松下洸平、「豊臣兄弟!」徳川家康役で役所広司の芝居を参考に 「最後まで探し続けたい」

「総じてただのヒールではない、どこか憎めない存在であってほしいと思いながら演じています」と語るのは、仲野太賀主演の大河ドラマ「豊臣兄弟!」(NHK総合・毎週日曜午後8:00ほかで放送中)で徳川家康を演じる松下洸平。2024年放送の「光る君へ」以来、2度目の大河ドラマ出演となった本作で、家康役とどう向き合ったのか、撮影の裏側を明かした。
大河ドラマ第65作となる本作は、豊臣秀長(小一郎/仲野)を主人公に、天下人となる兄・秀吉(藤吉郎/池松壮亮)を支えた名参謀の目線で戦国時代を描くサクセスストーリー。松下演じる徳川家康は、戦国乱世に終止符を打ち、江戸幕府初代将軍として泰平の世を築いた戦国三英傑の一人。ドラマでは、「本能寺の変」で信長(小栗旬)亡きあと天下一統を目指す豊臣兄弟の前に立ちだかる最大のライバルとして描かれる。
松下にとって大河ドラマへの出演は、2024年放送の「光る君へ」以来、約2年ぶり、2度目。「光る君へ」ではオリジナルキャラクターである宋育ちの見習い医師、周明を演じたが、本作で演じるのは日本人の多くが知る実在の偉人だ。第3回で初登場した際にはどちらかというとクールなキャラクターに見えたが、信長を介して秀吉と交流するようになってからは秀吉に嘘の助言を与えたり、時には秀吉のことをすっかり忘れ、側近の数正(迫田孝也)に「あれ誰……?」と漏らし絶句させるなど、ユーモラスな人物像が反響を呼んだ。
「家康はこれまで多くの俳優さんが演じられているなか、全てを拝見しているわけではないのですが僕のイメージではクールで、腹の見えない感じ。今回もそうなるかなと思っていたのですが、八津さんが脚本でコミカルに描いてくださっていて。そのおかげで、自分でも想像していなかったような家康になったと感じていますし、演じていてとても楽しかったです。演じるうえでは、真似はできませんし、到底及ばないとは思いますが、役所広司さんが演じられた徳川家康(映画『関ヶ原』(監督:原田眞人 原作:司馬遼太郎)を拝見して、勉強させていただきました。人物へのアプローチというよりも、時代劇におけるお芝居の仕方をとても尊敬していて」
家康のコミカルな描写について、演じる側としてはあくまで「真面目にやる」意識だという。
「脚本に書かれているセリフを言うだけで、面白い雰囲気になるので、僕の方で何か作り込んだりする作業はなかった気がします。本当に面白い人って、自分が面白いことに多分気づいてない人だと思っていて。至極まっとうな意見を言っているはずが、非常にとんちんかんなことを言っているという様が面白く見えるのだと思うので、僕自身はすごく真面目に演じていました」
本作で家康が大きく変わることとなったのが、視聴者の間で“松下家康劇場”と話題を呼んだ第34回。家康がかつて人質として今川義元(大鶴義丹)のもとで過ごした記憶を思い返すエピソードだ。幼少期に義元に与えられ、可愛がっていた小鳥を元服を迎えるころに突如、義元から忠誠の証として殺すように命じられる。ここで10代の若かりし家康(松平元康)も自ら演じたことが、松下にとって大きな経験になったようだ。
「第34回で14歳の家康を演じさせていただいて、とてもよかったなと思います。幼少期は別の俳優さんがおやりになる可能性もあるなとは思っていたのですが、結果的に僕たちに託してくださった制作陣の皆さんには本当に感謝したいです。“奪われる前に奪う”という家康の考え方を決定付けるといいますか、しっかりと植え付け、第41回につながる大事なシーンでもあるので、その過程を丁寧に演じさせていただけてよかったなと思います」
25日放送・第41回「家康の野望」も家康のターニングポイントとなり、豊臣と徳川の和睦が膠着状態だったなかで、家康が豊臣のブレインともいえる秀長の暗殺を計画。しかし、家康の思惑と反し、最終的には豊臣に臣従を誓うこととなった。
今後の家康について、とりわけ第41回以降「日々悩みながら撮影している」という。
「第41回で奪われる前に奪おうとする家康が描かれますが、臣従という形で豊臣の中に入り、41回以降をどう演じるかというのが非常に難しいところだなと思います。前半の何を考えているのかわからない、腹の底が見えない家康。第34回で過去が描かれ、いよいよ牙をむき出しにした家康。そして41回でその牙をもって噛みにいく家康。これらを経て、ここから後半に向けてどうやって作品の一部になっていこうかというところで、日々悩みながら撮影しています。秀長と交流を深める回があるのですが、久々に、大人になって友達ができた家康というのが非常に面白いです(笑)」
本作の収録を、あらためて「贅沢な経験をさせていただいている」と振り返る松下。
「1つの作品でこれだけ多くの名優の方々とお芝居させていただくなんて、大河ドラマ以外ではもしかしたらないかもしれないと思います。仲野さん、池松さん、小栗さんをはじめ、たくさんの方の素晴らしいお芝居をこの目で見られたのは本当に嬉しいですし、今回は最後まで携わらせていただくのでなおさら。1年半やってきた人にしかわからないことって、きっとあると思うんですね。仲野さんにしかわからない、楽しかったことや苦しかったことがあると思うんです。僕は時々来て、その姿をそばで見ながら、自分もしっかり爪跡を残さなければならない。でも、仲野さんはクランクインの時から今日まで全く変わらないんですよね。大河ドラマの主演として、いろいろな経験をされてきたと思うのですが、お芝居にかける思いや取り組み方、現場でのあり方は変わらない。その姿をそばで見られたのは僕としては非常に勉強になりましたし、自分も見習わなければと思うようなところがたくさんありました。変わらないってすごいことだと思います」
また大河ドラマの反響を実感しているものの、役を全うできているかどうかについては現在も手探りだとストイックだ。
「どこに行っても“家康さん”だと声をかけてくださる方が多くて、多くの方が夢中になって見てくださっているんだなという実感はすごくあります。とはいえ、役が馴染んできたかというと、正直まだまだ奥の深い役なので、毎回現場に行くたびに、家康らしい居方みたいなものを今もずっと探しながらやらせていただいています。きっと最終回を終えても、これでよかったのかな、大丈夫だったかなと考え続けるんだと思います。でも、見てくださっている視聴者の皆さんに“この家康の天下を取る姿を見たい。いつか江戸の時代を作り、生涯を全うする姿が見たい”と思っていただけるように最後まで探し続けたいです」(編集部・石井百合子)



