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「ゴジュウジャー」特撮監督・佛田洋、戦隊ロボの魅力を再確認 巨神テガソードの撮影秘話

「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー」特撮監督を務める佛田洋
「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー」特撮監督を務める佛田洋

 スーパー戦隊シリーズ第14作「地球戦隊ファイブマン」(1990~1991)から長年にわたり、特撮シーンを牽引してきた特撮監督・佛田洋。師匠である故・矢島信男が率いた特撮研究所と共に幾多のロボの変形&合体シーンを手掛け、子どもから大人まで多くのファンを喜ばせてきた。シリーズ50年の節目となる最新作「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー」では、大きな見せ場となる巨神テガソードの演出を手がけている佛田がインタビューに応じ、撮影の裏側を語った。

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特撮の掴みは「オープン撮影」

 長く続いてきたスーパー戦隊シリーズだが、毎年、作品が切り替わる以上、どのスタッフにも「終わり」があれば「始まり」のタイミングがある。特撮監督の佛田にとって「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー」の始まりは、プロデューサーである松浦大悟を介してであった。

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 「来年の(スーパー)戦隊は50周年で大きく盛り上げたいから、一度飲みましょうと言われて、松浦くんと雑談していく中で、彼が“『特命戦隊ゴーバスターズ』(2012~2013)が好きなんです”と言ったんです」と佛田は振り返る。しかしながら、当時は企画の概要が固まっていないタイミングで、佛田はそれに対して思わず「真面目な方向性でやるの?」と返したという。「ゴーバスターズ」は比較的シリアスな作風で、そうした意図だと受け取ったそうだ。だが、松浦が言わんとしていたことは、そうではなく、「『ゴーバスターズ』の“オープン撮影が良かった”ということだったんです」と続けた。

 通常、特撮はスタジオで撮影が行われるが、「オープン撮影」とは、これを野外に持っていき、平台を置き、その上にミニチュアセットを建て込んで行う撮影方法を表す。自然光によるリアルなライティングに、実際の青空を借景として用いることでスケール感のある画を撮ることができるが、通常のドラマ撮影で行われるロケーションと同様、天候に左右されるため、スケジュールを鑑み、年間を通して行うことは難しい。

 「『ゴーバスターズ』では、撮影初期に時間を割いてオープンで特撮を撮っていて、その後の作品でも時々オープン撮影はやっていたけど、だいたい第1話&第2話だけだったんだよね。『ゴジュウジャー』では、大々的にオープン撮影をやろうと思い、それこそ『ゴーバスターズ』を越える期間約3週間を費やして、10話分くらいの特撮を一気に撮った」と語っており、これが序盤における「掴み」となった。

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巨大な手が視聴者にもたらすインパクト

 先に行われたシネマトゥデイのインタビューで、松浦プロデューサーが「『スーパー戦隊といえばロボットでしょ』ということをもう1回やりたかった思いがありました」と語っているように、スーパー戦隊シリーズの大きなセールスポイントにはロボが挙げられる。そして、それをいかにして魅力的に描くかが、特撮監督としての何よりの大きな仕事となる。

 本作では、巨大な手からロボに変形する「巨神テガソード」が登場。佛田はこの「巨大な手」というコンセプトに対して、往年の特撮ドラマ「ジャイアントロボ」(※現在東映特撮YouTube Officialにて期間限定配信中)の第5話に登場したガンガーを思い浮かべたそうで、「CGでガンガーの現代版を作ろう」とイメージを膨らませた。

 また、戦隊ロボにも色々なパターンが存在するが、テガソードは今のところ正体不明であるものの、人類が英知を結集して生み出されたメカというよりは、神秘性を帯びた存在として描かれており、そうした要素が本体のテクスチャーに分かりやすく現れている。「たとえば架空の古代文字を入れる手もあったけど、超古代文字は『仮面ライダークウガ』(2000~2001)で印象的に使われていたでしょう。それでエジプトとか、どちらかといえばそっち方面を思わせる文様を入れることにしました。幸い、僕らの仲間にそういうのが得意なレイルズと言うCGプロダクションがあったのですぐ発注しました。やはりデフォルメのセンスが良くて、すぐに文様を入れてもらったところ、これが実によかったのです」

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 第1話では雲海から巨神テガソードが登場する場面があるが、「あのカットを最初に作ったんです。寄りもあって文様が入っているのも分かるでしょう。ここはみんな気に入ってくれて、『テガソードの象徴的なカットはこれだ』となりました」と胸を張る。

 また、テガソードの「巨大な手」が与えるインパクトにこだわり、「本来は剣が前に出ているのが正しい形状だけど、映像では敢えて折り畳んで後ろに持って行っていった。だけど、変形する際にはなぜか元に戻っている(笑)。誰も気づかないでしょ?」と明かした。本来ならおかしいけど、理屈ばかり考えていると作品がつまらなくなる。そういうのが許されるところが、スーパー戦隊シリーズを面白くしているんです」と力説した。

 そのテガソードから、センタイリングをセットすることでロボ形態にチェンジするが、CGによる巨神テガソードに対して、こちらはスーツで撮影が行われている。

 ロボのスーツは、外観から分かるように様々な制約が生じるが、第1話ではテガソードレッドが躍動感あふれるアクションを披露しており、その活躍ぶりを多くの視聴者が目に焼き付けたことと思う。一連のアクションからは、かつての箱型だったロボの時代からの技術革新を見て取ることができるだろう。これに関して佛田は「やっぱり“動けてナンボだから”という話をしました。近年で言うと『騎士竜戦隊リュウソウジャー』(2019~2020)のキシリュウオーが一番動けるロボだったので、あれを目指したところがありました」

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 その一方で、佛田は同じ傾向が続くことを危惧する。「こういう動けるロボはたまにやるからいい。その時々のプロデューサーや(パイロット)監督によって、スピーディなロボを好むか、重量感のあるロボを好むとかいろいろと変わるんですね。今回みたいに従来のロボと変えたことで皆さん驚いてくれたし、喜んでくれていると思うけど、毎年“動けます”ということだと、等身大アクションと変わらなくなるし、飽きられてしまう。もちろん、オーダーにはプロとしてきっちり応えていくし、その中で自分のやりたいことはやる。そこがまた戦隊の懐の深さでもあるし特撮監督の腕の見せ所でもあるよね」

 奇しくも現在、NHKが「全スーパー戦隊大投票」を行っており、そこには「ロボ部門」も含まれている。佛田にとって、お気に入りの戦隊ロボは何なのだろうか。「『海賊戦隊ゴーカイジャー』(2011~2012)のゴーカイオーや『救急戦隊ゴーゴーファイブ』(1999~2000)のビクトリーロボ、それから遡るとバイオロボ。その辺りが理想だよね」と語るが、「ゴジュウジャー」の撮影を通じて、今一度、かつての戦隊ロボの魅力を実感する機会があったという。

 第6話「決戦!常夏城の大冒険」&第7話「心ときめけ! 結集、ゴジュウジャー!」がそれに該当し、この2エピソードには「恐竜戦隊ジュウレンジャー」(1992~1993)の大獣神が登場した。第6話のラスト、マント姿で登場した大獣神のインパクトや、第7話での新旧二大ロボの共闘も話題となったが、「二人並んで見栄を切ってドカーン! となるカットを撮ったわけです。テガソードに比べて大獣神はそんなに動けるわけじゃないけど、周囲のスタッフからは『お、大獣神もいいよね!』と声があがり、自分で撮っていても『この頃忘れていたけど戦隊ロボって確かにこうだったよな』」と往年の戦隊ロボを演出しての手応えを語った。

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 そして、ヒーロー側のロボを魅力的に見せるためは、敵側のロボにも相応の個性や存在感が求められる。第1話で登場した、ブライダンの特攻隊長ファイヤキャンドルが操るキングキャンデラーは、両腕から放つ火炎放射に実際の火を使い、一段と目を引くものとなっていた。「あそこは合成じゃなくて、実際に火を吐いているから迫力が全然違うよね」。もちろん、そうした描写を実現するためには事前準備が欠かせない。「スーツを造る時点でホースを別パーツで隠せるようにしたり、大分前から仕込んでいた」と佛田。

 第1話では、テガソードレッドとの剣戟(けんげき)も描かれたが、テガソードソードに対してキャンデラックスソードは燃え盛る炎が表現されており、これにもやはり生の火を使用して効果を上げていた。「レインボー(造型企画)さんが作ったキャンデラックスソードを直接燃やすわけにはいけないから、ダミーで作った木製の剣の周囲に石綿を貼り、ガソリンを付けて燃やしています。実際まともに受けたら燃えてしまうから安全第一で撮影したけど、あれも今回、やってよかったことのひとつですね」

いつまでも「王道」と言っていても仕方ない

「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー」メインビジュアル - (c)テレビ朝日・東映AG・東映

 第1話以後、松浦プロデューサーの要望を受けて盛り込んだ第4話「パーリィタイム☆夢見るじじい」のテガソードレッドからテガソードイエローへの「強制チェンジバトル」を挟み、第6話「決戦!常夏城の大冒険」のテガソードブラックの活躍を以て、ゴジュウジャー5人の各テガソードが全て出揃った。当然、それぞれの描き分けも重要となるが、佛田監督は各テガソードの活躍を以下のように振り返る。

 第2話「ブン捕れお宝!俺の獲物だ」で、初登場を飾ったテガソードイエローはパワー系ロボで、この回では、アイアイザー・クロサンドラの全身をホールドして叩き落す必殺技「テガソードライバー」が大きな見せ場となった。「あれはアニメにもなったプロレス超人のマンガに出てくる技がヒント」と語る佛田だが、ここは前述したオープンで撮影されており、しかも合成ではなく、ワイヤーで実際に技を決め2体のスーツを上から地面に叩き落とすことで表現。さらに着地のタイミングに合わせ、実際に地面から土砂が舞い上がる特殊効果を加えることで、その威力を見事に描き切った。

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 パワー描写で佛田がもうひとつ拘ったのが、両腕の暴君拳から繰り出す強烈なパンチだ。アイアイザー・クロサンドラのクロサンドラショベルとの激突シーンでは、中央に置かれた廃墟ビルを壊すくだりがあり、両者のパワーが伝わる描写となっている。それに関しては、佛田曰く「直前までそんなビル置いてないんだけど、お互い殴ろうとしたカットになるとなぜかそこに廃墟ビルがある(笑)」とのことで、ここもやはり理屈に縛られずに、見せ場を構築しており、スーパー戦隊特撮ならではの名カットと言えるだろう。

 第3話「日本のドン!私が総理!」に登場するテガソードブルーは、右腕にガトリング砲を模した「レオンバスター砲」を装備している設定だ。佛田によれば70年代の巨大特撮ヒーローの必殺技が脳裏にあったと言い、実際に曳光弾を撃ちまくることに拘った。またライオンのタテガミを模した周囲が回転して一斉射撃を繰り出すカットについては、「あれは実際のプロップは回転するようにはできてないんです。ここは逆に合成で回転させたけど、自分としてもいい仕上がりになった」と自負する。

 第5話「取り戻せ魂!スミにおけないお節介」のテガソードグリーンは背中に翼を持った「飛行強化型」だが、佛田はそれをストレートに生かさず、別の見せ方を提案した。「普通、飛行ロボが出てくると“敵も空を飛ぶんでしょ!”となるでしょう。そうなると、だいたいCGの空中戦で板野サーカスよろしく、乱射されるミサイルを避けたりする活躍パターンになるけど、俺も天邪鬼だから(笑)、『そういうのはやめよう』と。それで飛行シーンは場所移動で描写して、直接のバトルは足技メインにしました。もちろん単に天邪鬼なわけじゃなくて(笑)、テガソードグリーンの右足にはイーグルシューター50のアロー部分が付いているから、その特徴を生かしたアクションとして考えたわけです」

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 そして前述した最後の一体が、第6話のテガソードブラックである。左手のユニコーンシールドは変形して脚部に合体すると、ケンタウロスを模した4足の「突進モード」となる。その対戦相手として登場するのが、ケーキとナイフをモチーフにした、Mr.シャイニングナイフ&Mrs.スイートケークで、松浦プロデューサーから出されたお題が「お菓子っぽい攻撃」だったという。それを受けた佛田は「『仮面ライダーガヴ』(テレビ朝日系・毎週日曜午前9時~)と被るでしょうと言ったんだけどね(笑)。それで敵がピンチになった時にケーキコロシアムを作り、四方八方から弓矢の如くナイフが飛んでくるシチュエーションにして、その攻撃を避けるために突進モードになってコロシアムの中を走り回る。そういう展開を捻り出した(笑)。まぁ、やってみたら『ガヴ』とは全然違う描写になったし、面白かったね」

 オンエアはまだまだ序盤で、これからも様々な特撮シーンで視聴者を楽しませてくれると思うが、最後に特撮監督の佛田から見た「ゴジュウジャー」の見どころを訊ねてみた。

 「特撮も一生懸命撮っていて飽きさせないものになっていると思うし、作品としては、なんだかわからないけど(笑)、場面が次から次へと変わって行くところが面白さにつながっているんじゃないかな。本編の会話シーンも常に何か楽しいことをしゃべっているし、新旧レッドが対決したり、意外なところで巨大戦が挿入されたり、いつもの等身大戦→巨大戦じゃないパターンも新鮮だよね。シリーズが長く続くと『王道』という言葉が出て来るけど、いつまでも『王道』と言っていても仕方ないからね。ああいうアイデアは、僕ら特撮の人間だけでは思い浮かばない。僕らは『ファイト!サンバルカンロボ』の歌に乗せて発進、合体していくシーンが100点だと思っているので(笑)つまるところ、やっぱり松浦プロデューサーや脚本家の井上亜樹子さんが作り上げた世界観に大きな魅力があるんだろうね」(取材・文:トヨタトモヒサ)

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「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー」

最高最強のナンバーワンを目指し、子どもたちに圧倒的な人気を誇る動物や恐竜=獣(けもの・ジュウ)をモチーフにした5人のヒーローが活躍する物語。脚本は「仮面ライダーガッチャード」の井上亜樹子、演出は「仮面ライダーガッチャード」「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」などの田崎竜太(崎はたつさきが正式表記)が担当する。

「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー」テレビ朝日系にて毎週日曜午前9時30分~放送中

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