「ばけばけ」ヘブンの悲しき過去、朝ドラ異例の字幕量で描いた覚悟 制作統括「吹き替えたら台無し」

高石あかり(高=はしごだか)が主演を務める連続テレビ小説「ばけばけ」(NHK総合・月~土、午前8時~ほか ※土曜は1週間の振り返り)第11週の第53回(10日)と第54回(11日)では、ヘブン(トミー・バストウ)の悲しき過去が明らかになった。アメリカで一度結婚していたこと、ヘブンがなぜ人と深く接することを拒むようになったかなど、彼の心に深く刻まれたセンシティブなエピソードがつづられた。制作統括の橋爪國臣が、第11週でヘブンの過去を描いた意図や裏話を語った。
【画像】ハーバード卒の才女!ヘブンの元妻役のミーシャ・ブルックス
連続テレビ小説の第113作「ばけばけ」は、松江の没落士族の娘・小泉セツとラフカディオ・ハーン(小泉八雲)をモデルに、西洋化で急速に時代が移り変わっていく明治日本の中で埋もれていった人々をフィクションとして描く。「怪談」を愛し、外国人の夫と共に、何気ない日常の日々を歩んでいく夫婦の物語。
第53回では、1800年代後半の米オハイオ州・シンシナティの記憶が回想シーンとして登場した。ヘブンの最初の妻となる黒人女性・マーサ(ミーシャ・ブルックス)との出会いから二人の結婚生活が描かれ、続く第54回では、当時のアメリカ社会が抱える人種差別問題にスポットが当てられ、ヘブンが黒人女性と結婚したことで勤務先の新聞社から追い出されるシーンや、周囲の視線に混乱・葛藤するマーサの姿が映し出された。
ヘブンはその後、全てから逃げ出すようにシンシナティから離れた。時代が過ぎ、松江を訪れ、自分に求愛する江藤リヨ(北香那)を前に、過去の自分を振り返って、「人と深く関わることはやめたのです」とマーサとの結婚を機に変化した自分の人生観について語る。「どの国でもどの街でも、ただの通りすがりの人間として生きていくことにしたのです。友人でも恋人でも私は深く関わらない」と告げ、リヨに対して結婚の意思がないことを告げる。
橋爪は「トキとヘブンが(通りすがるように)たまたま出会ったことがこのドラマの核です。トキについて描いてきましたが、ヘブンについてもどこかで描かないといけない。そこで、第11週でヘブンの話を盛り込むことにしました」と経緯を説明する。「ヘブンの生い立ちを全て描くのは大変です。ドラマの放送時間を考慮した上で、シンシナティ時代のエピソードを選びました。これから結婚するトキとヘブンですが、ヘブンがその前に一度結婚していたというのは、彼のパーソナリティーを描く上で、とても重要なエピソードであると思ったからです」
回想シーンは英語セリフで描かれ、それに伴い、日本語字幕も自然と多くなった。あえて日本語吹き替えにしなかった理由についても、橋爪は「このドラマを制作しようと思った時から、日本語吹き替えにはしないと決めていました。朝ドラとは思えないほどの字幕量だと思います。トミーのお芝居は吹き替えたら台無しになると思ったんです。思い切って字幕で行こうということになり、今の形に落ち着いています」と明かしていた。(取材・文:名鹿祥史)


