朝ドラ「ブラッサム」珠の父・清治を演じた渡部篤郎の美学

石橋静河が主演を務めるNHK連続テレビ小説「ブラッサム」(NHK総合・月~土、午前8時~ほか)で、ひと際強い存在感を放っている主人公・葉野珠の父・葉野清治(渡部篤郎)。制作統括の村山峻平に、渡部の起用理由や、撮影現場で感じた渡部の俳優としてのこだわり、その素顔について話を聞いた。※一部第10回のネタバレを含む。
本作は、明治から昭和にかけて自由を求め、書くことを通じて自らと向き合い続けた作家・宇野千代をモデルとした連続テレビ小説第115作。岩国市に生まれた主人公・珠が、波瀾万丈な人生を歩みながら、小説家として大成していく姿を描く。主人公の珠役は石橋のほか、幼少期を村上蘭が、1980年代の晩年期を加賀まりこが演じる。
(以下、第10話のネタバレあり)
第10回では、病に倒れた清治の最後が描かれた。強い個性やアクを持った清治が2週目にして姿を消すのは少し寂しい気もするが、渡部自身は2週目で退場することをどう感じていたのか。村山によれば「『出来上がるのが楽しみだ』と言ってくださって。冗談まじりに、もっと出ませんかという話をしたら、『もうどんどん時代は進むんだよ』と飄々と現場を去っていったという。
そもそも清治役に渡部を起用した経緯は何だったのか。村山は「渡部さんとは過去、一緒にお仕事をしたことがありました」過去に現場を共にしたことがきっかけだったと明かす。「二人で並んで話している時に、当時はもちろん後に朝ドラに出ることは意識されていなかったと思いますが、ふと『たまには朝ドラでNHKに出るのもいいな』とおっしゃったのを僕は覚えていて……」と話す。
渡部は村山との過去の仕事について、ほとんど覚えていなかったといい、「忘れていたことを包み隠さず伝えてくれる感じも、渡部さんらしくていいなと思いました」と村山は振り返る。「僕がずっと見ていた俳優さんで、そんな渡部さんが今、清治の役を演じたら、言いようのない味が出るのではないかと思ったんです」と笑顔を見せる。村山は、「渡部さんはセリフではない部分の表現にとても説得力のある方なので、清治を誰にするかとなった際、やはり渡部さんにお願いしたいと思いました」と話す。
現場で見せる渡部の在り方にも魅せられたといい、「渡部さんの人柄ですが、実際にお会いすると優しく、とてもいい兄貴分でプロデューサーや演出、カメラマンなどスタッフに対しても、すごく歩み寄ってくれる素敵な人なんです」と紹介する。
村山は「撮影が序盤のチームをまとめていこうと思っていた時に、渡部さんが撮影の一体感を作ってくださいました。その渡部さんのためにいい映像を撮ろうという気持ちが出演者やスタッフに出てくる感じがあり、側で見ていてすごく勉強になりました」と話す。
渡部はとても器用な俳優であるともいい、「大河などのいろいろな現場を見てきているのですが、あんなに簡単に、自転車のように馬に乗る人を初めて見ました」と印象的だったシーンの一つに、渡部の乗馬シーンを振り返る。
2週目では病床から抜け出そうとする清治を止めに入る、息子の守との取っ組み合いのシーンも印象的だった。「もう病床だから、清治も力がなくて、倒れるところのお芝居があったと思いますが、あれもやっぱり、どのように演じればみんなに負担がなく、気持ちが通えるシーンになるのか、動きも含めて、裏で守くんに教えてあげていたところが印象的でした。動きの確認をして、お芝居があったかいうちにきちんと撮れるような状況を、スタッフと一緒に作ってくれるんです」と紹介する。
継母である葉野リョウ役の国仲涼子が、声を上擦らせる場面でもあったが、そんな清治と守の演技を見て、自然と生まれたシチュエーションであったといい、「声がちょっと掠れて動揺しているリョウさんのお芝居にも繋がってとても素敵なシーンになりました。気づいたらそういう状況にしてくださる渡部さんは本当に頼もしかったです」と話していた。(取材・文:名鹿祥史)



