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第14回 これでいいの!? ハリウッド在りものラッシュを斬る!

LA発! ハリウッド・コンフィデンシャル

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こんなにあるの!? “在りものラッシュ”の現状

ハリウッドの脳みそが怠け者になってきているのか、それとも世代が一回りして昔のネタを使っても若い世代にとってはフレッシュなはず……!? というスタジオお偉いさんたちの思惑からか、最近の大型劇場用映画のリメイク作品の多さ、そして人気コミックやベストセラー本といった既成キャラクターやストーリーの映画化作品の多さには圧倒されるものがあります。

今年4月以降日本公開作品のみで、元ネタがあるものを使用した作品が、ザッと見てみただけでもこんなにあるんです!

『G.I.ジョー』(玩具キャラ、テレビアニメの映画化)
『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』(コミックヒーロー、ストーリーの映画化)
『ウォッチメン』(コミックヒーロー、ストーリーの映画化)
『天使と悪魔』(ベストセラー映画化)
『バンコック・デンジャラス』(タイ映画のリメイク)
『消されたヘッドライン』(BBCテレビ同名ミニシリーズの映画化)
『13日の金曜日』(人気映画リメイク)
『マックス・ペイン』(ビデオゲーム・キャラ、ストーリーの映画化)
『トワイライト~初恋~』(ベストセラー映画化)

在りもの映画が、最初から最後まで原作をまんまコピーしたように作られているというわけではありませんが、オリジナル作品と比べると、目新しさはありません。

映画『スター・ウォーズ』シリーズや映画『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズなどのように、昔からある神話や宗教、そして逸話を背景にして作られた名作もありますが、現在ハリウッドで横行している在りものラッシュは、骨組みからキャラクターまでを既存のものに頼っているため、独自性からはほぼ完ぺきに逸脱しているわけです。
 もちろん、昔からハリウッドは映画『スーパーマン』シリーズや映画『007』シリーズなど、既存のヒーローを映画化することは日常茶飯事でした。でも、現在のように一年にこれほどまでに在りもの作品が公開、製作されることは過去の映画の歴史を振り返ってみても前代未聞のことなのです。

不安定な経済……安全パイを狙う映画の投資家たち

皆さんご存知のように去年から世界中の景気が悪化の一途をたどり、まさかと思うような大企業までもが破産に陥ったりして、大手企業といえども安泰ではない情勢が続いています。

映画ファンのわたしたちが忘れてしまいがちなのは、派手なアクションやすてきな俳優たちの活躍が見られる映画も、しょせんはビジネスという名のもとに成り立っている商品だという事実です。こう言ってしまうとロマンも何もないように感じてしまうのですが、実際のところ映画ビジネスたるや最もし烈でハイリスクの投資ビジネスの一つであると言っても過言ではありません。

絶対つぶれないといわれていたアメリカ大手金融機関リーマン・ブラザーズやファニーメイ・フレディ・マックが崩壊の一途をたどりだしたころから、映画製作に不可欠な投資家たちが徐々に財布のひもを締め始めたのです。

往々にして、ヘッジファンドと呼ばれる代替投資を利用して資金繰りをしてきたインディーズ映画などは、締められた財布のひもに引っかかった最初の犠牲者といえます。ここ1年ほどで資金繰りが困難になり製作がストップしてしまったインディーズ映画の数は無数だと言われています。インディーズ作品は、大胆で非常にユニークなものが多いため、当たれば大きいものの外す可能性も十分にある未知数の投資マテリアルです。景気がいいときは多少の損に対して余裕があった投資家たちも、景気後退に伴いリスクの高いインディーズ映画への投資を見合わせる人が増えたのです。

インディーズは、一昔前にセンセーションを巻き起こした映画『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』のように突拍子もない売れ行きを示して一獲千金をものにする可能性もありますが、その可能性は宝くじの1等を当てるくらいまれなこと。手堅い投資家であれば、一獲千金ではないにしても損はしない着実な報酬を得られる投資を選択するのは、当然のことだといえます。

ただこれに伴い困ったことが生じ始めました。インディーズ映画界を襲った“出し渋り症候群”が、経済の悪化に従い、大手の映画界にも広がり始めたのです。国家予算並みの大金が動く大型映画の製作は、大手スタジオを一気に傾かせる恐ろしいほど巨大なパワーを秘めています。投資をして見返りを期待しないビジネスマンはいません。出したら返ってくる! という可能性を高める上で以前に成功例のある商品に投資することは、安全策として大金をギャンブルする投資家たちにとって当然の選択なのです。でも、果たしてこれが映画ファンのニーズにもつながるのかというと疑問点が生じてきます。

止まらない“在りものラッシュ”!!

うれし懐かしいタイトルの数々……! と懐古趣味で満足できればいいのですが、やはり映画ファンとしては、「わぁっ!」と言えるようなオリジナル大作を観たいと思うのが常。そこで最近契約がまとまって、映画製作開始にGOサインが出され、業界内で話題になった大型作品にはどんなものがあるのかを、ザッとリストアップしてみました。

『Aチーム』(原題)
オリジナルは1983年のテレビドラマ。2010年公開予定。大佐はリーアム・ニーソンが演じるとか……。8月初旬の時点でミスターT役は、まだ確定してないらしい(誰になるんだろう……(*^^))。

『コナン』(原題)
オリジナルは、1982年にシュワちゃんことアーノルド・シュワルツェネッガー人気作品『コナン・ザ・グレート』。リメイク版の監督は、マーカス・ニスペルで、2011年に公開予定。コナン役は、まだ未定。

『トロン・レガシー』(原題)
オリジナルは1982年度の作品、元祖CG映画『トロン』。オリジナル通りジェフ・ブリッジスも出演。悪役にはマイケル・シーンの名前も。2010年公開予定。

『カンフー・キッド』(原題)
オリジナルは、1984年度の映画『ベストキッド』。これでラルフ・マッチオの人気が沸騰! 新作では、空手がカンフーに変わり、ミスター・ミヤギ役がジャッキー・チェン演じるミスター・ハンに。また、ラルフの演じた役はウィル・スミスの息子ジェイデン・スミス君が。オリジナル・ファンとしては少々不安?

『プレデターズ』(原題)
オリジナルは、1987年度、シュワちゃん主演でヒットした人気アクション映画。新作はニムロッド・アーントル監督がメガホンを取る予定。出演者はまだ未定。

驚きなことに、以上すべていわゆる在りもの作品! このリストはまだ続くのです……。

【製作決定作品】
『マクガイバー』 (元祖は1985年の人気テレビ番組。2011年公開予定)
『若き勇者たち』 (元祖は1984年、隠れたブラットパックの名作! 新作は2010年公開予定)
『燃えよドラゴン』 (元祖は1973年の名作。ついにリメイクの手もここまで及んでしまった……(*^^))
『アステロイド』 (オリジナルは懐かしのアタリ社のゲームに端を発する。マジ!?)
『バトルシップ』 (Hasbroのゲームを基にした映画。ゲームには筋書きなんぞないので、ソリッドな作家を物色中とか……)。

 既成のキャラクターやストーリーを使用して、映画を作ることが良くないというわけではありません。ですが、最近公開された大型作品の半分以上が在りもの作品だとなると、やはり今のアメリカ映画業界が“在りものラッシュ”であるという現状が否めなくなってきて、ハリウッド映画のマンネリ化、そして独創的鮮度の低下……という状況を懸念せずにはいられなくなるのです。

この“在りものラッシュ”、映画ファンの皆さんはどう思われますか? ご意見・ご感想をお待ちしております!
(取材・文 神津明美 / Addie・Akemi・Kohzu)

About Addie

高校留学以来ロサンゼルスに在住し、CMやハリウッド映画の製作助手を経て現在に至る。アカデミー賞のレポートや全米ボックスオフィス考など、Yahoo! Japan、シネマトゥデイなどの媒体で執筆中。全米映画協会(MPAA)公認のフォト・ジャーナリスト。

今年もバースデーが接近中のアディー。当日はワイナリーで飲みまくりパーティーして“忘年”するぞ~!(^^;)

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