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『風の外側』奥田瑛二監督 単独インタビュー

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『風の外側』奥田瑛二監督 単独インタビュー

2013年か2014年ごろにアカデミー賞かな……それを目標としています

取材・文:平野敦子 写真:秋山泰彦

前作『長い散歩』が2006年モントリオール国際映画祭で、グランプリを含め3冠を受賞。1作ごとに進化する奥田瑛二監督が、山口県下関を舞台に撮った最新作『風の外側』。当初は短編映画の予定だった本作を長編作品として撮るための資金調達の苦労話や、主役降板の危機、次女の安藤サクラを主役に迎えて家族みんなで映画を作り上げていくことの楽しさなどについて語ってくれた。

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『風の外側』誕生秘話

奥田瑛二監督

Q:下関を舞台に、映画を撮ることになったきっかけについて聞かせてください。

1年ぐらい前に“エンジン01文化戦略会議”(※エンジン01文化戦略会議とは、さまざまな分野の表現者が、日本文化の広がりを目的に集まったボランティア集団)で、幹事長の作曲家・三枝成彰さんから「下関で映画を撮らないか」という提案があって、僕は「いいですよ」と言ったんです。それで「予算はいくらで撮ったらいいの?」と聞いたら○○万円だと言うので、「それならば10分か15分ぐらいの映画かなぁ」と答えました。朝よくよく考えてみると、僕ももうすでに3本も長編映画を撮っていましたから、「今さらショートフィルムかよ!」みたいな意地があって、「劇場映画にしたいんだ」と言ったんです。そしたら、「え、劇場映画!? いくらかかる?」と聞かれて「2週間ぐらいで撮ったにしても、最低でも5000万円か6000万円ぐらい掛かるよね」「どうすんだ、その金!?」って感じになったんです(笑)。

Q:結局その資金はどうされたのでしょうか?

もう僕の“映画魂”に火がついちゃったんで、うちは制作会社ですから独自で資金も集めて撮りますって言って、下関の行政や財界の方の協力も得て撮ったんです。期間も23日でやりました。結局どんな予算組であろうがスタートしてしまうと、いい加減に撮るなんてできないんですよ。「徹夜をしてまでもちゃんと撮りたい!」と思って。だから、最後の3日間は、ほぼ徹夜でしたね。自分もちょっと座った途端にウトウトするんですよ。それで「監督お願いします!」と言われて、「あれ、ここはどこ? あぁ……えっと、それで何撮るんだっけ!?」と(笑)。プロデューサーに「もう少し楽にやればいいのに、結局今まで通り凝って粘って撮っているね」って言われましたね。

Q:前作『長い散歩』が2006年にモントリオール国際映画祭でグランプリを含む3冠に輝き、高い評価を得ていますが、今回の作品を撮るにあたってプレッシャーはあったのでしょうか?

プレッシャーをなくすためにこの作品を撮ったんです。準備段階ではまだモントリオールに行く前ですし、『長い散歩』はかなり自分の中でも達成感があったんです。多分、世の中の人は、次回作はきっちり用意して、ビッグバジェットで……という作品を手ぐすね引いて期待するんじゃないかと思ったんです。それを逆に覆すというかな。本来僕は“傑作”を目指すんだけれど、もともと次に大きな作品が予定されているので、今回は“佳作”を目指すというか、ちょっと力を抜いて映画を撮りたくて。それと青春映画というのを“じじい”になる前に、まだ青春の息吹がこの辺にまとわりついている間に、どうしても1本撮りたかったんです(笑)。

家族で映画を作ることは“珠玉の幸福”

奥田瑛二監督

Q:主役に監督の次女の安藤サクラさんを起用された理由は?

彼女は代役だったんです。主役の子が撮影の4日前に都合が悪くなって役を降りてしまい、プロデューサーが「彼女しかいないんじゃないですか?」と言うんだけれど、「あれはおれの娘だよ!」みたいな話で(笑)。自分の映画で娘を主役に抜てきしたなんて世間が何て思うか……って気持ちが僕の中にはありました。それでも4日後にはクランクインしなきゃならないし、映画を辞めるか撮るかの選択を迫られて、でもまぁ、最終的には僕も映画の神様が彼女にチャンスを与えたんだと思ったんです。

Q:今回奥田監督のご家族全員が映画に参加されたわけですが、どんな感想をお持ちですか?

家族とは1作目の『少女~an adolescent』のときからいつもずっと一緒だったんですよ。そのときは長女(安藤桃子)が美術見習いについて、次女が炊き出し班で、かみさん(安藤和津)が差し入れ班でね。それが次の『るにん』のときに長女はメーキング班で、『長い散歩』では長女も大学を出て「映画を撮りたい」と言うので「じゃぁ助監督をやれ」と言って助監督をやって、かみさんがスーパーバイザーで、次女もちょい役で出ていて。それで今回は長女が助監督で、さらにかみさんがスーパーバイザーと学院長の役で出演もしていて、しかも次女が主役でしょう。僕が「よーい、スタート!」って声を掛けると、かみさんが学院長を演じていて、その向かいにはセーラー服を着た次女がいて、その2人の前でカチンコを打っているのが長女なわけですよ。家族がそこにみんないて、それはもう究極のコアな現場ですよね(笑)。そういうのを見ていると、“珠玉の幸福感”がありますね。

沢尻エリカを使ってみたい

奥田瑛二監督

Q:今後起用してみたい女優さんはいますか?

昨日テレビに沢尻エリカが出ているのを見ていて冗談で「この女優いいかもしれないなぁ。生意気だと言われているけれど面白いかもしれないよ」って言ったら、かみさんが「あなたこういう子好きなの?」って言うから、「何か生意気なのって使ってみたいじゃない。それでしごくともっといい女優になるかもしれないぞ」って言ったわけ。最近はちょっと生意気だとああやってたたかれるけれど、昔だったら女優なんて一癖も二癖もあって、あんなもんじゃなかったよね。桃井かおりさんだって、秋吉久美子さんだって、原田美枝子さんだってみんなそうじゃなかったのって言ったわけ。違う見方をすれば個性豊かということになるし、みんないい子になっちゃうのはつまらないよ。

Q:ご自分の作品が、海外で高い評価を受けていることについてどう思われますか?

やはり海外に映画を出して賞をいただくということは大きなことだから、それは1つの戦い方の方法論としてありました。これからの目標はヴェネチア国際映画祭であったり、カンヌ国際映画祭であったりすると思うんですが、いつの日かそれらの映画祭に作品を出品したいです。2011年にすごい映画を撮るから、2012年ごろにカンヌ国際映画祭のパルム・ドールを受賞して、その計算でいくと2013年か2014年ぐらいはアカデミー賞監督賞受賞かな。それを目標としています。


自身が俳優でもある奥田監督は、映画への情熱を熱く語り、さまざまな声色を使って話を盛り上げてくれた。家族の話になると途端にほおがゆるみ、ぽんぽん冗談も飛び出してくる。その人間としての器の大きさ、そしてカメラの前で「最近ルックスに自信ないから……」とは言うものの、そのダンディな色気に誰もがノックアウトされるだろう。自分の実力と魅力を十分に分かり切った上で海外を目指し、アカデミー賞監督賞を獲りに行くという心意気には感服するばかりだ。

『風の外側』は12月22日より新宿K's cinema、大阪・第七藝術劇場ほかにて全国公開

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