製作費30億超え…呪われた名作『ポンヌフの恋人』4Kリマスター版公開

　日本でもロングランヒットを記録したレオス・カラックス監督の映画『ポンヌフの恋人』（1991）の4Kリマスター版が12月20日よりユーロスペースほかで公開されることが明らかになった。併せて、ジュリエット・ビノシュがセーヌ川で水上スキーに挑んだ伝説的シーンのティザー動画、場面写真が公開された。

【動画】仏女優がスタントなしで水上スキー！『ポンヌフの恋人』ティザー動画

　本作は、天涯孤独で不眠症の大道芸人アレックス（ドニ・ラヴァン）と失恋の痛手と眼の奇病による失明の危機で家出した画学生ミシェル（ジュリエット・ビノシュ）の物語。ホームレスとなりパリの最も古い橋ポンヌフで出会った二人の軌跡が描かれる。日本では1992年に公開され、シネマライズ渋谷で27週のロングランを記録した。

　大ヒットとなった本作だが、その製作は苦難を極めた。パリ市からポンヌフ橋を借り切って撮影に入る直前、主演のドニ・ラヴァンのケガにより撮影中止に。再度の許可は下りず、夜間シーン用だったモンプリエ郊外ランサルグのセットをフランス映画史上最大のオープンセットにしてポンヌフ橋を再現。しかし、底なしの資材と長期の人件費で2つのプロダクションが破産。製作は中断し、強風でセットも倒壊。製作費は膨らみ続け、混迷を深める状況をマスコミがスキャンダラスに書き立て「呪われた映画」とまで呼ばれた。

　製作の先行きが危ぶまれる中、カラックス監督は本作が完成させるに値する映画だと証明するため、スティーブン・スピルバーグやフィリップ・ガレルら映画監督や文化人を試写室に呼び、未編集のフィルムを上映。最終的に『カミーユ・クローデル』などで知られたプロデューサー、クリスチャン・フェシュネールが製作を引き受け、日本からもカラックスの友人だった堀越謙三が出資し、完成。製作費はセットだけで6億近くに及び、合計30億円を超えた。

　4Kレストア版はカラックスの協力のもとオリジナル35mmネガからデジタルレストアし、撮影監督キャロリーヌ・シャンプティエが修復と色彩補正を監修、トマ・ゴデールが音響を担当した。

　ティザー動画は、カラックスが試写室でスピルバーグらに見せたシーンのひとつで、革命記念日の夜セーヌ川の両岸から滝のように花火が流れる中、盗んだボートをアレックスが操縦し、ミシェルが水上スキーで疾走する場面。凍てつく11月の夜、失敗すれば大金が消えてしまうプレッシャーと転倒の恐怖を抱きながら、ビノシュはスタントなしで自らこのシーンに挑んだ。またシーン写真は、革命記念日の花火が上がる中、アレックスとミシェルがポンヌフで狂ったように踊り、もつれあいながら乱舞するさまを捉えている。（石川友里恵）