香川照之「劇場で私の姿を見られるのは最後かも」“陰の悪役”集大成『災』で1人6役

香川照之が21日、都内で行われた『災 劇場版』の公開記念舞台挨拶に登壇、本作により自身の「集大成が整った」と満足し、「劇場で私の姿を見られるのは最後かもしれません」と語った。この日は、中村アン、竹原ピストル、関友太郎監督、平瀬謙太朗監督も来場した。
本作は、2025年にWOWOWで放送されたドラマ「災」を劇場版として再構築したサイコサスペンス。悩みや過去を抱える6人の男女が不可解な災いに見舞われ、警察はその全てを自殺や事故として処理するが、不審に感じた刑事・堂本(中村)は真相を追う。年齢や境遇も異なる6人の周辺には一人の男(香川)の存在があり、顔つきや性格、仕草を変え、全く異なる人物としてそれぞれの前に現れていた。
映画『宮松と山下』(2022)でもタッグを組んだ香川のキャスティングについて、平瀬監督は「この企画のアイデアは机上の空論で作れないと思っていました。一人の役者さんがいろんな役をやるって、すごい難しいことをお願いすることになるので無理だと思っていました」と振り返りつつ、「前作で1か月半くらいご一緒して、“香川照之のやれること”がわかっていたので、香川さんならこれを全部やれるんだ……と思い、作ろうとなりました」と説明した。
現在60歳の香川は「何が怖いのか、何が面白いのか、何が笑いなのか、何が泣くことなのかという映画のエキスとして僕が感じていたこと。今の若い世代と、その共通項があるのかを常に確かめなければならない」と考えていたといい、両監督は「その共通項を確かめるにふさわしい2人」と明かし、「有り難く(役を)頂戴しました」と感謝した。
香川の“間”を取る芝居が印象的な本作。香川は「役者が一番不得意とするところは間を取ること。台詞を覚えていると証明するために早く言おうとするんですよ。(台詞を)忘れていると思われる恐れを突破して、この間を作れるかどうかが僕のキャリアの中で最大の宝。この2人の監督ならこれをぶつけられると判断しました」と芝居に込めた真意を語った。
締めのあいさつで、「役者をずっとやってまいりまして、もう60。健康状態とかいろいろ考えれば、いつどうなるかわからない。いつ災いが降りてくるかわかりません」と切り出す香川。続けて、「キャリア中盤で、わかりやすい悪役として『半沢直樹』(の大和田暁)とかをやらせていただいた。一方で、今回の『災』の男に通底するような『トウキョウソナタ』とか『クリーピー』とか、フィルムノワールの中の陰の方向の静かな方向の男もやらせていただきました」と思い返し、「今回はその後者の方の集大成だったと思っております。この6役を経れば、もうやることはほぼないので、劇場で私の姿を見られるのは最後かもしれません。僕の中では、陽の方向の悪役と陰の方向の悪役の集大成が整ったという感覚でございます」としみじみ。そして、「1人でも多くの方に観ていただきたい」とアピールしていた。(錦怜那)
映画『災 劇場版』は新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開中


