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『エヴァの告白』マリオン・コティヤール 単独インタビュー

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『エヴァの告白』マリオン・コティヤール 単独インタビュー

マリオンの美しさから生まれた映画

取材・文:山口ゆかり

ポーランドの戦火を逃れ、妹と共にアメリカで生き延びようとするエヴァを主人公に、アメリカ移民の1920年代を再現した『エヴァの告白』。美しいエヴァが犯した罪と、エヴァへの報われない愛に苦しむ男を哀切に描き出している。誰かに頼らずには生きられない弱さの奥に、妹のために生き抜く強さを併せ持つエヴァを演じたマリオン・コティヤールが語った。

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100パーセントの力でキャラクターを作り上げる

マリオン・コティヤール

Q:米映画サイトTC Candlerが選ぶ2013年度「世界で最も美しい顔100人」の1位、おめでとうございます。ギョーム・カネ監督(マリオンのパートナー)にあなたを紹介されたジェームズ・グレイ監督も、あなたの美しさに心を打たれて本作を作ったというのは本当でしょうか?

それは彼(グレイ監督)に聞いてみて。わたしにはわからないもの。美しさは主観的なものよ。でも、ありがとう。良いことを言ってもらえるのは、いつでもうれしいわ。

Q:グレイ監督が、あなたのために作ったキャラクターがエヴァですね。エヴァについてどう思われますか?

とても強い女性だわ。妹と生き抜くために戦うのよ。そこから強さが出てくるのね。彼女は、自分以外の人のためにやっているの。ポーランドで看護師をしていたのも、誰かのために尽くす生き方につながっているのかもしれない。

Q:エヴァと自分を重ね合わせるようにして演じられたのですか?

重ね合わせはしなかったわ。時々、そういう役もあるわね。同じような感覚を持っていれば重ねられる。でも、今回は違う。キャラクターとわたし自身とのつながりはあてにできなかった。キャラクターになるよう努力したという感じ。キャラクターはわたしの顔と声を持ってはいるけど、その人の声を探すような感じね。それは、わたしにとってとても興味深いことでもあるの。声は大事だわ。呼吸もね。誰も同じように呼吸もしなければ、歩きもしない。皆、それぞれ違う。だから、キャラクターの話し方、歩き方、全てつくっていくの。

Q:キャラクターになるには、かなり準備が要るのですね?

どの役にも準備は必要ね。その人物を探し当てなくてはいけない。どれにも通じるやり方みたいなものはないのよ。役によって全部違う。それと監督にもよるわ。どういう仕方でやりたいのか、それぞれだから。リハーサルとリサーチが必要で、時には技術的なことが要求される。それがストレスになることもあるわ。うまくできているかわからないものに完璧を求められるから。今回は、ポーランド語を話すというのも挑戦だった。

Q:ドイツなまりのあるポーランド語にされていますね?

ポーランドは一つの国ではなかった時代が長い。周りを囲む国に取り込まれたこともあったの。だから、地方によって言葉も違うということをこの映画に出演するにあたって学んだわ。

Q:それほどの細部まで仕上げるのは大変でしょう?

キャラクターに対してわたしができる限りのことをしたいから。いつでも、監督がわたしを選んでくれたことを光栄に思う。監督が選んでくれたのと同時に、キャラクターがわたしを選んでくれたということでもあるわ。だから100パーセントの状態でやりたいの。

全ての映画はパーソナルなもの

マリオン・コティヤール

Q:グレイ監督からは、どう演じてほしいなど何か注文がありましたか?

彼がどんな人間であるかというところまで、分け合ってくれたわ。この映画は彼にとって、とてもパーソナルなものなの。彼の祖父母の体験が基になっているから。祖父母はもちろん、両親、彼自身、兄弟のことも話してくれた。

Q:それだけパーソナルな映画に参加するのは、難しい面もあったのではないですか?

全ての映画はパーソナルなものと思うわ。それは重要なことよ。エンターテインメントの映画でさえ、そう。クリストファー・ノーラン監督と働いたこともあるけど(『ダークナイト ライジング』)、彼は全面的に打ち込んでいた。誰かが監督しなくてはいけないから彼がやっている、というふうではなかった。それ以上に、彼にはそれを作る理由があったのよ。もし、それがなくて映画を作っている監督なら、わたしは一緒に仕事はできない。作らなくてはならない理由がある監督のために働くのは、ある種、プレッシャーではあるけれど。裏切るようなことはできないから。

特別な場所、特別な俳優

マリオン・コティヤール

Q:実際に、当時、移民の入国審査が行われたエリス島で撮影されたのですよね?

それは、とても特別なことだったわ。驚くべきことよ。屋内で撮影したのはジェームズ(・グレイ監督)が初めてなの。かつてフランシス・フォード・コッポラ監督がやろうとしたけれど、外での撮影は許されても、建物の中は許可が下りなかった。ジェームズにとってエリス島での撮影は非常に大切なことだったから、彼は頼み込んだのよ。アメリカ人の多くはエリス島と関係があるともいえるわ。親類縁者や知人に、そこから入国してきた人がいるはずだから。エリス島は、特殊なエネルギーを感じる場所だった。希望と夢に満ちた人々が集まった場所だから。

Q:移民の物語であると同時に、ブルーノ(売春あっせんもする劇場従業員)の悲しい愛の物語にもなっていますね。ブルーノをどう思いますか?

複雑なキャラクターね。この映画に出てくるキャラクターは皆、複雑だけど。ブルーノは、わたしが出演した映画で見ても一番複雑かもしれないわ。理解するのが簡単ではないけれど、ダークな面で格闘しつつ、明るい面も強い。

Q:ホアキン・フェニックスはそんなブルーノをとてもうまく演じていましたね。

ホアキンとわたし、あとジェームズとジェレミー(・レナー=もう一人のメインキャラクター)もだけど、いろいろなことに極度に敏感だという点で共通しているわ。すぐに感動しちゃうの。ホアキンと働けたのはラッキーだった。彼は特別な人、特別な俳優よ。もちろん素晴らしい俳優だけど、彼が特別なのはとても創意に富んでいる反面、直感的でもあることよ。ごくわずかな人にしかない直感なの。それなのに、とても低く自己評価する人で苦しんでもいるの。その直感は、あまりにも混じり気がなくて、人間というより動物みたい。同じ空気を吸えたことさえ、光栄なくらいだわ。


マリオン・コティヤール

感じやすい心を持ち、完璧を目指し、決して自分に満足しない。マリオン、ホアキン、ジェレミーがそれぞれに優れた役者である理由がわかるようだ。『エヴァの告白』を観れば、マリオンをはじめとした俳優陣から、美術、撮影といったそれぞれのスタッフが、グレイ監督を裏切らない仕事をしたとわかる。役者論ともなる話の傍ら、インタビューの場に子連れで現れたマリオンは、まだ小さな息子をひざに乗せ、美しい母の顔も見せていた。

写真:Shu Tomioka, Eliott Bliss, (C) 2013 Wild bunch S.A. and Worldview Entertainment Holdings LLC

映画『エヴァの告白』は公開中

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