佐藤健、初めて韓国のスタッフと組んだラブストーリーで意外な驚き

現在配信中の Amazon Original ドラマ「私の夫と結婚して」(毎週金曜2話ずつ配信中・全10話)で小芝風花と共に主演を務める佐藤健。6月末には韓国で行われた制作発表会に登壇し、初めて韓国のスタッフと組んだ本作への思いを語った。現地でインタビューに応じた佐藤が、「いいものを作るために考えることというのは、国が違っても一緒なんだということを実感した」という撮影や、ドラマで描かれる「人が変わるには何が必要なのか?」という普遍的なテーマに対する持論を語った。
【画像】ヤバすぎるカッコよさ!佐藤健、韓国で撮りおろし<12枚>
本作は、韓国で漫画化、ドラマ化もされたNAVERウェブ小説を、日韓共同プロジェクトとしてドラマ化。親友と夫に裏切られ命を落とした薄幸な主人公・神戸美紗(小芝)が10年前にタイムリープし、親友と夫を破滅させようとリベンジを図るストーリー。佐藤が演じるのは、二度目の人生を送る美紗の日常に介入してくる御曹司の鈴木亘。美紗の勤務先の会長の孫で部長。流行りに左右されない独自の価値観を持っており、独身。「カメ吉」という亀を飼っている。
韓国の会見で日本とのカルチャーギャップ
プライベートでは何度も韓国に足を運んでいる佐藤だが、6月26日にソウルで行われた制作発表会は佐藤にとって韓国では2015年の釜山国際映画祭以来、約10年ぶりの公の場となった。本イベントでは冒頭に約10分に及ぶフォトセッションが設けられ、小芝、佐藤と一人ずつ撮影。二人ともにMCから求められる多彩なポージングにも鮮やかに応じていた。
「一人でフォトセッションするんだ! と。日本の場合、トークの後に設けられているのが一般的ですが、冒頭で、しかも一人ずつ撮って最後にみんなでも撮るっていう。なかなか恥ずかしかったです(笑)。なおかつ韓国では常に流行りのポーズがあって移り変わりも激しいようで、僕はあまり詳しくなかったので勉強になりました。会見では、記者の皆さんが日韓合作についてなど積極的に質問されていて、作品にすごく興味を持ってくださっているんだなと肌で感じました」
佐藤とラブストーリーといえば、2020年放送のドラマ「恋はつづくよどこまでも」が社会現象となり、佐藤演じるドSの天才医師・天堂先生が爆発的な人気を博したが、「私の夫と結婚して」で演じる亘も、女性の夢が詰まったようなキャラクターだ。美紗からすれば一度目の人生では全く接点がなかったにもかかわらず、二度目の人生では美紗が危機に陥るたびに現れ、身を挺して助ける。予告編にも美紗が亘に「なんでどこにでも現れるんですか……?」と問う場面があるが、なぜ亘は美紗を助けるのか? 初めは二人の接点が明かされず、亘はかなりミステリアスな印象だが、佐藤が初めに考えたのが「美紗のために生きる人」ということ。
「初めに、亘は美紗の幸せのために生きると決めた男で、そこに軸を置くことを提案させていただきました。ですから、僕からしたら美紗のためじゃないところで動いていたりする方が違和感があるぐらいで。あとは、亘は人の上に立つ立場で、部下たちにも信頼され、憧れられている優秀な人なので、話している時などには安心感があって、どっしりしている人なんだろうと想像しました」
人を好きな気持ちは無条件に応援したくなる
物語が進むにつれ、実は亘が学生時代から美紗に片思いしていたことが浮かび上がっていくが、美紗はそうした事情を何も知らない設定になっているため、美紗へのアプローチについてはかなり試行錯誤したという。
「割と悩みながらというか考えながら、いろいろと試しながらやらせていただきました。美紗のことが好きだったにもかかわらず、全く話しかけることもできず、何もできず、認識もされていなかったので、不器用な人だなと思いました。自分の心をうまく開けない。気持ちのアウトプットの仕方が下手なんだろうと。だからこそ、美紗の二度目の人生で巡り合ったときにはものすごく努力して美紗に近づこうとする。とはいえ、もともと不器用な人が好きな人と対面した時にどのぐらい目を見て喋れるのか、どのぐらい挙動不審になるのかとか、そのあたりの塩梅がなかなか難しくて」
クールに見えて不器用。そんな亘の一面を表すのが、二度目の人生を送る美紗と勤務先のエレベーターで初めて顔を合わせるシーン。飛び上がりたいぐらいうれしいにもかかわらず、突然の事態に動揺した亘は美紗に思わず「そのスカーフ似合ってませんよ」とぶっきらぼうに言い放つ。佐藤にとっても思い入れが深いシーンとなった。
「彼はずっと美紗のことが好きだったのに何も言えないんだと。テンパって“似合ってませんよ”とか言っちゃう感じがチャーミングだと思ったし、この方向で役柄を膨らませていけたら魅力的な人物になるんじゃないかと。あのシーンは台本を読んだ時からすごく好きで、自分がやりたいと思えたのは、まさにああいうようなシーンがあったから。愛おしいといいますか。クールに見えて、根の部分には温かい気持ちがある。あとラブストーリーを観たりやらせていただくなかで思うのが、やっぱり人を好きな気持ちって、無条件に応援したくなるものなんだなということです」
監督は、日本でも反響を呼んだドラマ「ザ・グローリー ~輝かしき復讐」(2022)などのアン・ギルホ。佐藤がかねてから憧れていた監督だといい、撮影では「観る人たちの気持ちに寄り添う」姿勢に感銘を受けたと振り返る。
「亘にとって美紗と出会えたのは、もう泣きそうになるぐらい、すごいことなんですよね。なんてことのないシーンでも、亘にとってはすごく特別なこと。ただ、常にそういう気持ちを表に出して演じていたら、“この人絶対何かある”とバレバレになってしまう。要は1つのエンターテインメントとしてこの作品を楽しんでもらうために今、視聴者をどういう気持ちにさせるべきなのかということを常に計算されていたように思います。例えば“亘の本当の気持ちはここでは見せずにもっと淡々としてほしい”といったふうに細かくディレクションをされていたので、観る人たちの気持ちに寄り添ってモノづくりをされる方という印象があります」
いいものを作るために考えることは国が違っても一緒
撮影地は都内、関東近郊など多岐にわたり、雪のシーンについては「富山に行き、実際の雪がある場所で撮影したので寒かったし、よく滑ったので大変でした。雪の中を歩くのは体力がいりますね」と振り返る佐藤。約4か月にわたって韓国のスタッフと苦楽を共にしたことで佐藤がたどり着いたのは、日本人スタッフとの違いではなく同じだったことに対する驚きだったという。
「もっと違うのかなと思っていたんですけど、どちらかというと、“やっぱりそうだよね”と感じることの方が多く、そのことに対する驚きがありました。例えば、今回は基本的にテストはせずどんどんカメラを回していくんです。もちろん日本でもテストをしない監督もいらっしゃるので、これが韓国のスタイルなのか、アン・ギルホ監督のスタイルなのかはわからないんですけど、何はともあれテストをしない良さって絶対あると思う。芝居の生っぽさだったり。逆にテストをする良さもありますが、しない良さを選ばれたアン・ギルホ監督の意図がすごくわかるんです。そういう意味で、今まで日本で仕事してきて思っていたことでもありますが、いいものを作るために考えることっていうのは国が違っても一緒なんだなと確認できたというのがあります」
なお、ドラマの大きな魅力の一つが、一度目の人生では自分に自信がなく弱々しかった美紗が、二度目の人生でタフに、美しく変身していくこと。美紗は夫と親友に復讐するなかで、なぜ一度目の人生で自分が不幸だったのか、さまざまな気付きを得ていく。「人が変わるには?」と問うと、「これは僕の持論ですけど、人が変われる瞬間は1つだけだと思っていて。それは、自分が失敗した時。例えば、周りの人がこの人失敗しそうだなと、よかれと思ってアドバイスしたとします。でもそれじゃあ変わらないと思うんです。失敗しない限り、人は変われないと思う。それは僕が経験し、周りを見て気付いたことでもあります」と明言していた。(取材・文:編集部 石井百合子)
スタイリスト:酒井タケル ヘアメイク:古久保英人


