宮崎駿監督の最新の仕事がお披露目!「子供のためのジブリが帰ってきた」と本人喜び

17日、スタジオジブリで宮崎駿監督の最新の仕事である「パノラマボックス」の取材会が行われ、息子の宮崎吾朗監督と鈴木敏夫プロデューサーがパノラマボックスや駿監督の近況などについて語った。
パノラマボックスとは、キャラクターや背景画などが別々に描かれ、箱の中に何層にも分けて配置された仕掛け絵のような絵箱のこと。箱の中に描かれた絵をのぞき込むと、映画のワンシーンのような奥行きのある風景が広がって見える。駿監督はこのパノラマボックスを愛知県にあるジブリパークでの展示のために制作しており、今年7月8日より「ジブリの大倉庫」の企画展示室にて計31点が公開される予定となっている。
この日は現時点で完成している23点がお披露目。ボックスの前でしゃがみこむと、駿監督が圧倒的な画力で描き下ろした『君たちはどう生きるか』『となりのトトロ』『風の谷のナウシカ』『崖の上のポニョ』『千と千尋の神隠し』『もののけ姫』『魔女の宅急便』『ハウルの動く城』『紅の豚』『風立ちぬ』などの美しい世界とキャラクターたちが目の前に生き生きと浮かび上がる。視点を変えるたびに新しい発見がある力作だ。
駿監督は『君たちはどう生きるか』(2023)が仕上げの段階に入った2022年6月ごろからパノラマボックスの制作を開始したとのこと。吾朗監督は「ジブリパークがオープンしていく段階でしたので、本人いわく、『じゃあ俺の何かを展示させてあげよう』『吾朗のために、これはジブリパークのために作るんだ』と言って始めたのが、パノラマボックスですね」と振り返る。
取り上げた題材について、吾朗監督は「本人が映画の中で気に入っているシーンをそのまま作っているものもあれば、映画そのものじゃなくて、自分が好きな作品の中のあるイメージを取り出して作っているのもあります」と明かす。完全オリジナルもあり、その一つはこの日公開された「船の墓場」。タイトル通り難破船が集まった氷の世界で、船員たちの視線の先には空に浮いた白のワンピースを着た女性がいるという神秘的なものだ。
残りの新作「人魚姫」「ブタが帰ってきた!」については、吾朗監督は「こっちはあの……わかんないんですよね(笑)。5歳の男の子に戻って描いています。これが映画なのかって言われると、そうじゃないんですよ。自分がかつて好きだった、子供の頃好きだったようなものを、自由に描いて作っているっていう印象のものでした」と説明した。
取材会に先んじてジブリの保育園の子供たちを招待すると、パノラマボックスをすごく面白がって見てくれたとのこと。吾朗監督は「その様子を見た宮崎駿の感想が、良かったんですよね。『子供のためのジブリが帰ってきた!』って。すごく喜んで、帰って行きましたね」と笑い、鈴木プロデューサーは満足した駿監督が吾朗監督に握手を求めるほどだったと明かした。
パノラマボックスは子供たちの目線に合わせ、低い位置に配置されている。吾朗監督は「だから多分、大人の皆さんはものすごく下にあるものを覗き込まなければいけない。ただ、腰を曲げて覗き込んでも、全部は見えないんですよ。だから、しゃがんでください。そうすると子供の視線になって、大人が上から見下ろしたものとは違う風景が、ちゃんと見えます。膝を曲げて、ちょっと大変ですけど、31回しゃがんでいただければ(笑)」とアピールした。
鈴木プロデューサーいわく、今年1月に85歳を迎えた駿監督は「やたら元気」とのこと。「まだまだ現役、俺は頑張っているぞっていうのをね、なんか非常に強くアピールしてきます。85なのにまだ映画を作りたがっているんですよ。本当に嫌ですよね」と笑う。体調がいい日はやる気を出し、雨だとやる気をなくすということを繰り返しているといい、鈴木プロデューサーは駿監督の新作映画の可能性について「僕はいいところで辞めた方がいいとどこかで思っているんですよ。宮さんはいろんな映画の企画をいまだに話すけど、応援はしていないですよね。でも、何が起こるかわからないから、世の中って!」と肯定も否定もしなかった。
また、自身の新作映画の可能性について聞かれた吾朗監督は、「作りたくないんですよ」とぼそりとこぼして笑わせるも、「ちょっと短いものは、あの、今……黙っています。ごめんなさい。ない、ということではないです」と何かしら準備していることをにおわせていた。
パノラマボックスで使われているのは紙、鉛筆、絵具、ペン、ハサミなど身近なものばかりで、巨匠が大真面目に作り上げた贅沢すぎる紙工作ともいえる。子供時代、工作などを駿監督に教わったことはあるかと問われた吾朗監督は、「教わったことはないんですけど、一個覚えているのが、小学校の低学年ぐらいの頃、大和の軍艦の模型を作ろうと思ったけどお金がなくて、紙で作っていたんですよ。だけど図鑑の写真だと後ろの方がよく写ってなくて、『後ろの方がわからん』って感じで作りかけで置いておいたら、翌朝起きると、横に軍艦の俯瞰図が描いてあって」と駿監督のほほ笑ましいエピソードを明かしていた。(編集部・市川遥)


