北村匠海、俳優と音楽の二足わらじに挑む理由語る 日本映画批評家大賞主演男優賞受賞

俳優の北村匠海が1日、東京国際フォーラムにて行われた第35回日本映画批評家大賞授賞式に出席し、映画『愚か者の身分』で主演男優賞を受賞。スピーチでは、俳優とアーティストという二つの表現を両立させたからこそ本作に出会えたことを明かしていた。
受賞作となった映画『愚か者の身分』は、西尾潤の小説を原作に、貧しさから闇ビジネスに関与することになった3人の若者を描くヒューマンドラマ。監督は、ドラマ「イタズラなKiss~Love in TOKYO」や「ライオンのおやつ」などの永田琴。北村は、SNSで女性に成り済まし、身寄りのない男性たちの個人情報を引き出しては戸籍を売買する主人公タクヤを演じている。
受賞に際し、北村は「正直なところ『なぜ自分なのかな』というのが、最初に率直に抱いた感情でした」と率直な胸の内を明かすが「選考理由を読ませていただいたところ、自分がこれまで歩んできた役者人生を全肯定してもらったような気持ちになりました。『僕は間違っていなかったんだな』と、自分が歩んできた道を自分でも少し褒めることができた、そんな時間でした」と表情を崩す。
選考委員は「主演でありながら半分以上のシーンで目を覆う、あるいは顔を半分隠すという演技に挑まれていました。『隠す』という行為は、その時点で『目の演技をしなくていい』と単純に思ってしまいがちですが、目を覆っていても、その先で演じているタクヤがどんな感情でどんな表情をしているのか、見ている私たちは非常に容易に想像ができた。その想像ができたということは、前半部分で北村さんが、目の芝居を通常よりも何倍もの力で演じていたからです。それがあってこそ、目を覆った時の演技が成立しているのだと感じました」と惜しみない賛辞を送っていた。
北村は「僕は、常に自分のイメージや、何かにチャレンジし続けることが、役者・北村匠海の歩むべき道だと思ってやってきました。それは、自分がバンドをやっていることも大きな理由の一つです」と切り出すと、音楽業界からは「役者が音楽をやっている」、役者の世界では「音楽をやっている人が芝居をしている」というイメージに、戦うのではなく「ちぐはぐな自分」というものをちゃんと認め「だったら僕だからこそできる役、僕だからこそできる歩み方をしよう」という発想で20年間俳優業に挑んでいることを明かす。
そんな思いがあったからこそ「今回の『愚か者の身分』という作品や、タクヤという役に出会わせてくれた」と語った北村は「今後も映画のために自分に何ができるのかを日々考えながら、いろいろな役にチャレンジし、新しい出会いを大切にできる役者であり続けたいと思います」と誓っていた。
多くのシーンで「目の芝居」が封印された本作について北村は「僕がお芝居で一番大事にしているのが目の芝居なんです。だからこそ、オファーをいただいた時に『見えない先を知りたい』と思って、この『愚か者の身分』という作品をお受けしました」といい、作品との出会いに感謝していた。
共演には、新人男優賞を受賞した林裕太や、綾野剛らが名を連ねる。北村は「綾野さんは、みるみる体が大きくなっていく役者さんで(笑)。(綾野が所属する)トライストーンという事務所の方々は、みんな体が大きくなる印象があります」と笑わせると「剛さんはとにかく役に対してストイックで、僕の中では“化物”というか“神様”のように見えてきたのが非常に印象的です。“役者の魂”が血として常に流れていて、芝居のことを常に考えている先輩です。そこに僕は恐ろしさを感じつつも、尊敬もありますし、必ずいつかまた共演したいと思っています」と語っていた。
主演男優賞は北村、吉沢亮(『国宝』)の二人が受賞。『愚か者の身分』は、作品賞のほか監督賞(永田琴)も受賞している。日本映画批評家大賞は、1991年に水野晴郎が発起人となり、淀川長治、小森和子といった当時第一線で活躍した映画批評家たちによって設立された、映画人が映画人に贈る映画賞。第35回の今回は「問うたびに、深くなる輝き。」をテーマに授賞式が行われた。
受賞結果は以下の通り。(磯部正和)
作品賞:『愚か者の身分』(永田琴監督)
監督賞:永田琴監督『愚か者の身分』
主演男優賞:北村匠海『愚か者の身分』、吉沢亮『国宝』
主演女優賞:岸井ゆきの『佐藤さんと佐藤さん』
助演男優賞:横浜流星『国宝』
助演女優賞:二階堂ふみ『遠い山なみの光』 ※ご登壇なし
ドキュメンタリー賞:『みらいのうた』(エリザベス宮地監督)
アニメーション作品賞:『ChaO』(青木康浩監督)
新人監督賞:小島央大監督『火の華』
新人男優賞(南俊子賞):林裕太『愚か者の身分』
新人女優賞(小森和子賞):南琴奈『ミーツ・ザ・ワールド』
脚本賞:熊谷まどか・天野千尋『佐藤さんと佐藤さん』
編集賞(浦岡敬一賞):大川景子『旅と日々』
松永文庫賞(特別賞):NPO法人メディア・アクセス・サポートセンター
ゴールデン・グローリー賞(水野晴郎賞):田中泯『国宝』
ダイヤモンド大賞(淀川長治賞):長塚京三『敵』


