岩田剛典、身だしなみに関する校則に反対派

三代目J SOUL BROTHERS のメンバーでダンサー、俳優、歌手の岩田剛典(36)が主演を務める映画『金髪』(11月21日公開)。きらびやかなアーティストとしてのイメージとは一転する“イタい”30歳の中学校教師にふんしており、「今まで演じた中で多分ダントツでみっともなくてダサい主人公」という岩田が撮影の裏側、校則に対する考え方、そしてソロとして活動する機会が増えた昨今への思いまでを語った。
オトナになれないイタい主人公に「ほぼ共感」
映画『金髪』は、岩田演じる主人公・市川が担任を受け持つクラスの生徒数十人が金髪姿で登校したことから幕を開ける。それはマスコミやネット、文科省までを巻き込んだ大騒動に発展していく……。監督を『決戦は日曜日』(2022)などの坂下雄一郎が務め、同作は第38回東京国際映画祭で観客賞に輝いた。
映画の企画が動き出したのは「ブラック校則」がよくニュースで取り上げられていた時期。坂下監督が、イギリスの男子学生たちが校則で定められた制服の規則に抗議するため、スカートで登校したという海外のニュースをきっかけに物語を開発していったという。岩田演じる主人公・市川は事なかれ主義を具現化したかのような人物であり、職員会議などで意見を求められるといつも自身の立場を明らかにせず、プライベートでも交際中の恋人・赤坂(門脇麦)に結婚を切り出されると煮え切らない態度をとる。そんな“残念”な役柄のオファーを受け快諾した理由を、岩田はこう語る。
「脚本が面白かったから、その一点に尽きます。会話劇でありつつも、しっかりと芝居でストーリーが展開されている。なおかつ扱っている題材も斬新ですし、監督が描きたい世代間のギャップの話のセンスが良くて。あまり他の監督が描かなさそうな些細なことを丁寧に描写されるといいますか。あとはパブリックイメージと違うと言われますが、市川は自分を代弁してくれているように感じましたし、ほぼ共感できます。日々“面倒くさいな”と感じていることを視聴者目線で語ってくれて、特に30代オーバーの日本人は共感できるのではないでしょうか」
岩田いわく、市川は「プライドが高くて、かしこぶる性格」。そんな市川の人となりを表すシーンとして岩田の琴線に触れたシーンの一つが、市川が恋人の赤坂を困惑させる行動に出る場面。街中で騒ぐ若者たちを目にした市川は、何を思ったのか彼らをよけることなく邪魔だと言わんばかりに割って入っていき、「なに、今の……?」とあっけにとられる赤坂に対して、市川は素知らぬ顔で「ああいう時、行っちゃうんだよね」と返す。
「あれが坂下さんの笑いのセンスだと思う。例えば、小学生が“足が速い=モテる”みたいなノリだと思います。あと、ちょっと楽しそうにしている人に対してのジェラシーというか、物事がうまくいっていないときに八つ当たりしてしまう、みたいなこともあるような気がします。いきったまま、幼児性を持ったままオトナになってしまった市川を表す表現として僕は理解していました。すごくいいシーンだなと思いました」
演技面では市川のまくしたてるかのような膨大なモノローグを含め、監督から「早口」「テンポアップ」を心がけるよう演出されたというが、それ以外に関しては役づくりは必要がなかったという岩田。「監督から“とにかくテンポアップで”“なるべく流ちょうに”と言われましたが、もう脚本が何よりの演出で。この脚本だったら絶対早口じゃないとシーンを再現できないだろう、早口でやるんだろうなと理解していました。僕が脚本を読んだ印象と、監督が求める市川像と大きくはかけ離れていなかったようなので、そこを信じてやらせていただきました。モノローグの部分に関しては、市川ではなく別人かもしれないという考えでやっていました。いわば、物語を実況しているような感覚です」
校則に反対する金髪少女の意見は「ド正論」
劇中、金髪集団のリーダーである板緑(白鳥玉季)は自身の行動に対して確固たる信念があるが、市川は面倒なことをやってくれたとしか思っていない。板緑との「なぜ金髪ではいけないのか」「校則はあるべきなのか」といった問答を巡り、市川は完膚なきまでに論破されるが岩田自身は校則に対してどんな考えなのか。
「僕の場合、中学時代はずっと丸刈りでしたが、校則に対して云々思ったことはなくて。男子校だったこともあってまだ色気づいていなかったですし、身だしなみよりはスポーツをうまくなりたいとか別の事に意識がいっていたので考えたことすらなかったと思います。僕自身、人と衝突するのが好きじゃないので板緑側とは言えませんが、映画を見終えてみても板緑の主張はド正論だと思うし、校則を変えない理由を述べられる人はいるの……? と。日本の社会全体が変わればいいのに、と思う自分もいます。自分がこういう業界にいるからなのかもしれませんが、服装のこと、髪型のこととか、身だしなみに関する校則はどうでもいいことだと思ってしまう。“個性なんだから好きなようにしたらいいじゃん”って」
また、本作では市川、事件を巡る状況がSNSによってめまぐるしく変化していくさまが描かれ、SNSの負の側面も浮かび上がっていく。岩田自身もSNSを使用しているが、どのように向き合っているのか。
「発信する瞬間はやはり緊張感があります。確かに、付き合い方は難しいと思います。だから受け取るだけでいるのが一番安全だと思いますが、僕は立場上、発信しないといけないので基本的には仕事のことだけ、と限定しています。この業界ではSNSが影響力を持つことがビジネスチャンスに繋がる側面もありますが、僕の場合はプライベートを見切ってまで発信したいわけではないのであくまで仕事の一環として取り組んでいます」
多分野からのオファーを引き受ける理由
本作の市川と同様、今年は岩田自身も目まぐるしい変化の年となった。ソロアーティストとしてユニバーサルミュージック(Virgin Music レーベル)とタッグを組み活動を本格化。「Takanori Iwata ASIA TOUR 2025-2026“SPACE COWBOY”」でソロ初のアジアツアー、映画『ジュラシック・ワールド/復活の大地』で初の洋画吹替え、NHK Eテレのトーク番組「超越ハピネス」で初のレギュラーMCと「初づくし」となった。アーティストとして以外の能力も求められるようになり多忙を極める岩田だが、岩田自身はどう感じているのか。
「第三者が僕に期待してくださることに対して、基本的にやったことがないことであっても一回やってみようというスタンスです。僕は自分のことを俳優ともアーティストだとも思っていなくて。いろんなことをやり過ぎて肩書きが一つではなくなっている状況で、逆に自分は今どこに向かっているんだろうといったことを探す作業として、いただくお話は臆せず一回やってみようと。それでもし自分に合わないと感じるようであれば降りるし、この後の人生に必要だと思ったら続ける、という繰り返しです」
自身を取り巻く環境の変化については「音楽の面で言うと、レーベルが変わったことでいただけるお仕事の幅がより広くなったと感じます。新人時代は、とにかくいただいたお仕事をがむしゃらにこなす時期が続きましたが、徐々に自分が本当にときめくものに比重を置き始めている気がします。昔と変わった部分では、それが大きな違いだと思います」と話す。12月19日より、福田雄一監督と4度目のタッグとなる映画『新解釈・幕末伝』(岡田以蔵役)が公開。プロモーション活動もあり、年末まで多忙が続くことになりそうだ。(取材・文:編集部 石井百合子)


