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『風立ちぬ』瀧本美織&鈴木敏夫プロデューサー 単独インタビュー

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『風立ちぬ』瀧本美織&鈴木敏夫プロデューサー 単独インタビュー

宮崎駿監督からの言葉に思わず涙

取材・文:斉藤博昭 写真:高野広美

宮崎駿監督の最新作『風立ちぬ』は、ゼロ戦の設計者・堀越二郎と文学者の堀辰雄をモデルにした、飛行機作りに情熱を傾ける青年・二郎の物語だが、ヒロイン・菜穂子と二郎のラブストーリーも観る者の心を強く揺さぶる。その菜穂子役で声優に初挑戦した瀧本美織は、スタジオジブリ作品のヒロインという大任にどう向き合ったのか? そんな瀧本の挑戦を作り手側である鈴木敏夫プロデューサーはどのように見つめていたのか? 二人の対談は、鈴木プロデューサーから瀧本への“サプライズ”で始まった。

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手渡された箱に入っていたのは?

瀧本美織&鈴木敏夫プロデューサー

鈴木敏夫プロデューサー(以下、鈴木P):美織ちゃんへの感謝の気持ちを込めて、僕からプレゼントがあります。(小さな箱を差し出す)キャンペーンに一人でいっぱい行ってくれたし(笑)。

瀧本美織(以下、瀧本):え、うれしい!(箱の中に入っていたのは、三鷹の森ジブリ美術館限定で販売されている『天空の城ラピュタ』の飛行石ペンダント) ありがとうございます!

鈴木P:これを着けると……空を飛べるからね(笑)。

Q:もともと瀧本さんは、スタジオジブリ作品のファンだったのでしょうか?

鈴木P:アフレコの合間に聞いたら「そんなに観ていない」って言っていたよね?(笑)

瀧本:そんなことないですよ! 人並みに観ています(笑)。子どものとき、最初に出会ったのが『となりのトトロ』で、その後、『千と千尋の神隠し』や『ハウルの動く城』を観ました。この前、鈴木さんから全作のDVDを頂いて、残りも観ているところです。

鈴木P:ジブリの大ファンで「一度は出演したかった」という人より、美織ちゃんのようにある程度、距離を置いている人の方が、逆に声を任せるのにふさわしい場合が多いんですよ。

声を聞いた瞬間に監督が即決

瀧本美織&鈴木敏夫プロデューサー

Q:瀧本さんはオーディションにどんな思いで挑んだのですか?

瀧本:まだストーリー全体がわからない段階だったので、宮崎監督に会えるだけで幸せだと思ってオーディションに行きました。初めて会った監督は、笑顔が印象的でしたね。優しく接していただき、その優しさはアフレコ中も変わりませんでした。

鈴木P:人と作品の相性ってありますよね? そういう意味で美織ちゃんは、相性が良かったんです。声を聞いた瞬間に、宮さんは「これだ」と大喜びしていましたから。作り手である監督が「菜穂子はこういう声の持ち主なんだ」と納得したくらいです。完全に菜穂子になりきってくれましたよね?

瀧本:そういえば、自分では意識していなかったのですが、オーディションとアフレコの本番では、鈴木さんからも「声が変わった」と言われました。

Q:瀧本さんのキャスティングについては高畑勲監督からの推薦もあったそうですが、鈴木さんの第一印象は?

鈴木P:僕がよく見るチャンネルで彼女のCMが何度も流れていたんだけど、初めて会ったとき、そのCMの人だと気付かなかった。それくらい全然違う顔で現れたわけで、本質的に演技に向いている人なんだよね。セリフ覚えなんかも早いんじゃない?

瀧本:ありがとうございます。結構、記憶力には自信があります(笑)。

最初の試写では二人とも号泣!?

瀧本美織&鈴木敏夫プロデューサー

Q:菜穂子を演じるにあたって監督や鈴木プロデューサーから、どんな助言があったのでしょうか?

瀧本:鈴木さんから、参考になる映画ということで『キューポラのある街』を観るように勧めてもらいました。

鈴木P:当時の日本人と現在の日本人で何が違うかというと、会話のスピードなんです。でもそれをアドバイスしたら、最初はちょっとセリフが速すぎちゃったけどね(笑)。

瀧本:生きている時代は違うけれど、人ってそれぞれの時代に合った生き方をしている。菜穂子を演じて、そう実感できました。今もストレスや人間関係で悩みを抱えている人が多いわけですし。

鈴木P:でも美織ちゃんは、今の若い世代では特別なタイプじゃない?

瀧本:そうですか!?

鈴木P:自分の思っていることをはっきり、素直に言葉にできる人なんですよ。自分に自信があるからだよね。

瀧本:これでも言っちゃいけないことはしっかりわきまえているつもりですけど(笑)。

Q:完成した映像を初めて観たときの思いを聞かせてください。

瀧本:自分の声の演技どうこうではなく、一人の観客として完全にストーリーに入り込んじゃいました。

鈴木P:そこも美織ちゃんの才能かな。状況や場所によって自分の立ち位置がわかっている。最初の試写でずっと泣いていたよね? どうしてこんなに感動できるんだろうって思った(笑)。

瀧本:そういう鈴木さんも泣いていたじゃないですか(笑)! いや、本当に感動しちゃったんですよ。

鈴木P:あの試写には妙な姿で現れたけど……。

瀧本:次の仕事の関係でメイクも途中で、髪にピンが着いたままでした(笑)。席が(宮崎)監督の隣で、「こんな姿ですみません」と断ったら、監督に「いいじゃないですか!」と言ってもらい、そこですでに感激しちゃったんです。

時代を超えた役を演じられる資質がある

瀧本美織&鈴木敏夫プロデューサー

Q:劇中で菜穂子はある重大な決断をしますが、それについて瀧本さんはどう感じていますか?

瀧本:わたしにはできないと思いましたね。この時代、菜穂子さんのような女性が何人もいたかもしれない。そう考えると切ない気持ちになります。

鈴木P:時代という点で言えば、僕らの年代だと、10代で読んだ小説で、ものすごく好きな作品があるんです。例えば、僕も宮さんも大好きなのが「姿三四郎」。柔道を極める主人公が、鼻緒が切れた通りすがりの女性のために、自分の手拭で鼻緒を結ってあげる。そのとき、女性が「お名前は?」と聞くと、三四郎は「名乗るほどの者ではありません」と答える。

瀧本:うわっ、カッコいい!

鈴木P:そう思う? それはよかった。実は今回の『風立ちぬ』でも主人公が名前を言わずに去るシーンがあるけど、あれは「姿三四郎」へのオマージュなんだよね。これは宮さんとも話したけど、美織ちゃんは「姿三四郎」のヒロイン・乙美(おとみ)や、宮本武蔵の恋人・お通(つう)なんかを演じられるタイプじゃないかな。それくらい今回、1930年代という時代の女性を見事に演じてくれました。この年代で、ここまでできる女優は少ないと思う。

瀧本:本当に今回、女優としてというより、一人の人間としてこの作品に出会えて幸せでした。

鈴木P:では、最後に宮崎駿からのコメントを付け加えておきましょう。「美織ちゃんに出会えたことは、本当に運が良かった」と言っていました。そんなことはめったに言わないんだけどね。

瀧本:そこまで言ってもらえるなんて……。うれしすぎて涙が出てきちゃいます。


瀧本美織&鈴木敏夫プロデューサー

鈴木プロデューサーからのプレゼントに始まり、最後は宮崎駿監督からのコメントに瀧本が思わず涙ぐんでしまう瞬間まで、通常の取材ではあまり見られない光景が続いた今回のインタビュー。それだけ二人が『風立ちぬ』という作品を通して、達成感を得られたことの証明かもしれない。瀧本の素直な発言にうれしそうにツッコミを入れつつ、今後の仕事の道筋にアドバイスまで与える。プロデューサーから女優への、心からの愛が伝わる時間が流れていた。

映画『風立ちぬ』は公開中

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