちは、何らかの絶望や苦痛を体験していて、それがきっかけとなり、SHOCKERとしての所業を始めてしまったと私は理解しています。それを伝えるためにも、幹部たちが抱える悲劇をしっかり描きたいというのは、コミカライズでこだわるポイントの一つです。上手く描くことができれば、映画本編に対しても感じ方が奥深くなり、二回三回と観て楽しめるようになるのではと思っています。

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藤村:作画をしていくなかで、SHOCKERを絶対悪として捉えることができないんです。求める幸福の違いだけで、その視点が異なることで「あいつは悪だ」と発展する気がしています。母を亡くしたイチローくんは、最初こそ不安そうにしていましたが、彼にとって組織は今や家族同然の存在です。たとえば、サソリがイチローくんに見せる表情と、イチローくんの母親が彼に対して見せていた表情は、描き方を同じにしています。イチローくんからすると、サソリはお姉ちゃんや家族としての“安心の象徴”として見えているように意識して描いています。

Q:タイトルの「真の安らぎはこの世になく」は、第5話でアントニオ・ヴィヴァルディの名曲「Nulla in mundo pax sincera(まことの安らぎはこの世にはなく)」としてその名が登場しました。漫画にこのタイトルを付けた意図は?

山田:最初は「シン・仮面ライダー -SHOCKER SIDE-」という仮タイトルをつけていました。すごくわかりやすくて、決定案としても問題なさそうでしたが、映画製作陣から「いかにも仮面ライダーですというタイトルではなく、一般的な漫画としてのタイトルみたいな案がほしい」と要望がありました。そこで、作品の内容ともリンクする歌詞があり、私自身も大好きなヴィヴァルディの曲「まことの安らぎはこの世になく」を候補に入れてみました。漫画として見栄えするタイトルというオーダーだったので、少し長いかもと考えたのですが、庵野さんが選んだのは、その案だったんです。

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藤村:すごくいいタイトルですよね。初めてLINEでタイトル名を送っていただいた時、「かっこいい!」と思わずシビれました。

山田:「シン・仮面ライダー -SHOCKER SIDE-」や『シン・仮面ライダー』前日譚と呼んでくださる人もいて、もちろんそれで構わないのですが、「真の安らぎはこの世になく」と呼んでもらえると、案を出した僕としては嬉しくなりますね。

映画『シン・仮面ライダー』は全国公開中

「真の安らぎはこの世になく -シン・仮面ライダー SHOCKER SIDE-」は週刊ヤングジャンプで連載中、コミックス第1巻発売中

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