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『海猫』佐藤浩市インタビュー

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佐藤浩市 インタビュー
『海猫』

取材・文:FLiXムービーサイト

森田芳光監督が谷村志穂の人気小説「海猫」を映画化し、ヒロイン・薫を伊東美咲が、その薫の夫・邦一を佐藤浩市が演じた。数々の作品で名演技を披露してきた佐藤浩市が、薫への愛を肉体的な制圧で激しく表現する邦一役づくりのために、どのようなアプローチをしたのか。じっくり話を聞かせてもらった。

Q:今回は武骨な感じの海の男・邦一の役でしたね。演じてみていかがでしたか。

邦一は小さな猟師町の中で生きる長男。ここから出ようとは考えていない。家業を継がなければいけないと思っているとても保守的な男。薫という女性に出会い、結婚するも、生きていく上での目線の違いに気づいてしまう。でもそこでどうすればその溝を埋めることができるのかと考えるよりも、肉体的に制圧することで所有してしまおうとする。それを愚かと言ってしまえばそれまでだけど、そんな生き方しかできない哀れさ。女性を所有物のようにしか考えらないヒドイ男。でもどうでしょう。女性のことをきちんと考えられる男性が、都市部だからより多いのかというそうでもない。どこか女性を人としてよりも肉体的な所有物として考えてしまう男性も圧倒的に多い。その愚かさ。そうしなければ女性の心を征服できないと思ってしまう滑稽さと哀れさ。そこら辺をこの邦一という役で出せればいいな、と思いました。

Q:肉体的に制圧することで所有してしまおうという部分は、女性から見ると“怖い”と感じられるかもしれませんが、どうでしょう。

邦一は暴力的で粗野な人間ではなく、デリカシーのある男でした。肉体的な部分で薫を征服しようと、きつく抱きしめる。でもどんなにきつく抱きしめても、実体のないものを抱いているよう・・・・・・。そうしたいのにそうなりえない彼女を実感として受け止めてしまった。邦一にこのデリケートさがなければ・・・・・・。ただ単純に毎晩肉体的に制圧することで所有したと思えれば楽なのに。でも実際的にはもてあましている。魂を制圧できないことに彼自身が気づいてしまっている。それが彼にとっては不幸だった。結局彼がラストで口にする“俺はこれからどうやって生きていけばいいんだ”と叫ぶ情けなさ。ここら辺に僕は邦一に人間っぽさを感じましたね。

Q:佐藤さんの役へのアプローチは深く考えることにあるのですね。そんな佐藤さんにとって原作とは?

僕ら映像役者は役者という分野ではまだ新しいものなので、自分で見て、自分で考えなければならない。原作はあっても、実際に映画化されるということは、原作から様々な部分を削除されたものをやることになるんですね。400ページ弱あるものを2時間弱の映画にする。そうなるとポイントを絞っていくことになる。だからあらかじめその形にされた脚本を読んだ方がいいこともある。深く掘り下げず、現場の空気感から演じるスタイルもあっていいと思う。でも僕の場合は親父(三國連太郎)が役者だったので、長くいいポジションで役者を続けるためにはどうすればいいのか、それを見ることができた。ある1本の映画で自分が何をやりたいのか。明確なビジョンを自分の中で持つことによって、次の一歩につながっていくと思うのです。だから役を掘り下げるのは僕にとって当たり前のことですね。そのやり方じゃないと不安ですね。ただ書かれた通りに演じると、しょせん僕という肉体を通して表現されることだから、あきられてしまうのではないかと。だからこそ演じ手として自分が何をやりたいのか、創意工夫しているわけです。映画は自分の生業だと思っていますしね。

Q:漁師という役を演じるに当たり、苦労した部分はありますか?

今回の役は漁師ですよね。漁師は、魚をとる、網をなおすとかやることはいっぱいあるけど、作業としてはとても明快。そうすると台本に書かれていなくとも、その作業について仕入れておくと、ただそこに自分(邦一)がいるというシーンにもいかすことができるんだよね。たとえば薫と邦一の母親が、するめをのしているシーン。バックにいる僕の動きは?台本には書かれていない。でもそれなら網を補修していよう、と。あくまでも僕は背景に過ぎないけど、そこで漁師にとって日常的なことをしていれば、手前にいる2人がキッチリ見えてくる。あるリアルさが生まれる。たくさんやることがあって、それが明確である漁師という役はある意味“楽”と言えましたね。

Q:印象に残っているシーンはありますか?

僕が出ていないシーンで、とてもショックなところがありました。成長した自分の娘が邦一を訪ねてくるシーンがあるのですが、もう邦一が住んでいない赤木家の壁には“邦一死ね”とか落書きたくさんされていて・・・・・・。“邦一ってリーダーとして慕われていたんだよね!?”って。“みんなから信頼を勝ち得ていた漁師頭だったはずなのに”ってショックでした(笑)。

Q:方言のセリフはどうでしたか?

方言ってつかむか、つかまないか、なんですよね。漁師言葉って、普通の言葉より荒い部分があるよね。でも、だからって、キツクはしたくないと。僕はここで“だべ”でいいかな、と思っても監督からダメって言われたこともありましたね。ヒーロー、ヒロインだからここでは“だべ”なしで、と(笑)。僕はリアリズムという支えが欲しいから、忠実に方言でやりたかったわけですよ。だかから監督と“これだけは北海道弁で言わせて欲しい”みたいな感じの攻防はありましたね(笑)。

Q:かなり板についていましたよね、映画の中で。

北海道弁はつかめましたね。でも関西弁は・・・・・・。なまじテレビとかから入ってきちゃうので、いろいろなのが、混ざっちゃうんですね。エセ関西弁になっちゃう。『新・仁義なき戦い』では関西弁を使っているけど、その時は関西の子についてもらったね。毎回、言葉が大丈夫かチェックしましたね。でも言葉のリアルさも大切だけど、そこばかりに目がいってしまうのも困るね(笑)。

Q:それでは最後に映画を楽しみにしている皆さんへメッセージをお願いします。

伊東美咲の裸身を楽しみにしている皆さんも多いと思いますが、佐藤浩市も仲村トオルも脱いでいますので、よろしくお願いします(笑)。

『海猫』は11月13日、全国東映系にて公開。

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