間違いなしの神配信映画『マーキュリー13:宇宙開発を支えた女性たち』Netflix

神配信映画

今観たいドキュメンタリー6選

 配信映画は、いまやオスカーほか賞レースの常連にもなっており世界中から注目されている。この記事では数多くの配信映画から、質の良いおススメ作品を独自の視点でセレクト。今回は“社会の今”を映したドキュメンタリー6選として、全6作品、毎日1作品のレビューをお送りする。

「女性である」という理由だけで、宇宙飛行士の夢を絶たれた13人の闘い

マーキュリー13
Netflix映画『マーキュリー13:宇宙開発を支えた女性たち』独占配信中

『マーキュリー13:宇宙開発を支えた女性たち』

上映時間:79分

監督:デヴィッド・シントンヘザー・ウォルシュ

出演:ウォリー・ファンクサラ・ラトリーアイリーン・コリンズほか

 女の子だからピンクや明るい色の服。女の子はSFやホラーじゃなくてラブロマンスが好き。女性なのに○○? 生まれてからずっと、「女性だから」「女性なのに」という決めつけのもと、割り切れない思いを抱えてきた人は少なくないはず。ここ数年で、そうした意識も社会全体としてずいぶんと変わったようにも感じられる一方で、現実的には女性差別発言を筆頭に、“出る杭は打たれる”を地でいくような報道を目にするたびにため息をついてしまう。そんな時、先人たちの努力を知ることは、単に励まされるだけでなく、次の世代に対して自分は何ができるのかといった視野を広げてくれるのではないだろうか。

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マーキュリー13
Netflix映画『マーキュリー13:宇宙開発を支えた女性たち』独占配信中

 『マーキュリー13:宇宙開発を支えた女性たち』は、ソビエト連邦との激化する宇宙開発競争を背景に、1958年から1963年にかけて実施されたアメリカが計画した有人宇宙飛行士計画のマーキュリー計画の舞台裏を追ったドキュメンタリーだ。マーキュリー・セブンと呼ばれる7名の男性宇宙飛行士が英雄視された一方で、男性たちと同様に選ばれる能力のあった13人の女性飛行士たち(マーキュリー13)が、なぜ宇宙に飛び立つことができなかったのか。本作はマーキュリー13のメンバーと、その配偶者、娘、そしてNASAの宇宙医学のトップであったランドルフ・ラブレース2世博士などが、当時を振り返るインタビューや当時の記録映像などによって、その過程を明かしていく。

マーキュリー13
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 まず驚くのが、アメリカでは第二次世界大戦中に「WASP」と呼ばれる空軍支援の女性パイロット隊があり、1,000人以上の女性飛行士が活躍していたという事実だ。映画『ドリーム』(2016)でも、マーキュリー・セブンの偉業やNASAでの宇宙開発に大きく貢献した黒人女性スタッフの実話が描かれていたが、現代のわたしたちが思っている以上に、女性の領域ではないとされていた分野で活躍していたことがよくわかる。

マーキュリー13
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 WASPの飛行士たちは、空を飛ぶことが好きでたまらない女性たちだ。戦争後も自立を捨てたがらない女性が多かった。「おしろいダービー」というエアレースなども行われており、ワンピースにハイヒールを強要されていたことの是非はともかく、おしゃれも飛行も生き生きと楽しむ女性飛行士の姿は笑顔にさせてくれる。そんな元WASPの女性飛行士からの志願や、有名女性飛行士に先の博士が声をかけ、最終的に3段階のテストのうち、13名が第2テストまで合格した。その中には8人の子供を持つジェイン・B・ハートの姿もあった。

マーキュリー13
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 しかし彼女たちの夢は、NASAがテストを一方的に中止したことでついえてしまう。このてん末には、心が張り裂けそうな痛みを覚える。ここまであり得ないほどの過酷なテストを受けた13人は、確実にあらゆる面において男性よりも能力が上であることまで証明していた。そもそも当時は宇宙飛行士の条件には男性のみに許可された戦闘機パイロットの資格が必須。そこからして女性たちは闘わなければならなかった上に、ありとあらゆることが男性と同等であることを示す必要があった。

マーキュリー13
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 また男性ならこんなことは誰も聞かないだろうという質問を、世間やマスコミやNASAから次々とぶつけられてもなお彼女たちの意欲は消えなかった。だが、返ってきた言葉は「女性には向かない」「女性には生理がある」「女性は感情的」etc……。そして「なぜ女性が宇宙へ行く必要があるのか?」といった声は、男女を問わずに社会の一般的なものでもあった。映画は、こうした事実とリアルな当事者の声を伝えながら、現在に至るまで連綿と続く社会の構造的な差別を浮き彫りにする

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 このような女性たちの闘いにおいてある意味で象徴的なのが、実は女性飛行士のパイオニアであるジャクリーン・コクランの存在かもしれない。マーキュリー13の頼みの綱だったジャクリーンは、夫の後ろ盾もあり援護してくれるはずだった。だが、驚くことに彼女は「女性は結婚で辞めるから女性に大金を投じるのは無駄」として完全に敵に回ったのだ。女性を分断する女性の存在はフェミニストたちの闘いの歴史においてしばしば見られるし、現在でもそうした女性の言動は目につく。だが近視眼的にならずに、何が女性をそうした言動に駆り立てるのか、その理由に目を向けるべきだろう。往々にして社会的に成功を収めていたり、地位のある女性にも多く見られるが、女性が男性にとって都合の良い言動を取る背景には、そうすることで喜ぶ男性たちと、彼らが作り上げた社会の構造的差別の仕組みがあることも忘れてはならないのである。

マーキュリー13
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 マーキュリー・セブンが偉業を成し遂げたことは事実だ。それは映画『ライトスタッフ』(1983)やドラマシリーズ「マーキュリー・セブン」(2020)ほかエンターテインメントの題材としてもおなじみである。だが、彼らの偉業をたたえる時、本当ならスポットライトを浴びるはずだった女性飛行士たちの姿を思うと複雑な気持ちになる。それでもマーキュリー13が何度も挫折を味わいながらも前を向き、高齢となった本作の撮影時にも尽きることのない宇宙への情熱に目を輝かせて語る姿に、悔しさとともに奮い立つ勇気が心の底から湧いてくるのだ。(文・今祥枝)

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