『E.T.』公開から43年…54歳になったエリオット少年の現在

スティーヴン・スピルバーグ監督による名作SF映画『E.T.』(1982)が、10日よる9時30分から日本テレビ系「金曜ロードショー」で放送される。劇中でE.T.と感動的な友情を育む少年・エリオットを演じたヘンリー・トーマスは、現在54歳。当時11歳でエリオット役を務めた後、どのような人生を歩んできたのだろうか。彼の現在について紹介する。
地球外生命体との交流を経て子供たちが大きく成長していく物語を描いた『E.T.』において、主人公の少年エリオットに扮したヘンリーは、1971年9月9日アメリカ・テキサス州に生まれた。1981年、映画『ラガディ・マン(原題) / Raggedy Man』でデビューすると、翌1982年にはオーディションで見事に『E.T.』エリオット役をゲット。スピルバーグの一発回答によって選ばれたヘンリーは、劇中で少年の無邪気さと心優しさを体現。映画史に燦然と輝く名作において、圧倒的存在感を放った。
しかし、これも名子役の宿命か。その後、約10年間にわたってB級映画やテレビ映画への出演が相次ぎ、出演作に恵まれない低迷期に突入。長らく彼の輝きをスクリーンで観ることができない日が続いた。
そんな中、1994年にブラッド・ピット主演『レジェンド・オブ・フォール/果てしなき想い』で返り咲くと、翌年に出演したテレビ映画『誘導尋問』の演技が高く評価される。同作ではゴールデン・グローブ賞にノミネートされ、子役俳優のイメージからの脱却に成功。ここから、実力派俳優としての地位を確立していくことになる。
以降のキャリアでは作品や役柄の大小を問わず、あらゆる作品で淡々と仕事をこなしている印象を受ける。とりわけ2002年に出演したマーティン・スコセッシ監督、レオナルド・ディカプリオ主演の映画『ギャング・オブ・ニューヨーク』では、ディカプリオ演じる主人公アムステルダムの幼馴染であるジョニー・シロッコに扮した。当時、同作を鑑賞中に、あの『E.T.』のエリオットと同一人物であることがすぐに分かったというファンは、そこまで多くはないだろう。
その後も、サスペンス映画『11:14』(2003)、テレビドラマ「スティーヴン・キング 8つの悪夢」(2006)、ロマンス映画『親愛なるきみへ』(2010)などで印象的な演技を披露。2019年にはスティーヴン・キング原作、スタンリー・キューブリック監督による名作『シャイニング』の40年後を描いた『ドクター・スリープ』でバーテンダー役を務めた。
近年はテレビドラマにおける活躍も際立ち、犯罪捜査ドラマ「FBI:Most Wanted』、DCドラマ「スターガール(原題) / Stargirl」、Netflix「アッシャー家の崩壊」、「ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス」、「ザ・ホーンティング・オブ・ブライマナー」などに出演。すでに芸歴は40年を超えているが、まだまだ現役バリバリの名脇役としてさまざまな作品で活躍中である。
ここで少し話は脱線するが、『E.T.』と言えば、実はその後のエリオットを描いた“続編”が存在していることを知っているだろうか。
2019年、『E.T.』公開から37年後に発表されたXfinityのプロモーション・ムービー「A Holiday Reunion」だ。同作では、今やすっかり大人になり、妻と2人の子供と共に幸せな生活を送るエリオットのもとに、E.T.が帰ってくるところから幕を開ける。彼らは昔のように楽しい時間を過ごし、子供たちもすっかりE.T.と仲良くなっていく。しかし、E.T.が故郷に帰らなくてはならない日はやってくるもの。クライマックスではエリオットの子供たちが自転車に跨り宙を舞う。オリジナルへのオマージュシーン満載で映し出されたファン垂涎の一本である。エリオットが数十年ぶりに再会した親友を見つめる場面は、もはや涙なしには観られないだろう。
小さな端役で映画やテレビドラマに登場することも多く、もしかしたら、知らず知らずのうちに成長した彼の演技を目の当たりにしているかもしれない。
名子役と呼ばれた俳優たちはその後のキャリアにおいて苦労を強いられることが多く、これはもはや宿命であるが、ヘンリー・トーマスは私生活における様々な誘惑に屈することなく、とことん俳優人生を追求してきた。だからこそ、現在も第一線で活躍できる俳優となっているのだろう。いつの日か、『E.T.』続編を今度は映画として楽しませてほしいものだ。(文:Zash)


