朝ドラ「ブラッサム」渡部篤郎演じる清治の壮絶シーンの意図とは?

圧倒的な存在感を見せる渡部篤郎。
圧倒的な存在感を見せる渡部篤郎。 - (C) NHK

 石橋静河が主演を務める2026年後期放送のNHK連続テレビ小説「ブラッサム」(NHK総合・月~土、午前8時~ほか)の第10回が放送された。主人公の葉野珠(はの・たま)の放蕩無頼な父・葉野清治(渡部篤郎)が病に倒れた。制作統括を務める村山峻平に清治の病中、清治の病の前に現れる幻影のような「もう一人の清治」の演出に込めた思い、狙いを聞いた。※以降、第10回のネタバレを含む。

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 本作は、明治から昭和にかけて自由を求め、書くことを通じて自らと向き合い続けた作家・宇野千代をモデルとした連続テレビ小説第115作。岩国市に生まれた主人公・珠が、波瀾万丈な人生を歩みながら、小説家として大成していく姿を描く。主人公の珠役は石橋のほか、幼少期を村上蘭が、1980年代の晩年期を加賀まりこが演じる。

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(以降ネタバレあり)
 第2週では、珠が高等女学校の4年生になり、幼い兄弟に読み聞かせるお話を書くようになる。だが、そんな最中、清治が病に倒れた。清治は病に倒れた自分をなかなか受け入れられず、荒ぶっては家族を困らせる。ある日、最期を前に清治は寝間に現れたもう一人の自分と対峙。死への葛藤や恐怖を抑えきれなくなり、包丁を振り回しながら、雪の中へ飛び出してしまう……。

 雪の演出について村山は、降る雪の量などに工夫を凝らしたことを明かし、「ただただ雪が降り注ってる中でやるというより、清治があばれたあとの正月・新春を感じさせたかった」とその意図を説明する。「2週の終わりに雪の中でそのまま倒れてしまう清治というのはすごく悲しい。清治は清治で、いろいろな思いを持っていて、清治がいなくなった後、残された家族が清治をどう受け止めながら、次の季節(新春)に向かっていくかという世界観を見せたいと考え、新春の前の12月にぱらつく雪のようなニュアンスにしています」と話す。

 雪の中、暴れに暴れた清治は止めに入った珠に抱き抱えられ、「わしゃ、結局、何にも……」と怯えるように声を振るわせ、「死にとうない」と繰り返しながら珠に縋りつく。この直前、清治の前に幻影のように現れた「もう一人の清治」について尋ねられた村山は、「もう一人の清治が出てきますが、それに何を見るのか、何を思うのかっていうところは、視聴者の皆さんに委ねている部分があるんです」と意図を説明することに迷いを見せる。

 女性が今のように自分の生き方を主張することが困難だった時代を描くが、村山は男性もまた、家長制度の中、生きづらさを感じる人が多くいたのではと話す。「家を継がされた人間が本当に幸せになれるのかというとそうではない人もいたと思います。清治のようにそこから自由になりたいとか、息苦しさや自由への渇望みたいなものがあった人もいたと思います。そんな清治の溢れ出てくる思いを渡部さんが集中して演じてくださった」と振り返る。

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 村山は「清治がなりたかった自分など、そういったものを最後表に出させるということにしないと、視聴者の方たちが納得感を得られず終わってしまう。だから、ギリギリわかる、あるいはギリギリわからないという範囲の演出で、清治の思いを具現化した」と清治の幻影について明かした。「あのシーンは最初、予定されていませんでした。脚本にはなかったのですが、チーフ演出の盆子原と脚本の櫻井さんがいろいろと話をする中で、清治がなりたかった自分に近づきたくても届かないという演出にしようと出てきたアイデアです」と脚本にはなかったアイデアであることも強調した。

 病床に伏す清治を演じるにあたって、渡部が減量をしたかと問われると、「減量したかはわからないです。仮にそうしていても(渡部は)言わない人だと思います」と笑顔を見せる。清治の最期の撮影の前、石橋と渡部が特別に時間を作って話し合っていたことも紹介し、「前日に渡部さんは石橋さんとしっかり話し合われていました。珠と清治は心が通じているのか通じていないのかわからない距離感で接していて、そんな中、どう最期のシーンを撮るのか、いつもよりも時間をとって話し合いながら確認したんだと思います。お互いの高い信頼関係の中から、お芝居が生まれたと感じました。とても自然に、あのシーンの空気感や演技が出来上がりました」と話していた。(取材・文:名鹿祥史)

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