『汝、星のごとく』の長谷川博己は「牧師のイメージ」 キャスティングの理由を藤井道人監督が明かす

「美しい彼」シリーズや「流浪の月」などの小説家・凪良ゆうのシリーズ累計発行部数200万部を突破する恋愛小説を実写映画化する『汝、星のごとく』(公開中)で、主演の横浜流星、広瀬すず演じる櫂と暁海が通う高校の教師・北原草介を演じる長谷川博己。北原は二人を導くキーパーソンであり、独自の価値観を持つ人物だが、キャスティングの理由を藤井道人監督が語った(※一部ネタバレあり)。
本作は、風光明媚な瀬戸内のとある島を舞台に、京都から島に転校し漫画原作者になる夢を持つ男子高生・青埜櫂と、島で生まれ大好きな刺繍を仕事にしたいと願いながら母親と暮らす女子高生・井上暁海の15年にわたる愛と人生模様を追うストーリー。脚本を、ドラマ「きのう何食べた?」シリーズや来年放送のNHK大河ドラマ「逆賊の幕臣」などの安達奈緒子が務め、『余命10年』(2022)や『正体』(2024)などの藤井道人監督がメガホンをとった。
北原は、櫂と暁海が通う高校の化学教師で、幼い娘と2人暮らし。共に複雑な家庭環境にあり、島で生きづらさを抱える櫂と暁海にとってメンターのような存在で、卒業後も二人を気にかけ、とりわけ暁海の人生に大きな影響を与える。藤井監督にとって、長谷川とは初タッグ。どこか浮世離れしており、ミステリアスな雰囲気をまとう北原役に、なぜ長谷川をキャスティングしたのか。
「シンプルに僕が長谷川さんが演じる北原先生を観たかった、というのが大きいです。長谷川さんはもともと事務所の先輩で、お仕事はご一緒したことはなかったのですが交流はあって。以前から面白い方だなと思っていたんです。あれだけかっこいいのに、かわいらしさ、少し自信のなさもあるギャップがたまらなく魅力的。長谷川さんご自身も北原と同様にミステリアスなところがあるので、是非やっていただきたいと」
~以下、映画のネタバレを一部含みます~
藤井監督いわく、北原は「つかめない」キャラクター。長谷川へのオファーはダメもとだったという。
「例えば、もう少し若い俳優だと、“この監督って三角関係をやりたかったのかな”と思われてしまうかもしれない。もしそうなったら、この『汝、星のごとく』という原作を傷つけてしまうことになる。暁海に対する感情が、愛ではあるけど恋ではない方がいいと思っていて。なおかつ、北原の愛は独特なロジックだし、原作で読んだ時も、このつかめない北原先生の配役は難しいなと思った時に、どこか牧師のように見える長谷川さんが浮かんで。それで、ダメ元でオファーをさせていただきました」
北原が難役とあって、長谷川とはかなりディスカッションを重ねたという藤井監督。「多分、流星くんの10倍ぐらい話した気がします」と懐かしそうに振り返る。
「北原がどのぐらいの温度で喋るのかのチューニング。暁海、櫂に対してもそうですけど、愛情を言葉にどれぐらい乗せるのか。“大丈夫”という言葉一つでも、だいぶ見え方が違ってきます。それで、僕らはあまり抑揚をつけない選択をしました。とても慈悲深く、彼自身も不器用である。急にコンドームを渡してきたりして“なにこの人?”と思うんだけど、実は誰よりも愛情深く2人を見つめている。メガネのフレームはどれにするのかといったビジュアル面を含め、長谷川さんとはたくさんディスカッションできてよかったなと思います」
シーンの中でも特にディスカッションを重ねたのが、終盤に暁海の背中を押す際の感情の込め方。
「終盤で暁海の背中を押すとき、どれぐらいのチューニングなんだろうと。そこに対しては衣装合わせをしたときにもかなり話し合いました。長谷川さんは作品全体を見てくださるので、北原がでしゃばっているように見えないようにしなければと。どこまで暁海の背中を押してあげるのか、その匙加減を目の前でお芝居をしていただきながら“今のだとやりすぎじゃないか”“今のだと逆に引きすぎじゃないか”といったふうに調整していきました。最終的に僕と長谷川さんとで合致したのが、牧師のようなイメージ。暁海を導き、無償の愛を与えるとはどういうことなのかと考えた時に、そうしたイメージにたどり着きました」と、念願かなっての長谷川との初タッグに充実感をにじませていた。(取材・文:編集部 石井百合子)



