【ネタバレあり】『アギト-超能力戦争-』プロデューサー座談会 サプライズの裏側&「仮面ライダー」新レーベルの行く先

仮面ライダー生誕55周年を記念して、放送25周年を迎えた「仮面ライダーアギト」(2001~2002)の新たな物語を紡いだ映画『アギト-超能力戦争-』。エグゼクティブプロデューサーとして、テレビシリーズ当時のプロデューサーである白倉伸一郎、武部直美、塚田英明が再集結を果たした。東映が立ち上げた新レーベル「THE KAMENRIDER CHRONICLE」の記念すべき第1弾でもある本作は、いかにして誕生したのか。「仮面ライダー」シリーズを支えてきた3人のプロデューサーが、25年前の記憶を遡りながら、映画の製作秘話やシリーズの今後について語った。(取材・文・構成:編集部・倉本拓弥)
※本記事はネタバレを含みます。映画『アギト-超能力戦争-』鑑賞後にお読みいただくことをおすすめします。
「仮面ライダークウガ2」から独立路線へ…25年前の記憶
Q:遡ること25年、「仮面ライダーアギト」は「仮面ライダークウガ」(2000~2001)に続く平成仮面ライダーシリーズ第2作として誕生しました。新作映画の話を伺う前に、企画立ち上げ当時の印象的なエピソードを教えてください。
白倉伸一郎(以降、白倉):当時、田崎竜太監督(※崎はたつさきが正式表記)が「パワーレンジャー」の撮影で米・ロサンゼルスに滞在していたので、日本に帰ってきて「仮面ライダークウガ」の後番組を担当しないかと招聘に行きました。ロサンゼルスのオープンカフェで、仮面ライダーや石ノ森章太郎ワールドについて延々と語ったのを覚えています。
武部直美(以降、武部):私が入った時には、すでに塚田さんがプロデューサーとして決まっていましたね。確か、私が産休に入っていた時で、後から「やりたいです」と立候補して、復帰した記憶があります。
塚田英明(以降、塚田):私は当時、東映京都撮影所のテレビ部に所属していて、東京に異動して初めて担当した作品が「仮面ライダーアギト」でした。今回「真アギト展」(※5月12日まで池袋・サンシャインシティ 展示ホールAにて開催中)でさまざまな資料を見せていただきましたが、企画立ち上げの部分は、私も知らないことがたくさんありました。
Q:「仮面ライダーアギト」では3体の仮面ライダーが主軸となり、物語が進んでいきました。
白倉:群像劇がやりたいっていうのは、かなり早い段階からありました。もともと、バンダイさんからのオーダーが「仮面ライダークウガ2」でした。「クウガ」が非常にヒットして、勿体無いから続けようと。当時、平成仮面ライダーシリーズという概念はなく、「クウガ」を続けるっていう感覚だったんです。新しいクウガ=仮面ライダーアギトと、警察が繰り出すメカクウガ=仮面ライダーG3を軸に、「クウガ」における五代雄介&一条薫のような関係が、「クウガ2」でも引き継がれていく企画でした。
デザインが進行していく中で、「それはあまりよろしくない」と仮面ライダーをもう1体出して、「クウガ」のワンステップ先に行けないかっていうところから、3人の仮面ライダーという設定が成立したと思います。大先生(=脚本家・井上敏樹)からは、“群像劇”と“謎引っ張り”の2つを柱にしていこうと提案がありました。
武部:確かに、変身ベルトも仮面ライダーも「クウガ」からの名残がありますよね。
白倉:変えようとするのではなく、なるべく踏襲しようという意識が強かったです。「クウガ」と世界観を地続きにしてほしいというオーダーと、「してくれるな!」という意見がせり合っていました。
氷川誠にしかできないこと
Q:それから25年後、当時のメンバーが再集結した完全新作『アギト-超能力戦争-』が誕生しました。映画の企画は、オリジナルキャストからの逆オファーがきっかけだと伺っております。
武部:全てのはじまりは、塚田さんが仕切った焼肉会だったんですよね。
塚田:弊社が製作した実写版「【推しの子】」に要潤さんが出演していて、制作発表イベントで再会した時に「みんなでまた集まりましょうよ」と言ってくださり、G3チームと我々で焼肉を食べるという「アギト」らしい会を開きました。その場で、映画の話が浮上しました。
白倉:帰りのタクシーの中で、某役者が大先生に「また書いてくれるよね?」って電話したんです。
武部:同窓会のつもりで参加したので、こんな話になるとは思わず……。そこから、塚田さんが頑張ってくれましたね。
塚田:「要さん(スケジュール)空いてる?」って連絡したり(笑)。本当に面白い経緯でしたね。東京の撮影所が空いていないとか、京都撮影所で撮れないかとか画策して、要さんが空いている日を中心に、さまざまなことを調整してみました。
白倉:もう少しゆったりしたスケジューリングができないかと相談もしたのですが、要さんの先々のスケジュールが読めないということで、確実に撮影できる場所で準備していきました。
武部:スタッフィング的にも、ちょうど「仮面ライダーガヴ」(2024~2025)の撮影が終了して、藤田慧アクション監督が空いていたり、スーツアクターさんもうまく調整がつきました。
Q:主人公は、かつて仮面ライダーG3として戦った警察官・氷川誠(要潤)です。テレビシリーズの主人公だった津上翔一(賀集利樹)ではなく、『劇場版 仮面ライダーアギト PROJECTG4』(2001)のように氷川を主軸とする物語にした意図は?
武部:やはり『PROJECTG4』が印象的だったことも理由にあったんじゃないですか?
塚田:でも、テレビシリーズ当時は3人が主人公という意識で作っていましたよね。
白倉:氷川誠は「仮面ライダー」シリーズの中でも非常に特殊な人で、“変身する人”ではなく“装着する人”です。仮面ライダーのアイデンティティーの欠片もない普通の警察官が、「アギト」という名の超能力者が次々と誕生するような世界で孤軍奮闘するシチュエーションが面白いんですよね。これが仮面ライダーに変身する人が主軸になると、他のライダー作品とそんなに変わらなくなってしまう。これは「仮面ライダーアギト」の氷川誠にしかできないことです。彼が主役になることで、仮面ライダー史でも極めて特殊な位置付けになり、明らかに1本の映画として成立すると感じました。
武部:その辺りも「クウガ」と比較して新しい部分でしたよね。テレビシリーズ当時、要さんは19歳でしたので、大人になった要さんが演じる氷川誠の物語を、ファンのみなさんも観たいかなという思いもありました。
Q:氷川が今作で装着する新たなGユニット「仮面ライダーG7」は、ユニットが自動装着&腰にベルトを巻いての変身です。完成したデザインをご覧になった時の感想は?
塚田:装着していくさまがかっこいいですよね。『アイアンマン』などの作品を観てきた中で、氷川がGトレーラーの中で装着していた当時から、これくらいは進化していてほしいっていう変化が具現化されていて、映画を観てワクワクしました。
武部:スーツにドローンが搭載されているアイデアも新しいですし、「そう来たか!」と思いました。映像も合成カットが非常に面白かったです。
白倉:ドローンが持ってくるのはいいとして、スタッフから「それはどこから持ってくるんですか?」という質問があって「気にするな!」って返しました(笑)。
仮面ライダーG6に変身!ゆうちゃみ起用の裏側
Q:仮面ライダーG6として戦う新キャラクター・葵るり子も、中心人物として活躍しました。るり子を演じたゆうちゃみさんは、映画初出演とのことでしたが、キャスティングはどのように行われたのでしょうか?
白倉:ゆうちゃみさんの起用は、プロデューサーの吉川史樹(東映)が頑張ってくれました。
塚田:子供の頃に「仮面ライダーアギト」を観ていて大好きだということだったので、吉川に「今度『アギト』やるから、プロデューサーやらない?」と打診したら、「やります!!!」ってすごい熱量で返事がありました(笑)。その後、吉川がすごい勢いでゆうちゃみさんをキャスティングしました。
白倉:「アギト」のキャストは180cmオーバーが大勢いるので、その中に混じった時に、背が低いとバランスが悪く見えてしまうんですよね。ゆうちゃみさんの背丈が非常に映えるので、「アギト」チームとしてはありがたかったです。
武部:Gユニットを装着した姿も様になっていましたよね。
白倉:あの撮影の時、まだG6のヘッドが完成してなかったんです。間に合うところから納品しているから、「まだ頭はいい!」って(笑)。
武部:確かに、G6は後から見ましたもんね。カラーリングにも驚きました。
白倉:ゆうちゃみさんの顔出しの時から、実はもう1回G6の色を塗り替えているんだよね。
Q:個性が強い超能力者たちも、抜群の存在感を放っていました。みなさんが特に印象に残っている超能力者はいますか?
塚田:はんにゃ.の金田哲さん(速見役)です。時を止める超能力者で、手ごわい感じがしましたね。劇中でのやられっぷりも最高でした(笑)。
白倉:手が銃になる黒谷(今井悠貴)です。何がすごいかって、指鉄砲を「バンバンバン!」ってしながらずーーーっと撮影現場にいるんですよ。周りがみんな変身する中で「変身しない人は大変だな~」って見ていました。
武部:子役出身の吉川プロデューサーとは戦友で、金田治監督の『オーズ・電王・オールライダー レッツゴー仮面ライダー』(2011)に一緒に出ていますよね。
白倉:確か、少年仮面ライダー隊の一人でしたよね。
武部:(キャスティングは全て吉川Pなのですが)私はやはり、岩永洋昭さん(ルージュ役)と青島心さん(渋川役)を推したいです。岩永さんとは(伊達明/仮面ライダーバース役を務めた)「仮面ライダーオーズ/OOO」で、青島さんとは(ツムリ役を務めた)「仮面ライダーギーツ」で一緒に作品をやりました。二人とも、あそこまで役づくりしてくれたので、中には気づかない方もいらっしゃるのではないかと思います。
白倉:(『アギト-超能力戦争-』の作曲家)佐橋俊彦先生が、映像を何回も観て「渋川、印象的な役だな……気に入ったな……」と言っていたら、その後「ツムリちゃんかい!!」って、すぐにはわからなかったらしいです(笑)。
武部:喪服に卓球のラケットで、ツムリちゃんの時と衣装が違いますからね……心ちゃん、悪役も似合うなと思いました。
某店長の姿も…サプライズシーンの舞台裏
Q:そして、津上翔一はアギトの力を失っている設定です。クライマックスで一時的に力を取り戻し、仮面ライダーアギト グランドフォームに変身するサプライズもありました。
白倉:本来の主人公である翔一が、クライマックスで自らの力でアギトの力を戻すという、主人公を立たせるっていう意味合いも当然あります。当初、大先生とは「この設定はいらないのでは?」と何度か議論しました。
武部:賀集さんの切り替えが面白かったです。年相応の大人になっていますが、翔一くんの芝居を覚えていてなのか、あるいはテレビシリーズを見直したのか、セリフ回しや明るい声もそのままなんですよね。彼も「アギト」がデビュー作だったので、その後、さまざまな作品や役を経験されて、スイッチの戻し方が見事でした。
Q:クライマックスでは、「アギト」お馴染みの焼肉シーンも登場しました。撮影場所の焼肉屋(「北新地 神威」)は、ファンであればピンとくる場所です。言える範囲で、あの焼肉屋が登場した経緯をお話しいただけますか?
塚田:スタッフたちの思い、吉川プロデューサーたちの働きで実現しました。
白倉:京都撮影でなかったら、わざわざ大阪にある焼肉屋まで行かなかった(笑)。
武部:お肉がとても美味しかったですよね!
白倉:某店長に焼かせ倒して……。撮影用の肉とは別に、そばにいる我々の肉も焼かせました。
武部:あのシーン、塚田さんも出演されていますよね。
塚田:後ろの方に、東映ビデオの中野(剛)くんと一緒にね(笑)。
Q:改めて「仮面ライダーアギト」はお三方にとって、どのような作品として刻まれていますか?
塚田:最初に担当した特撮作品なので、何から何まで刺激的でした。25年経って、またこういう形で参加させていただき、すごく面白い映画が完成して、本当に素敵な作品をみなさんに届けられるのではないかなと思っています。
武部:25年前は夢中で作っていて、独特の高揚感がありました。全てがチャレンジだったという意味では、非常にエキサイティングでした。スタッフも若かったし、監督も若かったし。すごくお金もかけて撮影しました。これを機に、みなさんにまた「アギト」を見直していただけると嬉しいです。
白倉:「アギト」は若気の至りだと思うんです。25年分若いので、今ではできないことを、たくさんやっていました。『PROJECTG4』の時は、長編映画としては世界初の全編デジタル撮影だったので、編集・ダビング用機材の選定やワークフローなど全部が初めてで、スタッフが総力戦で挑んでいました。プロとして仕事をしているのですが、毎日が文化祭の前日のような雰囲気でした。
粒立った「仮面ライダー」作品をイチから語り直す…新レーベルの展望
Q:そして『アギト-超能力戦争-』は、先日発表された東映の新レーベル「THE KAMENRIDER CHRONICLE」に属しています。生誕55周年という節目でレーベルを設立した背景を教えてください。
白倉:「仮面ライダー」映画を春・夏・冬と年間に3本も公開していたような時期もありますが、Vシネクストが入ってきたことで、劇場映画が入り乱れるような形になってしまったんです。製作側も混乱するし、ファンのみなさんも、脳内で“仮面ライダー映画地図”みたいなものが描きづらくなってきたということで、現在“お片付け”を始めています。冬映画を廃止したり、昨年は夏映画だけに絞ったりしました。
そこで、レーベルをつけて、誰に向けて、どういう内容のものを投げているのかを明確化する。その第1弾が『アギト-超能力戦争-』です。『仮面ライダーオーズ 10th 復活のコアメダル』『仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド』といった周年作品のVシネクストがありましたが、そうしたことは今後減らして、「THE KAMENRIDER CHRONICLE」は、映画化すべきものをしっかりとした作品として届けていく。そういったレーベルです。
Q:「THE KAMENRIDER CHRONICLE」が目指す先、今後の展開に期待することは?
白倉:『アギト-超能力戦争-』から始まるので、オリジナルキャストを集めて、続編・スピンオフを展開していく風に見えるかもしれません。しかし、本当は『スパイダーマン』『バットマン』のように、たとえキャストが変わって、キャラクターも造形が多少変わったとしても、もう1回イチから語り起こす、いわゆるリブートを試みていきたいです。
例えば、仮面ライダー1号は『仮面ライダー THE FIRST』、『シン・仮面ライダー』と何回かリブートされています。ああいう形で、平成仮面ライダーに限らず、粒立った「仮面ライダー」作品をもう1回イチから語り直すということを視野に入れております。「仮面ライダー電王」、「仮面ライダーW(ダブル)」などといった作品を「よかったら観てください」とアピールしても、50話近くあったりすると視聴ハードルが高いですよね。映画であれば、「これ1本を観れば大体わかるよ」と謳えるので、そうした形で、粒立った「仮面ライダー」作品に永遠の命を得てほしいと思っています。
映画『アギト-超能力戦争-』は全国公開中
(C) 2026「劇場版アギト」製作委員会 (C) 石森プロ・東映


