ADVERTISEMENT

唯一無二のレッド・ソール。女性を美しく魅せる靴を追求するクリスチャン・ルブタン

映画に見る憧れのブランド

サラ・ジェシカ・パーカー
映画『セックス・アンド・ザ・シティ2』より - New Line Cinema / Photofests / ゲッティ イメージズ

 「私、高いところは怖くないの。私のヒールを見れば分かると思うけど」。SATCのキャリー・ブラッドショーが放った名言。(※1)スティレット(かかとが剣のように細く尖った靴)・ヒールを愛してやまないキャリーのコレクションのなかでも一際目を引くのがクリスチャン・ルブタン。セクシーなヒールの代名詞ともなったルブタンの創造の源を探ってみましょう。

ADVERTISEMENT

複雑な家庭環境だった子ども時代

クリスチャン・ルブタン
クリスチャン・ルブタン - Erik T. Kaiser / Patrick McMullan via Getty Images

 現在56歳のクリスチャン・ルブタンは1963年、パリで家具職人の父と専業主婦の母の下、3人姉妹の後に末っ子として生まれました。父は家にあまりいつかず、女性に囲まれて育った彼は勉強も学校も嫌いだったのだとか。

 3度も学校を退学させられた後、なんと12歳のときに家出をしてしまいますが、それ以降、母の了承を得て友人の家に住むようになったルブタン。(※2)家出の真相は不明ですが、どうやら複雑な家庭環境にあったよう。

 2012年のスコットランドの新聞「THE SCOTSMAN」とのインタビューで、家族のなかで自分だけ肌の色が濃かったことから「私の家族はフランス人だけど、フランス人と感じたことはなかった。だから自分はきっと養子なんだろう、自分はアウトサイダーで本当の家族を探さなければいけない、と思い込むようにしていた。当時はファラオにハマっていたから、きっとエジプト人なのかもと自分のヒストリーを勝手に作っていたんだ」と語っています。(※3)

 その肌の色でティーンのときは人種差別にもあったと言うルブタン。そのせいでしょうか。2013年に彼が発表したヌード・コレクションのパンプスはどんな人種のスキントーンにもぴったりと合うようにと8色ものヌードカラーで構成された画期的なコレクションでした。(※4)

ADVERTISEMENT

美術館の看板からヒール・フェチが始まった!?

ルブタンの靴
Christian Vierig / Getty Images

 ルブタンの靴に対する執着は12歳のときに、パリの美術館で”木製の床を傷つけるからヒールは禁止”という看板が立っているのを見つけた瞬間から始まりました。その看板に描かれていたスティレット・ヒールに恋をした彼には、「女性に自信を与えてエンパワーし、ルールを破る靴づくりをしてみたい」という気持ちが芽生えたのだとか。

 デンゼル・ワシントン主演のサスペンス『インサイド・マン』(2006)でジョディ・フォスターが演じた女性弁護士、ヴィンス・ヴォーン主演のラブコメ『フォー・クリスマス』(未公開)でリース・ウィザースプーンが演じた勝気な女性など、ルブタンの靴は実にさまざまなジャンルの映画で”クセのある強い”ヒロインが履いています。

サンドラ・ブロック、ライアン・レイノルズ
映画『あなたは私の婿になる』より - Walt Disney Pictures / Photofests / ゲッティ イメージズ

 『あなたは私の婿になる』(2009)は、サンドラ・ブロック演じるカナダ人編集長マーガレットが就労ビザの更新を忘れ、失業と強制送還を逃れるために部下のアンドリュー(ライアン・レイノルズ)に無理やり結婚を迫り、なんとかグリーン・カードを得ようとするうちに彼と本当に恋に落ちてしまうラブコメ。

 冷酷非情(に見える)マーガレットが、パワハラとセクハラのW攻撃で10歳以上も年下のアンドリューに結婚を迫るシーンなど、男女が逆転したような設定が新鮮! そんな彼女がニューヨークのストリートで男性のように膝をついて、改めてアンドリューにプロポーズするときに履いているのがルブタンのスティレット・ヒール。両親を早くに亡くし、自分ひとりで人生を切り開いてきた自信たっぷりな(でも部下に悪口を言われたときはこっそりと泣いたりもする)マーガレットのように、自分をもっと強く、もっとセクシーに感じたいシーンで履きたいヒールこそがルブタンなのです。

ADVERTISEMENT

ルブタンの靴の基礎を築いたピガール地区

フォリー・ベルジェール内部
ルブタンが働いていたフォリー・ベルジェール内部 - Tony Barson / WireImage / Getty Images

 美術館の看板を見て以来スティレット・ヒールの絵ばかり描くようになっていたルブタンですが、ファッション界で働こうとは夢にも思わず、彼はパリのダンスホールやパーティーに姿を現すようになっていました。(後年、ルブタンの定番である「ピガール」ラインは彼がこの時代に通っていた歓楽街ピガール地区から名付けられたそう)(※3) そして16歳の頃、パリ最古のキャバレー「フォリー・ベルジェール」でショーガールたちのインターンとして働き始めます。(※5)

ファイアのショー
伝説のステージ「ファイア」 - Pascal Le Segretain / Getty Images

 ルブタンはこの頃に培ったダンサーへの愛や靴へのこだわりを、ドキュメンタリー映画『ファイアbyルブタン』(2012)で熱く語っています。パリの老舗ナイトクラブ「クレイジー・ホース」でルブタンが演出し、デヴィッド・リンチが音楽を手掛けた伝説のステージ<ファイア>。わずか80日間だけ上演されたこの伝説のショーを映像化した本作は、躍動感あふれる映像が素晴らしく、ルブタンのヒールを履いたダンサーたちの脚線美にうっとり! 丸みを帯びたなめらかな曲線を描くルブタンのヒールのアーチは、女性の身体をなぞったものなのです。

ADVERTISEMENT

アシスタントの赤いネイルからインスピレーションを受けた!?

 キャバレーやミュージック・ホールで働いたことがきっかけで、女性の靴作りに目覚めたルブタンは、1982年から自分の店を初めて持つ1992年までシャルル・ジョルダンシャネルイヴ・サンローラン、スティレット・ヒールを初めて生み出したロジェ・ヴィヴィエの元で働き経験を積みました。(※3)

ルブタンの靴でウェディング
Wilford Harewood / Bravo / NBCU Photo Bank via Getty Images

 現在では、ウィメンズシューズから、メンズシューズ、バッグ、財布&レザー小物、ブライダル、ビューティラインまで展開しているルブタン・ブランドですが、アイコニックカラーといえば、「比類なきレッド」。(※6)これは、ルブタンのシューズの裏側についているレッド・ソールから来ているもの。

 実はこのレッド・ソールは偶然から生まれたのだそう。ある日、従業員の女性が真っ赤なマニキュアをしていたのを見たルブタンが、赤いマニキュアでシューズのソールを塗ってみたところから誕生したのだとか!(※2)

4人のミューズ

 エマ・ワトソン主演作『ブリングリング』(2013)は、カリフォルニアに住む5人の少年少女がセレブ宅で盗みを繰り返すという実際に起こった事件を映画化した作品。彼らは中流家庭出身の恵まれた高校生なのに、SNSにブランド品を投稿したいがために窃盗を犯し続けます。SNSで「いいね」をもらうために、承認欲求を加速させる世代のリアルを描いたソフィア・コッポラ監督作です。

 作中パリス・ヒルトン宅に侵入した彼らが発見するのが、彼女のルブタン・コレクション。キラキラのルブタンのシューズが所狭しと並んだ彼女のクローゼットは、なんと本物! 撮影にはパリスの豪邸が実際に使われたのだそう。(※7)平均価格が約8万5000円~33万円(※8)もするルブタンは、誰もが羨むセレブご用達ブランドへと成長しました。

アイラ・フィッシャー
映画『お買いもの中毒な私!』より - Walt Disney Pictures / Photofests / ゲッティ イメージズ

 アイラ・フィッシャー演じる若い編集者レベッカが買い物中毒のせいで借金取りに追われるドタバタを描いたラブコメ『お買いもの中毒な私!』(2009)。SATCのキャリーのようにファッション命のレベッカがしょっちゅう履いているのもルブタンです。

 モナコのカロリーヌ公女ビヨンセアンジェリーナ・ジョリーマドンナヴィクトリア・ベッカムケイト・モスブレイク・ライブリーなど早々たるセレブが顧客に名を連ねるルブタン。とりわけケイトとブレイクは彼のミューズで、二人の名を冠したライン「So Kate」や「The Blake」も創られたほど。2018年のファッションの祭典「メットガラ」では、ヴェルサーチのドレスに身を包んだブレイク・ライブリーがルブタンのヒールを履き、彼本人に直々にエスコートされて登場し、話題をさらいました。(※9)  

ブレイク・ライブリーとクリスチャン・ルブタン
Rabbani and Solimene Photography / Getty Images

 加えて、ルブタンには永遠のミューズがもう2人。彼曰く、靴の前側をデザインするときはマレーネ・ディートリッヒを、後ろ側をデザインするときはマリリン・モンローを想像するのだとか。なぜなら、「女性らしさを表しているから。マレーネは脚の組み方や脚の曲げ方をマスターしている。つまり、彼女は優雅さと姿勢を体現しているんだ。そして、女性の後ろ姿のシンボルと言えば、マリリン・モンロー以外にいないだろう?『お熱いのがお好き』で彼女が見せるヒップ、曲線、動きは、靴がイントネーションになる最高のお手本だ」と説明します。(※3)

マレーネ・ディートリッヒ、マリリン・モンロー
左 マレーネ・ディートリッヒ - Michael Ochs Archives / Getty Images 右 マリリン・モンロー - 20th Century-Fox / Getty Images

 #KuToo というハッシュタグで、女性が職場にヒールを履くことを強制されることに対し問題提起をしているSNSのムーブメントが起こっている日本。もちろん、女性だからといって窮屈な靴を強制するのは性差別に違いありませんし、決して許してはいけないでしょう。とはいえ、ヒールに足を入れるとなぜか背筋がすっと伸び、なんだか自分がいつもよりセクシーでパワフルになったように感じる女性も多いのではないでしょうか。

高ければ高いほどいい。つまり、心構えという意味でね。ハイヒールは女性をエンパワーするんだ」by クリスチャン・ルブタン(※10)

クリスチャン・ルブタン
Eleanor Bentall / Corbis via Getty Images

【参考】

※1…The kick-ass shoe quotes to live your life - Marie Claire
※2…Christian Louboutin: 25 interesting facts about the designer and his shoes! - Useless Daily
※3…Interview: Christian Louboutin, shoe designer - THE SCOTSMAN
※4…Christian Louboutin Is Expanding Its Inclusive Nude Shoe Collection - Glamour
※5…クリスチャン・ルブタンFacebook
※6…クリスチャン・ルブタン公式サイト
※7…映画『ブリングリング』撮影場所はパリス・ヒルトンの豪邸!ルブタン、シャネルなど豪華すぎる私物を公開 - FASHION PRESS
※8…クリスチャン・ルブタン、イヴ・サンローランに賠償訴訟
※9…オーラも存在感も倍増! デザイナー&ミューズ御一行様@メット・ガラ2018 - ELLE GIRL
※10…Top 10 Christian Louboutin Quotes - Brainly Quote

ADVERTISEMENT

此花わかプロフィール

此花わか

映画ライター。NYのファッション工科大学(FIT)を卒業後、シャネルや資生堂アメリカのマーケティング部勤務を経てライターに。ジェンダーやファッションから映画を読み解くのが好き。手がけた取材にジャスティン・ビーバー、ライアン・ゴズリング、ヒュー・ジャックマン、デイミアン・チャゼル監督、ギレルモ・デル・トロ監督、ガス・ヴァン・サント監督など。 (此花さくや から改名しました)

Twitter:@sakuya_kono
Instagram:@wakakonohana

  これまでの記事一覧はこちら>>>

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • ツイート
  • シェア
ADVERTISEMENT

おすすめ映画

ADVERTISEMENT

人気の記事

ADVERTISEMENT

話題の動画

ADVERTISEMENT

最新の映画短評

ADVERTISEMENT