朝ドラ「ブラッサム」なぜ宇野千代の人生が題材に選ばれたのか?

主人公の葉野珠を演じる石橋静河。
主人公の葉野珠を演じる石橋静河。 - (C) NHK

 石橋静河が主演を務めるNHK連続テレビ小説「ブラッサム」(NHK総合・月~土、午前8時~ほか)は明治から昭和にかけて自由を求め、書くことを通じて自らと向き合い続けた作家の宇野千代がモデルとなっている。制作統括を務める村山峻平に、宇野を題材とした理由について話を聞いた。

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 宇野は、作家活動のほかに、実業家として、また着物デザイナーとして活動するなど、多彩な才能を持った女性として知られる。村山はドラマを制作するにあたって、自分を肯定して力強く奮い立ちながら生きていく女性を描きたかったと述べ、本ドラマの主題歌のタイトルにもなっている言葉「咲き誇れ」がドラマ化を進める上で、重要なキーワードの一つとなったと振り返る。

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 村山は「『咲き誇れ、わたし』と共に『咲き誇れ、あなた』という側面もある。(SNSなどを通じて)どうしても周りの雑音が入ってくるこの時代に、自分を肯定しながら生きていくことはすごく難しくなっていて、そんな時代だからこそ、自分を大切にし、肯定しながら生きる女性を描くドラマがあってもいいのではないかと思ったのが、宇野さんを題材に選んだ理由です」と話す。

 昭和や大正の時代と違い、医療や生活習慣が改善し、「人生100年時代」が叫ばれる時代になった。村山は「『100歳ライフ』という言葉があって、『100年生きるのが当たり前だ』というふうに世間がなってきている。さらに『多様性も当たり前だ』という風潮で、100歳を多様性を持って生きることはなかなか難しいのではないかと思いました。きれいごとだけでは片付けられない問題で、一人一人の人間はどうやってその多様性を担保しつつ、100歳まで生きてくのかという時に、何の指針も世の中には示されていない」と考え、そんな中、98歳まで生き、最後まで自分の生き方を貫いた宇野の存在に着眼するようになる。

 「98歳まで生きた宇野さんはとても大変だっただろうけど、最後まで咲き誇っていた。この時代において100歳生きることの大変さもあるけれど、その大変さを生きていくのは、こんなに面白いことなんだということをドラマを通じて伝えられたらいいなと思っています」と村山は振り返る。

 一方で「今作ろうとしてるのは、葉野珠(はの・たま)を主人公としたオリジナルドラマで、宇野千代さんの人生をそのままコピーして描くわけではない」と珠が決して宇野の人生をコピーしただけの人物でないことも話した。

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 宇野が90歳を目前に人生を振り返った自伝的小説「生きて行く私」を取り上げ、村山は、「宇野さんの自伝的な作品は、その時自分はどうだったかということにはあんまり触れておらず、俯瞰の視点で人生が語られています。小説の中で削られていたヒリヒリした部分、その時起こったリアリティのある主人公の感情こそ、ドラマを作る隙間になるんじゃないかと思いました。宇野さんが積み上げていった人生の道中、手前部分の感情のドラマを作りたいと思いました」と制作過程の思いを語る。

 恋多き側面も持った宇野の人生だが、「恋愛は一つの要素にしか過ぎない」と述べ、村山は「大きくは出会いと別れの話だと思っています。出会って別れて、葉野珠が何を得たのか。この時代に何を獲得していったら、あの俯瞰にたどり着けるのか。加賀まりこさんのあの感じに近づくにはどうすればいいのかということを、丁寧に描くドラマだと考えています。そういった視点で見ていただけると、宇野千代さんが残した作品とは別軸の物語が見えてくるのではないかと思っています」と話していた。(取材・文:名鹿祥史)

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