「べらぼう」憎まれ役・定信に同情集まる 井上祐貴が圧巻の演技

横浜流星主演の大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(毎週日曜NHK総合よる8時~ほか)の9日放送・第43回では、倹約令を推し進めた老中・松平定信が破滅していくさまが描かれ、罠に嵌めた者たちへの憎悪を全身全霊で表した井上祐貴の圧巻の演技が注目を浴びた(※ネタバレあり。第43回の詳細に触れています)。
かつて尊敬する恋川春町(岡山天音)を追い詰め死なせることとなり、人知れず布団部屋で嗚咽した定信。第43回「裏切りの恋歌」では定信が再び布団部屋で激情を発露することとなった。
江戸城で定信を巡る陰謀が動き出したのは、幕府にオロシャの脅威が迫った時のこと。定信が海防策を将軍・徳川家斉(城桧吏)に提出すると、家斉はそろそろ定信に頼らず政を行うよう父・一橋治済(生田斗真)から諭されたと言いながら、自身は政に興味がなく、定信が将軍補佐から外れてもこれまでと同じように指示を出す仕組みはないものかと話す。そこで定信は「大老ならば将軍のごときにらみを利かせることができる」と思い立ち、徳川宗睦(榎木孝明)に相談。大老は井伊・酒井・土井・堀田の四家のみというしきたりがあったが、宗睦はオロシャの一件をうまく収めることができれば大老に後押しできるかもしれないとのことで、定信は遣日使節であるラクスマンを帰国させる妙案を思いつき、見事に解決する。
この際、宗睦は「上様はそなたをけむたがっておった。それをこのところ急に……」と家斉の態度を不審がっており、視聴者の間でも「罠じゃない?」「大丈夫?」とざわついていたが、定信はオロシャの脅威を前に自身を必要としてくれたのではないかと宗睦の疑念を一蹴。大老になる日を心待ちにしていたが、その先には思いもよらぬ罠が待ち受けていた。
定信と家斉の間では、定信が将軍補佐と老中の兼任が負担になっていることを理由に二つの職を解き、代わりに大老職を命じる密約が交わされていたが、家斉は定信の将軍補佐、および老中の役目を解くと「これよりは政には関わらず、ゆるりと休むが良い」と言い渡した。すかさず宗睦が「越中守をおいて他にこの難しき形勢を乗り切る者はいない」とフォローしたが、定信の家臣・本多忠籌(矢島健一)、松平信明(福山翔大)らはすでにオロシャの件は定信が方をつけ、さらに質素倹約によって幕府の金蔵も立て直したといい、グルになって定信を厄介払い。
恥辱に顔を引きつらせる定信を、その場にいた全員がせせら笑い、治済は「越中、徳川のため、上様のため、わが息子のため、ご苦労であった」「ささ、下城されよ、心おきなく願いを叶えよ」と引き下がらせた。
家斉や家臣たちがせせら笑う声が聞こえる中、「わたくしではないか、わたくしではないか…」とつぶやきながらその場を去る定信。定信が老中の職についたのはわずか6年という史実は知られていたが、突然の失脚劇にSNSでは「うわー」「ハメられたーっ!!」「やはり図られた」「謀ったな」「まっすぐすぎるんですよ」「家臣もグルだったか」「梯子外された」「これは酷い」「全て一橋治済のシナリオか…」「上様笑いすぎ」と驚きの声が続々。
その後、布団小屋に一人こもった定信は怒り狂い、「嫌がられようとも煙たがられようともやるべきことをやり通したのはわたくしではないか!」「くずどもが…地獄へ…地獄へ落ちるがよい」と憎悪を爆発させた。定信の倹約令は吉原や蔦重ら本屋たちの生活に影を落とすことにもなったが、自身もつましい暮らしを続け、かつて春町を死なせたゆえに信念を貫き通さなければならないという戒めもあった。蔦重たちからすると“敵”だが、治済が張り巡らせた狡猾な罠にはまり、誇りを奪われた定信に対して同情の声が上がり、「やっぱりそこで泣くんだ…」「目が真っ赤…」「ここからどう出る?」「呪詛しそう」「ちょっと気の毒になった」「こうなると可哀想な気がする」と同情の声が寄せられ、井上が迫真の演技で視聴者をくぎ付けにした。
失意の定信だが、終盤では同じく治済に力を封じられた大奥総取締・高岳(冨永愛)が接触。治済がかつて暗殺、陰謀に用いたとされる“死の手袋”を差し出したことから、定信のリベンジを予感させる。(石川友里恵)


