ジブリのDNAを受け継ぐ少女たち

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 『借りぐらしのアリエッティ』『思い出のマーニー』に続く米林宏昌監督の第3作『メアリと魔女の花』。この作品は米林監督が西村義明プロデューサーと新たに立ち上げた、スタジオポノックの第1作。だがそれまで長年スタジオジブリでアニメーション映画を作ってきた二人だけに、ジブリ作品から受け継いだ部分が作中に見られる。ここでは主人公のメアリにスポットを当てて、ジブリ・ヒロインから継承されたDNAを探ってみたい。(文:金澤誠)

『メアリと魔女の花』
映画『メアリと魔女の花』より- (C) 2017「メアリと魔女の花」製作委員会
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■特殊能力もあるけど……

 まず『メアリと魔女の花』のメアリのキャラクター設定だが、年齢は10歳。好奇心旺盛で天真爛漫(らんまん)な赤毛の少女で、そのくせっ毛の赤毛にはコンプレックスを感じている。大叔母シャーロットが暮らす田舎の家に引っ越してきたばかりで、大叔母の家事を手伝うのだが、不器用なため気持ちだけが空回り。そんな状況に不満を抱えている女の子だ。彼女はひょんなことから魔法による変身を遂げて一夜限りの魔女になり、魔法世界へと冒険の旅に出て行くのである。

 魔女という設定から『魔女の宅急便』との類似性を指摘する声もあるが、あの作品に登場した13歳のヒロイン・キキは、元々魔女の血を受け継いだ生粋の魔女っ娘。今回のメアリは言ってみればインスタントの魔女で、基本は人間の少女と何ら変わりはない。キキが親元から離れて、唯一使えるほうきに乗って飛ぶ魔法によって自立しようとするのに対し、いきなり魔法を手に入れたメアリには、それをどう使うかの目的はない。ただ“ほうき”というアイテムに頼る部分はキキもメアリも共通している。キキにとってほうきで飛ぶことが、魔女である自分のよりどころ。それだけに飛ぶ力を失った時には、挫折を味わうことになる。メアリの場合は自分でほうきを操ることもできず、どこへ行くのかもほうき任せ。その彼女も途中でほうきという相棒を失い、無力感を味わうことになるのだ。

『魔女の宅急便』
映画『魔女の宅急便』より- Buena Vista Home Ent. / Photofest / ゲッティ イメージズ

■現状に不満を抱いている普通の女の子

 キキよりもメアリに近いのは『千と千尋の神隠し』に出てくる10歳の千尋だろう。千尋は美少女でもなく、ひ弱な普通の女の子で、冒頭では両親の事情で片田舎へ引っ越してきたのが、どうも気に食わない様子。現状に不満を抱いているところもメアリに通じる。その後千尋は「不思議の町」に誘われて、宮崎駿監督の言葉を借りれば、「本人も気付かなかった適応力や忍耐力が湧き出し、果断な判断力や行動力を発揮する」ことになるのだが、今回のメアリは、魔法がかりそめの力であるために、それを一旦失うと、魔法世界での出来事を夢として片づけようとする。宮崎アニメのヒロインが未知なる自分の力に気付いて一途に成長していくのに対し、メアリは最後まで自分自身に特別な力がないことを知っているヒロインに描かれていて、そこに米林監督独自の人物造形がある。

『千と千尋の神隠し』
映画『千と千尋の神隠し』より- Studio Ghibli / Disney / Photofest / ゲッティ イメージズ

■他人のために頑張れる!

 ただ誰かのために行動を起こす部分は、ジブリ・ヒロインの精神性を受け継いでいる。故郷の風の谷を守るために戦場へ赴く『風の谷のナウシカ』のナウシカ、育ての親のモロを始め、生き物が暮らすシシ神の森を守るために、人間と闘い続ける『もののけ姫』のサン。彼女たちは守るもののために自分を危険にさらしていった。今回のメアリも、自分の無責任な一言によって近所に住む少年ピーターが魔法世界へさらわれたと知った時、彼とその2匹の飼い猫を救って帰ってくるために、再び魔法世界と旅立つのだ。メアリはナウシカやサンほど強い意志の持ち主ではないが、他人を思う小さな勇気で行動を起こすところは、ジブリのヒロインと似通っている。

『もののけ姫』
映画『もののけ姫』より- Miramax Films / Photofest / ゲッティ イメージズ

■無邪気で好奇心旺盛!

 さらに言えばジブリ作品には、家の庭を探検して謎の生き物トトロと出会う『となりのトトロ』のメイ、偶然出会った宗介に惹かれて禁断の人間社会へ来てしまう『崖の上のポニョ』のポニョなど、好奇心による行動によって異界とコンタクトしてしまうヒロインも登場する。メアリも立ち入り禁止になっている森に踏み込んで、7年に一度しか咲かない不思議な魔法の花“夜間飛行”を見つけたことから魔法世界への冒険が始まるわけで、無邪気な好奇心が決まりきった世界観を飛び越えるところは、ジブリのヒロインそのままだ。

『となりのトトロ』
映画『となりのトトロ』より- (c)Walt Disney Pictures Walt Disney / Photofest / ゲッティ イメージズ

■ここがジブリと違う!?

 このようにいくつかの共通項はあるが、メアリと宮崎監督のジブリ・ヒロインとの決定的な違いが一つある。それはナウシカにはクシャナ、キキにはウルスラ、サンにはエボシ、千尋にはリンと、宮崎作品には時に敵対し、ある時には助言を与える大人の女性がサブ・ヒロインとして登場する。ヒロインの少女はそのサブ・ヒロインと触れ合うことで、また一つ成長を遂げていく。しかしメアリにそういう女性は存在しない。メアリを米林監督自身と捉えるなら、本来出てくるべき大人のサブ・ヒロインは彼の師である宮崎駿だろう。その成長させてくれる存在を排して、メアリが自分だけで冒険を成し遂げようとするところに、宮崎監督とジブリから独り立ちした、米林監督の覚悟が感じられるのである。

映画『メアリと魔女の花』の予告編はコチラ ↓

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