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『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』菊地凛子 単独インタビュー

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『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』菊地凛子 単独インタビュー

強いきずなで結ばれ、まっすぐ向き合える相手と出会いたい

取材・文:シネマトゥデイ 写真:田中紀子

映画『バベル』で話題を呼び、アカデミー賞助演女優賞にノミネートされ世界中から注目を浴びた菊地凛子。その菊地が、押井守監督の最新作映画『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』でアニメの声優に挑戦した。菊地が演じるのは、戦争がショーのように行われている世界で、戦争でしか死ぬことができない永遠の子ども“キルドレ”。声だけで感情を表現することへの挑戦、そしてこれからの自分について語ってもらった。

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役作りに関しては感覚的なタイプ

菊地凛子

Q:主人公の草薙水素(クサナギ・スイト)の声を演じられた感想を教えてください。

わたしが演じたキルドレは大人にならない子どもたちで、精神年齢が35歳くらいだと聞いて、それだけでもうどういう風にやっていったらいいのか分からなかったんです。彼女のルックスや振る舞いやしぐさなどはもうイメージできていましたので、自分の道具をどう使っていくかという点ではすごく大きな挑戦でしたし、難しかったです。

Q:役柄はどのように作り込んでいったのですか?

わたしはとても感覚的なタイプなので、役作りに関しては、あまり考えないようにして演じました。こういう人だからこうだというよりは、彼女の責任ある立場の中で垣間見える女性的な部分であるとか、繰り返される人生の中、彼女が恐れずに立ち向かっていこうとしている姿勢に重点を置きましたね。後はもう、押井さんが絶対大丈夫だからと言ってくださったので、とても安心することができました。押井さんが見ていてくれている限りは大丈夫なんじゃないかっていうのはありましたね。

Q:押井監督からのアドバイスはありましたか?

たくさんありました。あまりにも多くてちょっと覚えていないんですけど(笑)、実写を撮っているような演出の仕方でしたし、ちょっと精神論的なところがあったんです。そういう意味ではテクニックとか頭を使ってというよりも、感情に訴えるような演出をされる方でしたので、すごくやりやすかったです。

虚構の世界に見えるが実はリアルな作品

菊地凛子

Q:脚本を最初に読んだときの印象を聞かせてください。

すごくいろいろな要素が入っていると思いました。現代社会の担う役割というのがちゃんと配置されていて、一瞬虚構の世界に感じるのですが、とてもリアルなことを訴えていると思います。水素というキャラクターに共感を覚えたというか、こういう生き方ができたらいいと思えるような人物でした。役を好きになっていくというのはなかなか大変な作業なのですが、彼女の場合は好きだと思えましたね。

Q:菊地さんの役作りは、役柄を好きになっていくところから始まるのでしょうか?

好きになるというか、自分に近づけていく作業の中で、なぜ彼女はこういう生き方をしているのかといったところの共感であるとか、リンクする部分であるとか、そういうことをすごく大事にしています。そういう意味では水素の生き方はすごくいいと思いました。

Q:いつもはクールな水素が、感情を爆発させるシーンはとても印象的でした。

あのシーンは、すごく大変でした。何回もやりました。やはり、そこで発生している感情を声のニュアンスだけで表現するというのはすごくデリケートな作業というか、ものすごく細かい作業だと思うんです。実写ならば、ほかの部分でカバーできるんですが、そういうことができず声だけが明確になっていくので大変でした。

人と深くかかわり合うのは勇気がいる

菊地凛子

Q:事務所の先輩にもあたる、加瀬亮との共演はいかがでしたか?

加瀬さんとはずっと共演したいと思っていました。すごく身近な存在ですが、変に違和感があったということもなかったです。一緒に一つの映画を作るという感覚が自然とわたしと加瀬さんの中に流れているので、そういう意味ではやりやすかったというか、一緒にやっていて楽しかったですね。

Q:水素の優一に対する強い愛には共感できましたか?

うーん。確かに相手と強いきずなで結ばれたいという気持ちはあるけど、水素ほど深く相手とかかわっていけないですよね。やっぱり傷つくのは恐いですし、こちらが扉を開いていったところで、結局どうなんだというところもありますしね。だから彼女みたいに、あまりにも深くかかわっていこうとするのはものすごく勇気がいると思います。でも彼女のようにまっすぐ向き合っていきたいし、そういう相手と出会いたいと思います。

Q:この映画は、生きている実感がないという現代の若者特有の感覚が描かれています。菊地さんにも、そんな感覚にとらわれてしまった時期ってありましたか?

そういうのはありましたね。毎回映画の現場に行って持ち直しています。撮影中は大変だし、やめたいと思うこともあるんですが、終わったときに感じる高揚感をまた得たいというところから、次の作品へつながっている気がします。そんなところは、空で戦っているときにしか生きている実感ができない、キルドレの感情に似ているかもしれませんね。

Q:今後はどういうスタンスで役者業を続けていきたいと思っていますか?

続けられたらいいという感じですね。毎回この役をやっていけるかという不安とかそういうことっていっぱいありますけど、次の作品がまた解消してくれると思うので、本当に、一つ一つやれたらいいと思いますし、あれもヤダこれもヤダというよりは、どんな役でもきちんと演じていきたいですね。


菊地凛子

20代でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされ、世界中の注目を浴びた菊地は、「いい経験をさせていただいたと思っています」と至って冷静だ。一つ一つの現場をきちんとこなす。どんなに周りからもてはやされても、彼女が女優としてブレることなく活動を続けているのは、与えられた役柄をきちんと演じることだけに集中しているからなのだろう。地に足をつけた演技で多くの名監督をうならせた彼女は、自らに課せられた任務を淡々とこなす草薙水素の生き方にリンクしているように見えた。

映画『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』は全国公開中

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