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上戸彩&斎藤工
『昼顔』
求めるのではなく愛していたい
『昼顔』上戸彩&斎藤工 単独インタビュー

取材・文:天本伸一郎 写真:中村嘉昭

2014年放送の連続テレビドラマ「昼顔~平日午後3時の恋人たち~」は、既婚者同士の男女の道ならぬ恋を描き、社会現象とも言えるほどの人気を博したが、その完結編となる映画『昼顔』が、3年の時を経て公開される。ドラマ版のラストで夫と別れるも、贖罪のように一人で生きる道を選んだヒロイン紗和を演じる上戸彩、両夫婦間で契約書を交わして紗和と永遠の別れを誓い、妻のもとに戻ることを選んだ北野を演じる斎藤工が、許されぬ再会の果てに待ち受ける運命を描く劇場版に込めた思いを語り合った。

■社会現象を巻き起こした連ドラ版に驚き

Q:2014年の連ドラは大きな反響を呼んだ作品でしたね。

上戸彩(以下、上戸):驚きました。題材が題材なので、最初はどんな方が観るのか想像できないまま作っていたところもあって。今でもドラマの番組ホームページのメッセージ欄に書き込みをいただけるほど長く愛される作品になるというのは想像もしていませんでしたから、うれしいですしありがたいことですが、複雑な思いもありました。

Q:それは、想定していない広がりを見せたことへの戸惑いや作品の受け止められ方の変化のようなものですか。

上戸:そうですね。ドラマと離れた形でテーマソングが(許されぬ愛を示すものとして)象徴的に使われているのを耳にする機会も多々ありましたし、劇中と同じようなことで苦しんでいる人が増えているような現状は、寂しくもありました。

斎藤工(以下、斎藤):ドラマって、その時の世相に求められるエンターテインメントに直結していると思うので、作品のニーズと放送当時の時代が合っていたのかなと。また、昨年一昨年と台湾、中国、韓国などアジアの映画祭に行かせていただく機会があったのですが、行く先々で「昼顔」のことを聞かれ、日本以上のリアクションを感じました。

■紗和&北野が許されぬ恋に落ちる理由

Q:久々の『昼顔』の撮影現場はいかがでしたか。

上戸:撮影初日が北野先生との再会シーンでしたが、もうパッと3年前の連ドラの時の記憶が蘇って。その後もずっと北野先生と一緒の場面は目がウルウルしてしまいました。ただ、映画全体のバランスを考えると、北野先生との芝居で毎回泣いていたら、観客の方も演者側もしんどくなるので、監督に「ここはまだ泣いちゃダメですよね」と確認しながら、自分の気持ちを抑えることを意識していました。役に左右されやすいタイプではあるので、撮影中は普段から紗和スイッチが入っていた状態だったと思います。

斎藤:僕も紗和との再会シーンで、北野として何か止まっていたものが動き出したのを感じました。ドラマ版でも虫に例えて話していたことがあったように、北野という人間は人間以外の生物の思考や理論、生命体の習性みたいなところになぞらえて、自分の感情を殺してきた人ですから、紗和を忘れるために研究に没頭していたけれど、そうすればするほど反作用のように紗和のことを思い出していたんだろうと思えました。

Q:連ドラのラストで二度と会わないための厳しい契約を交わしていたにもかかわらず、大きなリスクを背負ってもなお惹かれ合ってしまう理由や魅力をどのように解釈されていましたか。

斎藤:紗和の中には北野がいるけど、(北野の妻の)乃里子の中には(北野は)いないというか……北野にとって紗和は自分自身でもあるのかなと。他人にそういうものを見出せるのは偶然じゃないことを北野は本能的にわかっているからこそ、これはいけないんだと思えば思うほど、紗和が唯一無二の存在だということをより認識するという。異性としてだけではない、それ以上のものを見出せた人だから惹かれたんだと思います。

上戸:具体的な何かの魅力というよりも存在すべてなのかなと。今回の映画で、疑心暗鬼に陥った紗和が北野への不信感のようなものを漏らしてしまう場面があるのですが、それを聞いて慰めてくれた人に、「彼と一緒にいられるなら何もかも失ってもいい」と言ってしまえる紗和の想いって、すごいなあと。愛を求めるのではなく、自分が愛していたいというか、それほど北野先生に魅力を感じているんですよね。

■劇場版ならではの官能描写

Q:劇中では、二人の重なり合う手が印象的に描かれていましたね。お二人の手の大きさの違いも効果的でした。

斎藤:僕は手のサイズでキャスティングされたんだと思います。大きくて良かった(笑)。

上戸:わたしも手が小さかったからかな(笑)。お互いの感情を指先で芝居するような感じで、そこに監督が画面としての見せ方を追求していく形で撮影しましたね。

斎藤:手が触れるというのは、濡れ場以上にとても艶やかな行為だとも思うんです。初めて手をつなぐ時って、ある意味それ以上のピークはないと思うぐらい高揚する瞬間でもあるなと。西谷(弘)監督が描く、言葉ではない手での語らいみたいなもの……それは視線でもあると思うのですが、そういう表現は井上由美子先生の脚本にも落とし込まれていました。

Q:この作品は脚本の魅力も大きく、印象的なセリフやモノローグが多くありましたが、シリーズ全体を通して印象に残っているセリフは?

斎藤:特に一つ挙げるなら、ドラマ版第8話の図書館で紗和と密会していた北野のセリフ、「昆虫は痛みを感じる必要がないぐらい命が短いから、痛覚がないと言われているんだ。悲しい時や辛い時は『人間は長い命をもらったから』と考える」。人間が痛みを感じる痛覚というのは、人間が長く生きるために与えられた特徴的な感覚で、それは長く生きることが託された生物だからだと。つまり今の二人の別れは苦しいけれど、人間ならば生きていけるというか、北野なりの紗和への激励の言葉なんです。半分は自分自身にも言っているわけですが、すごく残っています。

上戸:紗和が神様に問いかけたりするモノローグはすべて衝撃的でしたけど、一つ挙げるなら劇場版で、疑心暗鬼に陥った紗和が北野に対してぶつけてしまう「自分が裏切ったことがあると、相手を信じられない」というセリフでしょうか。わたしとしては、そういう人生は歩みたくないなと(笑)。それって、人を信じられなくなっちゃうし、すごく辛くて苦しいことですから。

■映画版のためにドラマがあった!?

Q:連ドラから続く形での映画版への出演は、お二人とも少ないですが、その公開を待つ現在の心境は?

斎藤:そもそもこの作品に限らず現場のあり方としては、テレビだからテレビ的で、映画だから映画的ということではなく、そこの垣根は実はないんだということを「昼顔」の現場で感じました。

上戸:そうですね。ドラマでもこんな映画のような世界が作れるんだと、第1話の完成品を初めて観た時に衝撃を受けました。

斎藤:この映画版から観ても充分に衝撃を与えることのできる作品だと思っていますし、この映画版のためにドラマ版があったのかなと。それがちょっと大げさだとしても、ドラマを一緒に作ってきたスタッフとキャストの間の関係値が、確実にこの映画に集約されているのは間違いない。ある種熟成した一番いい状態の「昼顔」という作品の進化形だと思っています。

上戸:ドラマからおよそ3年が経って、その間の視聴者の皆さんとの絆を感じたり、共演者やスタッフの皆さんとの絆があったからこそ、この映画版でも心を丸裸にできたというか……。芝居じゃない自分の表情に自分で驚いたぐらい、すごく衝撃的なものがこの映画に詰まっているなあと。3年かけて皆で作り上げたものが出来上がって、「昼顔」という作品が本当に完結したなと思います。

役に向き合う上での苦悩と葛藤を共有した上戸と斎藤には深い信頼関係が感じられると共に、「昼顔」がいろいろな意味でターニングポイントとなった思い入れの深い作品であることを窺わせた。テレビドラマの映画化作品は数あるが、本作は連ドラ版の要素を必要最小限に削ぎ落として煮詰め上げた濃密な作品で、完結したドラマの続きをどう描くのか、なぜ映画にしたのかといった懸念を払拭する普遍的な愛の物語になっている。

(上戸彩)ヘアメイク:中谷圭子(AVGVST international) スタイリスト:宮崎真純(リックルモア)
(斎藤工)ヘアメイク:KAZUOMI(メーキャップルーム) スタイリスト:川田力也(es*QUISSE)

映画『昼顔』は6月10日より全国公開

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