Q:さっそくですが、監督とアニキの出会いはいつだったんでしょうか?
1989年くらいかな。たくさんいた役者さんの中で1人、すごくとんがってる人がいた。僕もとんがっていたから、話せばけんかになるような男。すごくやせてて、目だけはギラギラして。「今に見てろよ」っていう気迫がすごく伝わってくる役者だった。飼われた犬じゃない、野性の犬みたいだったな。
Q:寺島進は、どんな役者ですか?
役者って、会って緊張する人と、緊張しない人がいる。たとえ売れてなくても、会うと緊張する役者もいる。寺島さんは、映画の芝居がボクシングの試合みたい。ぼくが監督で、彼がリング上でジャブを出したり、フックを出したり……。ひとつひとつが真剣勝負だから、撮るこちら側もすごく緊張する。そういう緊張感を持ってる役者ですね。
Q:ボクサーですか!?
そうそう。寺島さんって特徴があるんです。いろんな役者がいるわけで、現場で本番まで役を作らないひともいる。それから女優さんで多いのは、現場でバカ話していても「ハイ本番」で、ポンッと役に入り込むひと。でも寺島さんは、ボクサーと一緒で作りこんでくるんです。こっちの演出側は、どこで芝居させるかが勝負になってくる。だから長い時間をかけて“役柄”を作りこみ、試合をする。まさにボクサーみたいな役者です。 |
Q:そんなボクサー俳優・寺島進が演じた高杉晋作はいかがでしたか?
すごくいいんです。なんともいえない緊張感があって……。とくに大使館を焼き討ちするシーンでは、高い緊張感が必要だった。彼の出してくれた緊張感は、あのシーンになくてはならなかったですね。
Q:監督から見て、寺島進という役者の魅力ってなんだと思いますか?
人のことを想うところかな。筋の通ってないことは、絶対にイヤだ。でも、子どもみたいなところもある。フランクというかな、“江戸の人”って感じることがよくあるね。良く自分を知っていて、いろんなものを吸収しようとする姿はすごい。そういうところは柔軟性があってフレキシブル。それがあの人の懐の深さなんだろうな。本当は、気づかいができて、すごく繊細なひと。それが彼の芝居に出てるんじゃないのかな。 |
Q:今回の作品で、印象に残っていることはありますか?
彼が鉄砲を撃つシーンで、何回もやってるのにうまく鉄砲が「バーン」ってならなくて、イライラさせてしまったことかな。寒すぎて、火薬がしめっちゃって。何度も芝居をするのに、うまく出なくて……、でも寺島さん自身が裏方の大変さも知ってる分、絶対スタッフを責めないんだよね。
Q:この20年間を振り返って、印象に残っているアニキとの思い出はありますか?
寺島さんと初めての仕事『ナンミン・ロード』(1992年)かな。あの当時はみんなが「いいものを作ろう!」って一生懸命だったから、現場でもケンカしたり、いろいろあったけど、すごく楽しかった。あのときも寺島さん、拳銃がうまく撃てなくて苦労してたな(笑)。僕の映画では、“発砲できない”ってジンクスがあったりするのかもね(笑)。
Q:20年間の付き合いのなかで、寺島さんの印象は変わりましたか?
僕の印象では、“ずーっとジャージ”っていうイメージ(笑)。若い頃からずっと。最近は高級なジャージになったのかな(笑)。すごい色んな色のジャージ持ってて、そのイメージはずっと変わらないよね(笑)。 |
Q:『長州ファイブ』公開に向けて、現代の若者たちへ……
いろいろなことを考えるのは、動いてからでいいってこと。自分でバイトで貯めたお金100万で世界旅行にでも行けば、やりたいことが見つかると思うんだよね。動いてめちゃくちゃ傷ついたほうが、次、また動けるはず。“長州ファイブ”も、まったく情報もないなかで、とつぜん敵国のイギリスに行ったんだから、相当の勇気が必要だったはずなんだよね。そういう彼らの“行動力”。考えたり、情報を集める前に“まず動く”大切さが伝わってほしいですね。 |