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『サヨナラCOLOR』竹中直人監督単独インタビュー

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『サヨナラCOLOR』竹中直人監督単独インタビュー

取材・文・写真:FLiXムービーサイト

初監督映画『無能の人』がヴェネチア国際映画祭において高い評価を得て以来、俳優のみならず、監督としての活動も注目を浴びる竹中直人監督の最新作『サヨナラCOLOR』が公開される。主演・脚本・監督を務め、映画界にとどまらず、さまざまな方面で人々を魅了し続けている竹中直人に、映画にかけた情熱を語ってもらった。

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まず主題歌

Q:『サヨナラCOLOR』という映画を作られたきっかけはなんですか?

共通の友人を通して友達になったSUPER BUTTER DOGの永積タカシくんが僕の家に遊びにきてくれて、うちにあったギターを弾きながら「サヨナラCOLOR」を歌ってくれたんです。その時、タカシくんの歌が心に染みて……。それで、「この歌をテーマに映画を撮りたい」と思ったのがきっかけでした。

Q:主題歌が先に決まっていて、それから映画が作られていく、というのはとても珍しいと思うのですが

大学生のころ映像演出研究会に所属していたんです。そのとき、自分が大好きだった、フォークデュオ「古井戸」の歌を題材に監督、脚本で『ポスターカラー』という8ミリフィルムで映画を撮ったことがあるんですね。だから、僕にとっては、とても自然な成り行きでした。

カメラが大きくなっただけ

Q:大学で自主映画を撮っていたときの感覚は、本格的に監督をされるようになってからと、変わりましたか?

実際に監督をして気づいたんですけど、あんまり変わらなかったですね(笑)。ただカメラが大きくなっただけなんですよ。僕はほんとうに、映画が大好きで。映画を作ることもすごく大好きで。その気持ちだけで動いているだけなので……。でも、8ミリが35ミリカメラに変わったことは脅威でした(笑)。

Q:主演、監督という二足のわらじを履くのは大変でしたか?

いいえ、とても楽しい作業ですよ。われわれの仕事に大変だということはありませんね。好きな仕事をしているときは大変なことも楽しい作業なんです(笑)。たとえば役者をしているときは、現場に入って、演技をして、監督からOKをもらったらそれで終わりで帰るだけ。でも、監督の場合は朝から晩まで自分が大好きな「現場」という場所にずっといることが出来る。俳優として関わりながら、ひとつの作品とそんな風に密に付き合えて、僕にとってこれ以上の幸せはありませんでした。

若い子にはドキドキする

Q:撮影にはたくさんの方が参加していますが、撮影が終わると編集という孤独な作業が待っていますね。

編集は決して孤独な作業じゃないですよ。僕はいつも編集をする場所が決まっていて、そこの雰囲気がとても好きなんです。すごく落ち着くというか。撮影をした場面を見ながら楽しい思い出がよみがえってきて。独りで思い出に浸りながらズバズバそれを残酷に切って編集をして……それがまたたまらないんです(笑)。

Q:この映画は、中年男のせつない恋心を描いた作品ですが、竹中さんは今でもドキドキすることがありますか?

うーん。ありますよ、やっぱり。たとえば……海岸で大胆な……水着を着ている若い子とか見ると……ドキドキしますよね。すごく。

リアルな同窓会に……

Q:舞台は鎌倉でしたが、竹中監督も横浜出身ということで青春時代の思い出と重なった部分はありましたか?

はい、かなり重なっていますね。実は、作中に出てくる高校も僕が卒業した高校で撮影させてもらったんです。すっかり変わっていましたが当時の校舎が残っていて、それはなつかしかった。それから同窓会の場面は僕の高校時代の同級生が出演してくれたんです。

Q:それはすごいですね。撮影も盛り上がったんじゃないですか?

めちゃくちゃ盛り上がりました。みんなに原田知世さんが来るぞっ! 忌野清志郎さんが来るぞって言ったら集まってくれて(笑)。もうほんとうの同窓会状態でした。そこに原田さんも清志朗さんもいて、でもなんかすぐ溶け込んじゃって(笑)。いい雰囲気で撮影が進みました。同窓生はみんな朝からベロベロに酔っ払っていましたが(笑)。

昔のラブレターに「無能の人」が何度も……

Q:主人公がラブレターを書くシーンがありましたが、あれも竹中さん本人の思い出が元になっているのですか?

はい。当時はよく書きましたね、ラブレター。驚くことに、ラブレターを渡した相手の娘が同窓会の撮影のときに持って来てくれたんです。高校時代に渡したラブレターを。恥ずかしかったんだけどそんなものをとっておいてくれたことに驚きましたね(笑)。すごくおかしいのはそのラブレターの文面で、何度も出てくる言葉がひとつあったんです。その言葉って言うのが「無能」。やたら連発していて「僕は無能だからとか」……おかしいですよね。その言葉は、自分が初めて監督した作品『無能の人』につながっている。そのころから、無能って言葉が好きだったんだなって(笑)。

Q:今はメールで簡単に告白できるような時代ですが、竹中さんには最近の若者の恋愛がどう映っていますか?

いや、それは時代によってその時代に合わせた恋愛の形があるから、いいんじゃないですか。ただ僕たちが学生のころは、携帯電話じゃなくてダイヤルの電話だった。指でまわすやつ。今は好きな女の子に電話しようと思ったら、ピッピッピッでかかっちゃうけど、黒電話って回してそのままジーって1回戻るのを待つでしょ。1回数字回してジーッ、また回してジーッ。それで、最後にジーッて戻るの見てたら、だんだん不安になってきて、「やっぱりだめだ!」とかって電話を切ってしまうんですよね(笑)。

僕って空っぽ……

Q:主人公の佐々木は、竹中さんご自身がモデルになっていたようですが、とても意外なキャスティングでもあった段田安則さんが演じるスタイリストのモデルはいますか?

それはいないですね。スタイリストの役はどうしても段田くんにやってもらいたかった。日本の俳優のイメージって、ひとつでしかとらえられないって感じがあるので段田くんはこういう役もできるんだぜっていう感じにしたかった。衣装合わせのときに段田くんが着替えて出てきたら、もう全然……似合わなくて(笑)。で、どうしようってなってね。部分的に髪の毛を着けたらってことになり、それを着けるといきなり似合っちゃってね(笑)。ほんとうに期待通りでした。

Q:いろいろなことに挑戦している竹中監督ですが、自分自身のスイッチの切り替えはどのようにしているんですか。

スイッチっていうのは特にありませんね。というより、僕はほんとうに自分がないんで(笑)。だから、逆に役をやっている時の方が生きている"間"がもつというか、自分の場所を見つけたような感じがして、ほっとしますね。

Q:竹中直人監督として、次に挑戦したいことはなんですか。

次回は岩井志麻子さんの『チャコイ』を撮りたいと思っています。かなりセックスシーンが多いのですが、ぜひ撮ってみたいんです。


「映画作りは本当に楽しい」と語ったとき、竹中監督はまるで恋人のことを話しているような笑顔をみせてくれた。主人公佐々木の初恋の女性に抱きつづけた純粋な愛情が、竹中監督の映画への愛情にリンクした瞬間だった。

『サヨナラCOLOR』は8月13日よりユーロスペースにて公開。

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