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是枝裕和監督、大悟の主演起用は直感 「撮影中は褒めないようにしていた」

健介(千鳥・大悟)、音々(綾瀬はるか)
健介(千鳥・大悟)、音々(綾瀬はるか) - (C) 2026「箱の中の羊」製作委員会

 是枝裕和監督の映画『箱の中の羊』(公開中)で映画初主演を果たしたお笑い芸人・千鳥大悟。俳優の綾瀬はるかとダブル主演を務める本作で、亡き息子と同じ姿をしたヒューマノイドを迎え入れる大工を演じ注目を浴びているが、大悟をキャスティングした理由やその魅力を是枝監督が語った(※一部ネタバレあり)。

【動画】大悟(千鳥)が綾瀬はるかをエスコート『箱の中の羊』初日舞台挨拶

 物語の舞台は、テクノロジーが進み現在よりもAIが暮らしに根付いた少し先の未来の日本。2年前に7歳の息子・翔(かける/桑木里夢※「桑」の木の上は十と草冠が正式)を亡くした建築家の音々(おとね/綾瀬はるか)と工務店の二代目社長を務める健介(千鳥・大悟)の甲本夫婦は、「事件や事故で家族を亡くした遺族に対し、最新型ヒューマノイドを無償でレンタルする」サービスを利用し、息子と同じ姿をしたヒューマノイドを迎え入れる。同作は、第79回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品された。

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ヒューマノイド・翔(桑木里夢)、健介(大悟)

 是枝監督いわく、大悟を起用した理由は「直感」。大悟の冠バラエティー番組を観て「撮りたいと思った」という。

 「『ヤギと大悟』を見て撮りたいと思った。大悟さんはこれまでも俳優のお仕事をされていますが、そこまで出番が多くない印象。「トークサバイバー」(Netflixのドラマ・バラエティー番組)も面白いですが、とにかく“絶対この人シリアスなお芝居もできるな”と思っていたし、その直感は当たりました」

 なお、大悟は岡山出身で日頃から「わし」と言っているが、これはそのまま劇中に取り入れられている。

 「最初は変えることも考えていたんですけど“わし”の方が自然だなと。無理に標準語にしなくても、綾瀬さんは広島、大悟さんは岡山と出身地を本人と同じ設定にしてしまってもいいんじゃないか。当初は、感情的になる場面のみ方言になる設定で、綾瀬さんはお母さんと話す時に広島弁が出るし、夫婦げんかのところはそれぞれの方言でと考えていました。綾瀬さんはそのようにしましたが、大悟さんはいつの間にか全編岡山弁がベースになりました」

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音々(綾瀬)、ヒューマノイド・翔(桑木里夢)、健介(大悟)

 夫婦のもとに到着したヒューマノイド・翔に、妻・音々が何のためらいもなく「おかえり、翔」と受け入れるのに対し、健介は納得しているわけではなく「君のパパではない」「おじさんでええよ」と言い聞かせる。物語が進むにつれ、そうした夫婦のズレが浮かび上がっていくが、綾瀬と大悟の演技が魅力的だっため夫婦のシーンが増えていくこととなった。

 「ヒューマノイド・翔が駅名を暗唱しているのを夫婦が聞いた後の、夜の寝室のシーンなんかは最初の脚本にはなく足したところです。音々が“翔は本当は生きていたんだ、あれは全部夢だったんだ”と話すのですが、この夫婦にとって、戻ってきた翔がどういう存在なのか、というのが微妙に違いながら進んでいく。でも、健介が翔とハイタッチした瞬間はきっと通じ合っていたんじゃないか。そういう、わかりやすくいうと繊細な気持ちの揺らぎ。綾瀬さん、大悟さんを見ていたら、夫婦の何がどう微妙に違っていて、どこが一緒なのかみたいなことのディテールをもう少しきめ細かく、縦軸にしていけるなと思った。だから撮影中に追加していったし、キャスティングが終わってから決定稿の前に足したシーンもあります」

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 後半、音々がソファーで健介にドライシャンプーをするシーンがあるが、この場面も配役が決まった後に書いたシーンだったとのこと。

 「最も夫婦の距離が縮まるシーンにしようと思いました。それまで基本的には触れていなくて、そこで初めてちゃんと触れようと書きました。大悟さん、照れずにやってくれましたね(笑)」

 大悟の演技は期待以上のもので、是枝監督から芝居について指示を出すことはほとんどなかったという。

 「僕が唯一言ったのは、健介がヒューマノイド・翔を抱きしめて“硬いなあ、お前”と言うシーン。対して翔は“僕、ロボットだから”と答える。その時“成長した息子が立派になって、父親がお別れで抱く時に言うようなニュアンスで”とお伝えしたところ、納得されていました。そのぐらいで、あとはもう本当に素晴らしかったので、褒めないようにしていただけです。自分の芝居はいいんだと意識しないように。撮っている間は“今のしゃがみ方よかったですね”“今の歩き方よかったです”とか、ディテールだけ褒めて。ご本人は“褒められない”とおっしゃっていましたけど、撮り終えた後にはしっかり褒めました(笑)」(取材・文:編集部 石井百合子)

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