出口夏希&蒔田彩珠、一緒に乗り越えた人気原作への不安 実写映画『ルックバック』ですごした“ご褒美”のような日々
藤本タツキの大人気漫画を是枝裕和監督が実写化した、映画『ルックバック』が9月11日に待望の公開を迎える。主人公の藤野と京本を演じたのは、出口夏希と蒔田彩珠。是枝監督のNetflixシリーズ「舞妓さんちのまかないさん」以来の共演となる二人が、プレッシャーを抱えながら臨んだ本作への思い、和やかな現場の裏側、互いの印象や役者としての現在地を語った。(取材・文:磯部正和/写真:高野広美)
【動画】藤野と京本!実写『ルックバック』出口夏希&蒔田彩珠インタビュー
プレッシャーを抱えながらの挑戦
本作は、漫画制作に情熱を注ぐ対照的な二人の少女の日々を追う青春ストーリー。出口は、クラスの中心人物で漫画の才能に自信を持つ負けず嫌いな藤野を、一方の蒔田は、不登校でありながら圧倒的な画力を持つ京本を演じる。二人の才能が交錯し、やがて一つの道を歩み始める姿を鮮やかに切り取った作品だ。

ーー大人気漫画が原作ですが、本作のお話を受けた時の思いを教えてください。
出口夏希(以下、出口):まずは是枝監督ともう一度ご一緒できることが嬉しかったです。ただ、それと同時に「『ルックバック』かぁ~。私でいいのか」という不安や、原作があることへのプレッシャーもすごくありました。
蒔田彩珠(以下、蒔田):私も同じでした。是枝監督と「舞妓さんちのまかないさん」以来だったので、また撮影できるのが嬉しかった反面、プレッシャーはありましたね。
出口:そうですね。プレッシャーはとてもありました。
ーーお二人の子ども時代を演じる方々のオーディションも見学されたそうですね。
出口:入らせていただきました。オーディションを見学する側になるのは初めてだったので、沢山オーディションを受けていた当時の緊張感を思い出してしまいました。
蒔田:でも、是枝監督のオーディションは楽しい記憶があります。「好きにやってみて」という感じで、当日にその場で台本を渡されて自由に演じるスタイルだったので。
出口:確かに、監督はすごくニコニコしながら見てくれていましたね。
ーー子ども時代を演じた二人の演技はいかがでしたか?
出口:私の子ども時代を演じた七瀬ふうりちゃんが、私にそっくりだったんです。「誰も怖くない」という感じで、堂々としていました。
蒔田:立ち方やしゃべり方、距離感までそっくりでした。是枝監督も「立ち方とか一緒だよね」とおっしゃっていました。オーディションを見た時点で「この子なんだろうな」という予感がありましたね。
和やかな是枝組の現場
ーーものづくりにおいて対極にありながらも、心はつながっている藤野と京本。アプローチの際に拠り所にしたことはありましたか?
出口:(藤野を演じるうえで)一番頭に置いていたのは「負けず嫌い」なところです。編集部に行って、編集者の前田を演じる菅田将暉さんとお芝居するシーンでは、特に藤野の負けず嫌いな部分が出るので、そこは忘れずに意識していました。
蒔田:中学生という年齢設定だったので、いつもより少し声を幼くすることを意識しました。方言もあったので、声のトーンには少し気をつけました。
ーー再び参加した是枝組はいかがでしたか?
出口:少し恥ずかしさがありました。「舞妓さん~」の時は(エピソード毎に)複数の監督がいらっしゃったので、是枝監督の前でがっつりお芝居をするのは少し照れくさかったんです。前回から成長していなかったらどうしようと焦る気持ちもあったのですが、今回監督から「成長したね」と言っていただけて嬉しかったです。
蒔田:お芝居をどう見られるかという不安もありましたが、現場がひたすら楽しくて。「これぞ是枝組だな」と思って楽しみました。
ーー「これぞ是枝組」と感じたエピソードを教えてください。
出口:みんなで一つの作品を作りながら、撮影期間を休みのような感覚で楽しめるくらい居心地が良いんです。
蒔田:キャストだけでなく、スタッフの皆さんも「働かなきゃ」というより、「本当に良いものを作りたい」という人が集まっている感じでした。ずっと穏やかな雰囲気でしたね。
出口:秋田でのロケも、あんなに雪が降っていたのに「寒い」という記憶がないくらいです。着込みすぎてパンパンだったのもありますが(笑)、朝日が昇る時間の景色が本当に綺麗でした。
蒔田:あんなに深く積もったふわふわの雪は初めて見ました。本当にご褒美のような楽しい現場でしたね。
波長が合う二人の関係性と、現場で受けた刺激
ーーお互いの相性や居心地の良さはいかがでしたか?
出口:一番似ていなさそうな二人に見えると思いますが、なんだか似ているんです。
蒔田:喜怒哀楽のタイミングが一緒なんですよね。眠い時は二人でダウンしているし。
出口:しゃべらない時は二人ともずっと黙っていて、しゃべる時はめちゃくちゃしゃべる。
蒔田:同じタイミングで同じテンションでいることが多かったので、気を使うこともなく、すごくやりやすかったです。面と向かって会話するシーンは少なかったですが、お別れのシーンでお芝居をした時はすごく気持ち良くて楽しかったです。また、もっと会話のある役で共演したいですね。
出口:嬉しいです!
ーーお互いの才能に惹かれ合う関係性でしたが、これまでの役者人生で「この人の才能はすごい」と衝撃を受けた出会いはありますか?
出口:一緒にお芝居をさせて頂く方に対して、勝ちに行こうと思ったことはないですね。どんな方とお仕事しても、お芝居や尊敬できる性格など、「素敵だな」と思う部分はたくさん吸収したいと思っています。
蒔田:私も「勝ち負け」で考えたことはないですが、現場での立ち振る舞いがかっこいいなと思い、真似したいと思うことはあります。(以前共演した『御上先生』で)上坂樹里ちゃんが涙を流すシーンがありました。半日くらいかけて撮る長いシーンだったのですが、何回やってもずっと本気でお芝居をしていて。カメラに映っていなくても同じテンションを保つ集中力は素晴らしいと思いました。
出口:それは本当にすごいね。私は自分と真逆な方や、目上の方々を見て「こんな風になりたいな」と影響を受けることが多いです。
これから大切にしたいこと
ーーお二人にとって、大きな人生の分岐点となった出来事はありますか?
出口:このお仕事を始めたこと自体が、私にとって1個目の大きな分岐点だと思います。
蒔田:私は物心ついた時からお仕事をしていましたが、高校を卒業した時ですね。働く時間や役の幅が増え、「もう学生じゃないんだ」と、仕事に対する責任感がぐっと増した気がします。
ーー俳優業をやっていくうえで、譲れない思いや大切にしていることはありますか?
蒔田:「好きでやっている」ということを忘れないようにしています。重い役をやっている時は気持ちが沈むこともありますが、自分が好きで選んだ道だと思い出すようにしています。
出口:私はまだそこに辿り着けていないというか……。今は目の前にあることで精一杯です。少しずつ慣れていって、気持ちの余裕が出てきたら、そういう思いも生まれてくるんじゃないかなと思っています。
人気コミックの実写化というプレッシャーを抱えながらも、互いに信頼し合い、自然体で作品に向き合った出口と蒔田。是枝組の温かい現場のもと、瑞々しい才能が交差する映画『ルックバック』で、二人がどんな表情を見せるのか期待が高まる。
映画『ルックバック』は9月11日より全国公開
出口夏希:スタイリスト・道端亜未/ヘアメイク・渋沢知美(beauty direction)
蒔田彩珠:スタイリスト・小蔵昌子/ヘアメイク・Chika Ueno



