ワンオクTaka「御上先生」主題歌を引き受けたワケ 歌い出しを日本語に変更「僕らなりに考慮した言葉で」

日曜劇場「御上先生」(TBS系・毎週日曜よる9時~)の主題歌「Puppets Can’t Control You」を担当する ONE OK ROCK のボーカル・Takaと、本作を手掛ける飯田和孝プロデューサーの対談が実現。Takaがオファーを受けた理由や、楽曲タイトルに込めた思いを語ったインタビュー前編が公開された。
「御上先生」は、子供が生きる「学校」、大人がもがく「省庁」を中心に物語が展開する“大逆転教育再生ストーリー”。未来を夢見る子供たちが汚い大人たちの権力によって犠牲になっている現実に、高校教師となった東大卒のエリート文科省官僚・御上孝(松坂桃李)と令和の高校生たちが立ち向かう。
“純粋にいいものを作りたい” Takaが語る音楽制作のポリシー

飯田:僕が ONE OK ROCK さんの音楽に出合うったのは、佐藤健さんに教えていただいたことがきっかけ。2013年頃から聴き始め、気づけばもう12年になります。そんな中、コロナ禍に「18祭」(2016)の映像を見て、1000人もの若者たちが涙を流し、全力で叫ぶ姿に心を揺さぶられました。そして、メンバーの皆さんが審査動画を見つめる表情や、ステージに立つ姿には、人生の先輩として若者たちを見守る皆さんを見ることができて。そこには18歳の若者と大人という関係を超えた、リスペクトと応援のメッセージが込められているように感じました。そうした思いをすべて詰め込んだドラマを作りたくて、企画を立案して5年。ついに実現することができました。
Taka:結構、時間が掛かるものなんですね! 僕たちのアルバム制作と同じぐらいかもしれません。
飯田:どうしても実現させたくて粘り続けたんです。そして、主題歌はぜひ ONE OK ROCK さんにお願いしたくて、当たって砕けろという気持ちでご相談させていただきました。僕はプロデューサーとしては不適格だなって思うんですけど、人脈とかコネクションを広げるのが苦手で、いつも「絶対にあなたにお願いしたい!」という気持ちだけで、キャスティングオファーをしてきたのですが、そんな僕のお願いを受けていただきありがとうございます……!
Taka:こちらこそオファーをいただけて光栄でした。実は僕らって、こういった話を直接いただくことがあまりなくて(笑)。
飯田:えっ! そうなんですね!?
Taka:今でこそ少し受け入れられるようになりましたが、僕たちは言っちゃいけないことを言うところがあるので、少し前は腫れ物扱いされていたんですよね。だからこそ、お話をいただけたことが本当にうれしくて。僕自身に若い頃からあるテレビに対するアレルギーがあっただけで、実はこういったオファーも基本的にNOではないんです。ただ、バンドとしてのポリシーを守れることが第一ですね。

飯田:それはどういったポリシーなのでしょうか?
Taka:日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、アメリカでは何人ものスタッフが集まってセッションをしながら曲を作ります。新しい風を取り入れやすい反面、合う人と合わない人がはっきり分かれる。性格の問題もありますが、その人が何の目的で来たのかも大きく影響します。一緒に良い仕事がしたいのか、それとも僕らを利用して売れたいのか。制作を重ねる中で気づいたのは、ヒットメーカーを集めてプレッシャーをかけるよりも、その場のバイブスを大切にしてポジティブに作る方が良い曲が生まれるということ。だから、お互いをリスペクトし合い、より良いものを目指せる関係が大前提なんです。世の中には、お金や名誉を優先する人もいれば、純粋に良いものを作りたいと思っている人もいる。どちらも必要だとは思いますが、僕は後者を選びたい。これは音楽だけでなく、僕のライフスタイルにも通じる考え方ですね。
飯田:ドラマの世界でも、ハリウッドでは意見を交わしながらストーリーを組み立てる共同脚本が主流です。一方、日本では1人の脚本家が担当するのが一般的で、「良いものを作る」という純粋な目的のために、多様な視点を持つ人たちが集まる海外のスタイルは、日本のドラマ業界ではなかなかありません。僕らはそこを少しずつでも取り入れていきたいと思っていて。改めて、Takaさんの考えから学ばせてもらった気がします。でも、やっぱり他者を受け入れるには勇気が必要ですよね。
Taka:それぞれの生き方があるけれど、僕は歳を取れば取るほど承認欲求を手放すことが一番バランスの良い生き方だと思っています。でも、それって誰しもできるわけじゃありません。理想と現実は違いますから、自分が望む人生を100%実現するのは難しい。だからこそ、これからの時代はコミュニケーション能力がより重要になってくると思うんです。言葉を使っての交流は人間同士だからできること。同じ言葉でも、書かれた文字では傷つくのに、直接話すとそうは感じないこともあるように、人間の持つ力には凄まじいものがあると感じています。
飯田:コロナ禍でリモートワークが普及し、直接の会話が減ったことで誤解やすれ違いも増えた気がします。効率的な働き方という面ではメリットもありますが、果たして本当に「伝わる」コミュニケーションが取れているのか疑問に思うこともあるんです。その便利さに盲目になっているのではないかなと。ドラマ制作においても、より一層コミュニケーションの大切さを痛感しています。
Taka:僕らをはじめ、クリエイターの役割は人々のコミュニケーションを生み出すことなんじゃないかと思うんです。たとえ疑似の世界でも、視聴者が自分の人生と照らし合わせることができる。そこから新しい気づきが生まれたり、議論が深まったりすることもある。スポーツの世界で記録が更新され続けるように、人間の知恵も時代と共に進化していく。その変化に対応したコミュニケーションを持ち続けることが大事です。だからこそ、僕らにできるのは、音楽を通じてその大切さを伝えていくことだと思っています。
音楽とドラマの融合 Takaが楽曲タイトルに込めた真意と粋な演出

飯田:改めて、楽曲に込めた思いを聞かせていただけますか?
Taka:本作の企画書を読んだとき、ちょうどその頃僕たちが作っていたアルバム「DETOX」のテーマとすごくリンクしていると感じました。どこまで攻めていいのか少し迷いもあったのですが、この曲がドラマの世界観に一番合うなと思って。タイトルの「Puppets」は人形を意味しますが、ここでは大統領や社長など、何か問題が起きたときに表に出て責任を取る存在を指しています。でも、その背後にはもっと大きな力がある。「Puppets」が交代することで一時的に人々の気持ちは落ち着くけれど、もうそんな仕組みには騙されない。あなたたちの用意したお人形さんの言うことは聞かないんだよ、という思いを込めています。日本語だと強烈だけど、英語なら伝わり方が違うかなと思って(笑)
飯田:そんな深い意味が込められていたんですね。僕は単純に「意志を持たない人間」というイメージしか浮かばなくて、お恥ずかしいです。
Taka:いえいえ! ちなみに最初はすべて英語の歌詞だったのですが、ドラマの主題歌なら日本語を入れた方がいいという意見が出てきました。最近の僕らの曲で歌い出しが日本語なのは珍しいのですが、これならひょっとしたら制作側の皆さんも喜んでくれるかもと思って。もしかしたらギリギリのラインかもしれませんが、僕らなりに考慮した言葉で歌詞を書かせていただきました。
飯田:実際にドラマと共に流れるのを見ていかがでしたか?
Taka:素晴らしい作品とコラボレーションして世に出すことの強さや影響力の大きさを実感しました。制作段階で身近な友人たちに聴かせることもあるんですが、曲単体ではなかなかイメージしづらいみたいで。ドラマと共に流れることで曲の意味が広がったのか、何度も聴かせていたはずの友人から「ドラマを見たらもう一回聴きたくなった!」とか「めっちゃ合ってた!」って連絡が来るんです。「前にも聴かせたのにな……」って思いながら(笑)。でも、自分自身もエンディングを見たときに、「この曲、こんなに良かったんだ」って感じました。

飯田:そう言っていただけて安心しました。日曜劇場には「温かくて家族で見られる作品」というイメージがあるのですが、今回はそれを壊したいと思っていて、通常なら選ばないハードロックでいきたいと最初から決めていました。第1話のエンディングでは、キャスト・スタッフをはじめ、視聴者の皆さんにもテレビドラマの良さを感じてもらえたと思います。僕らはとにかく誠実に、見てくれる人に最大限のエンターテインメントを届けたい。そのための最後のピースに、ONE OK ROCK さんの楽曲が完璧にハマって。テレビドラマもまだまだ心を揺さぶるコンテンツを作れるんだと実感した瞬間でした。実は、生徒たちにも内緒にしていたんですよ……。
Taka:え、そうなんですか!?
飯田:そうなんです(笑)。第1話の放送を撮影現場で何人かの生徒たちと一緒に見ていたんですが、イントロが流れてTakaさんの声が聴こえた瞬間、「えっ!?」「うそでしょ!」って驚いていました。
Taka :マジですか!? それはうれしいですね。逆にそれまで誰が主題歌か聞かれなかったんですか?
飯田:聞かれましたけど、「当ててごらん」って返していました(笑)。でも、最初の顔合わせのときから「18祭」がきっかけで企画がスタートしたことは伝えていましたし、生徒たちだけに渡した小物入れにも歌詞の一部を刻んでいたので、ヒントは結構散りばめていましたね。
Taka:生徒のカバンのキーホルダーにラバーバンドのグッズを使ってもらっているっていう裏話もSNSで見ました! すごい伏線を張っていたんですね。
飯田:第1話が終わったあと、生徒たちが「あのフレーズって……!」って気づいて駆け寄ってきたりもして(笑)。だから「最初から言ってたでしょ?」って返しました。生徒たちの反応も、世の中のリアクションも本当に大きくて、改めてONE OK ROCKさんのパワーを実感しています。
(編集部・倉本拓弥)