「ばけばけ」史実にない“スキップ回”が意味すること 吉沢亮らキャストがあえて下手な演技

19日に放送された高石あかり(高=はしごだか)主演の連続テレビ小説「ばけばけ」(NHK総合・月~土、午前8時~ほか ※土曜は1週間の振り返り)の第8週・第38回では、ヘブン(トミー・バストウ)がヒロイン・トキ(高石)に西洋の歩き方として教えた“スキップ”が、15分間まるっと取り上げられた。制作統括の橋爪國臣が、スキップを面白おかしく物語に盛り込んだ意図や撮影の裏話を語った。
連続テレビ小説の第113作「ばけばけ」は、松江の没落士族の娘・小泉セツとラフカディオ・ハーン(小泉八雲)をモデルに、西洋化で急速に時代が移り変わっていく明治日本の中で埋もれていった人々をフィクションとして描く。「怪談」を愛し、外国人の夫と共に、何気ない日常の日々を歩んでいく夫婦の物語。
第38回の冒頭、トキはフミ(池脇千鶴)の前でヘブンから教わったスキップを披露する。そこから、勘右衛門(小日向文世)をはじめとする松野家のメンバー、英語教師・錦織友一(吉沢亮)、島根県知事・江藤安宗(佐野史郎)まで広がり、それぞれが見よう見まねでスキップに挑戦する。下駄や草履の文化が色濃く残っていた当時の日本では珍しいステップに、身分関係なく登場人物が興味を示し、夢中になる姿が微笑ましい。
今年9月の試写会でも予告されていた“スキップ回”。橋爪は「史実には載っていない、脚本家のふじき(みつ彦)さんオリジナルのアイデアです」と紹介する。「トキの女中としての暮らしが始まって、(これまでの波乱の展開や、時代に翻弄されるトキの描写に対して)特に何も起こらない、トキの平穏な日常を描く物語が本格的に始まったわけです。でも、それこそがふじきさんの最も得意とするジャンルでもあります。スキップも、人間のおかしみを描くふじきさんの持ち味がよく生かされたシーンだと思います」
橋爪は、トキの何気ない日常の一コマを象徴するものとして、当時の日本にありそうでなかったスキップを取り上げてはどうかという話になったことを振り返り、「吉沢さんにはあえてスキップができない演技に取り組んでもらいました」とキャストにもスキップが下手な演技に挑戦したことを明かす。「わざとらしくなるとダメなので、撮影現場で“できないスキップ大会”を俳優部とスタッフで行いました。スタッフの中にスキップが実際にできない人がいて、その人の動きを参考にするなど、とにかくいろいろ試しました」
その結果、錦織流、勘右衛門流、フミ流とそれぞれのスキップが画面に映し出され、その度に小さな笑いが起こる。橋爪は「出演者がそれぞれ自分の演じるキャラクターの個性を考慮し、動きを考え、今の最終形にたどり着いたという感じで、とても楽しい回でした。みなさんにも、楽しんでもらえたら嬉しいです」と話していた。(取材・文:名鹿祥史)


