昼はてんで使いものにならない銀行員が、夜はプロレスラーになる。それも覆面かぶった反則レスラーとして、リングで大暴れ……。こんな漫画チックな話に、ソン・ガンホが主演するぅ? 『JSA』で、韓国の兵士に“兄貴”と呼ばれるほど慕われた北朝鮮の兵士を熱く演じた彼に、思わず握りこぶし状態で「イイ男だぁ~!」と感じ入った私。それだけに、出て来るなり、あの体育会系シリアス顔がすんごくフツーしてるのに驚いた。しかも、サラサラのナチュラルヘアー。な、なんかイメージが……。
ガンホ扮するのは、遅刻常習犯で営業成績がビリっけつのサラリーマン。職場ではインケンな上司からヘッドロックをかけられ、町では弱いクセに不良どもに意見して逆にボコボコにされる。おまけに、好きな同僚の女子社員に声をかけることもできず、夢の中でエルビス・プレスリー姿で彼女のために、愛の歌を絶唱。とことんトホホで爆笑しちゃうが、すっとぼけた味を全開にして、そこらにいそうなダメ男を演じるガンホには親近感わくゾ。
そんな彼が天敵上司のヘッドロックを交わし、強い男になって、憧れの彼女を射止めたい一心でプロレス・ジムでせっせとトレーニング。反則レスラーとして、リングで喝采を浴びた彼が自信に満ちた顔になり、イキイキしてくるあたり、映画だとわかっていても何だかうれしくなる。かと思えば、いくらリングで活躍しても、職場では相変わらず上司に疎んじられ、酒の席で大失態をした後の自己嫌悪ぶりからはサラリーマン社会の悲哀がにじむ。笑いを取りつつも、きっちりホロリとさせるガンホ。さすが韓国映画界で演技派と評される俳優。クライマックスの格闘シーンでも、役者魂をぶつけてくる。
殴られ、蹴られ、ボロボロにされるうち、八百長試合のお約束も忘れて大乱闘。ブチ切れたガンホの顔にあふれんばかりの男の意地がみなぎる。やっぱ、彼にはこの男臭さがなくっちゃ! イケーッ! 男道を突っ走れぇ~!
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