岸井ゆきの、愛読小説映画化に想い「なぞるだけではいけない」 岨手由貴子監督「戦友という感じでした」

第39回東京国際映画祭

岸井ゆきの
岸井ゆきの

 俳優の岸井ゆきのが1日、都内で開催中の第39回東京国際映画祭で行われた映画『すべて真夜中の恋人たち』(11月13日公開)の舞台挨拶に出席。浅野忠信と共に本作の撮影を振り返った。

【画像】舞台挨拶の様子

 芥川賞作家・川上未映子の国内累計発行部数 40万部を突破する恋愛小説を映画化した本作は、人との関わりを避けるように生きてきたフリーの校閲者・入江冬子(岸井)が、年上の物理教師・三束(浅野)と交流する中で、自らの孤独や感情と向き合っていく姿を描く。舞台挨拶には森田望智、原作者の川上未映子、岨手由貴子監督も登壇した。

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 岸井は原作小説の大ファンだったといい、「大好きだったので、この小説を、今になって言語化、映像化するとなると、ただ内容を再現するだけでは映画として立ち上がらないと思いました。(原作を)なぞるだけではいけないって思ったんです」とヒロインを演じるにあたっての心境を振り返る。

 また岸井は「一回では済まず何度も読んだ小説で、自分の中に、いろんな冬子が詰まっていることに台本を読んで気づいたんです。それを一度忘れないと整理がつかなくなると思いました。監督と相談しながら、新しい冬子を立ち上げるまでが大変でした」と役づくりの舞台裏を明かす。

 岨手監督は岸井の印象を「岸井さんは冬子が出ていないシーンはほぼない。だから基本ずっと一緒にいて、戦友という感じでした」と岸井に触れ、「準備段階からずっと一緒。しかも岸井さんは映画が大好き。俳優部のチーフとして、スタッフと一緒にいるというような俳優さんだと思いました」と明かす。

 浅野も「台本をいただいて、それを自分がどう噛み砕いて役をつくっていくかを監督と話したんですけど、自分で役を演じる上で少しつまずいている部分もあって、それをどう乗り越えていくかを考えていました」とアプローチを振り返る。

 岨手監督はそんな浅野について「浅野さんはずっと映画を観てきたので、自分の観ていない浅野さんをここで見せられるか心配でした」と述べ、「でも編集していて気づいたのは100回見て、見るたびに新しい発見が生まれる。飽きないし、スクリーンに映るために生まれて来た映画の申し子だなと思うくらい、私にとっては(浅野との仕事は)強烈な体験でした」と話した。

 原作者の川上はそんな出演者たちを前に「映画を拝見して、映像化というのは原作にとって本当に美しい翻訳の一つなんだなって思いました」としみじみと感想を述べ、「書いていて自分でもわからなかったことに気付かされて、そのことに深く感動しました」と本作の仕上がりを絶賛。

 また、主人公の独白である語りを俳優の松坂桃李が担当していることについて「この男性の声がこの映画の中でどう響くかは人それぞれだと思いますが、この映画に通じる孤独とか、いろんな部分と響き合って、私にとってもすごく印象に残る冒頭の声でした。とても美しいと思いました」と話していた。(取材・文:名鹿祥史)

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