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『マトリックス』ココがすごかった!:映像&アクション編

 いよいよ12月17日に日本公開が迫るマトリックス レザレクションズ。『マトリックス』シリーズ最新作となる本作は、過去3部作の魅力をより進化させた作品になっているに違いない。あらためてシリーズの魅力を、映像・アクションの観点から振り返り、『レザレクションズ』の襲来に備えよう。(文・平沢薫)

日本アニメの美学を実写に

サングラスに黒コート! とにかく決まっていた『マトリックス』Warner Bros. / Photofest / ゲッティ イメージズ

 『マトリックス』の魅力といえば、そのクールなビジュアルセンス。ネオやトリニティーによる超人的なアクションと、その合間を切り取った際の美しい姿。サングラスと黒のロングコートが決まっているモノトーンファッション。銃撃戦でこぼれ落ちる無数の薬きょうや、破壊されて飛び散るガレキ……。『マトリックス』といえばまず、この独特な映像美学が欠かせない。

 しかしこれらは、3部作を監督したラナ&リリー・ウォシャウスキー姉妹(当時・ラリー&アンディ・ウォシャウスキー)が、全くのゼロから生み出したものではない。彼らが愛する日本のアニメやコミックで培った美学でもあり、劇中の描写にも共通点は多い。本作に影響を与えたことで有名な、押井守の『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』(1995)における高層ビルの窓からダイブするヒロイン・素子や、『ダロス』のように大量に降り注ぐ薬きょう、そのほかにも大友克洋の『AKIRA』(1988)や川尻善昭の『獣兵衛忍風帖』(1993)など、『マトリックス』には名作アニメを想起させるシーンが登場する。

 その中でも重要なのは、アニメやコミックでは定番の"瞬間的な決めポーズ"だろう。アニメの主人公はアクションの途中の身体の形もカッコいい。コミックもそんなポーズを切り取ったコマで構成されている。この美学も『マトリックス』と共通している。

 そうした一連の美学にシビレて「この美学を実写映画で描いたらどうか」と発想したところが、監督たちの素晴らしさ。そして、このコンセプトによる映画を実現してしまったところも、彼らの功績といえる。

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東洋アクションと西洋文化の融合!

マトリックス
Warner Bros. / Photofest / ゲッティ イメージズ

 アニメーション表現の実写化をさらに後押ししたのも、監督たちが愛する香港映画のコリオグラフィー(振り付け)とワイヤーワークによるアクションだ。緻密に設計された、舞踏のような振り付けによるアクション、ワイヤーワークで空中でも継続する戦いは、格闘の途中の身体の型の美しさを見せる点でも、物理法則を超越している点でも、アニメのアクションと共通する美学を持っていた。また「マトリックスの世界はヴァーチャル空間なので、意思によって物理法則を無視できる」という設定に、アニメや香港アクション映画の物理法則から解放されたアクションはまさにぴったりだったのだ。

 このアクション美学を実現するために、『レジェンド・オブ・フィスト/怒りの鉄拳』(1994)などの武術指導で知られる香港アクション映画界のベテラン、ユエン・ウーピンを招いたのも監督たちの慧眼。『マトリックス』が、香港映画のマネではなく本物を目指したことがわかる。ウーピンは一緒に仕事をしていたスタントマンたちを連れてきて、監督たちのビジョンの実現に貢献した。

 この仕事に影響を受けたのが、『マトリックス』のスタントに参加していたチャド・スタエルスキだ。後に彼は、ウーピンのスタイルを参考にしたアクションチーム 87eleven Action Design (87イレブン・アクション・デザイン)を設立。監督として『ジョン・ウィック』を手掛けることになる。

 この香港アクションに留まらず、西洋的な最新のVFXを掛け合わせたことで、『マトリックス』ならではの魅力が生まれた。視覚効果を担当したジョン・ゲイターは『ジャッジ・ドレッド』(1995)のアシスタント特殊効果スーパーバイザー、『イレイザー』(1996)の第二特殊効果スーパーバイザーなどを経て本作に参加し、エージェントの発射した弾丸をネオがのけぞりながら避けるシーンで有名な特殊効果技法バレットタイムを生み出す。

 バレットタイムは、ほとんど静止しているように動く人物の周辺を、高速で移動するカメラが回り込むような映像のこと。実際は、被写体の周囲に多数のカメラを並べ、連続撮影した素材を基に作り出される映像で、カメラが被写体を回り込むような描写は、まさにアニメ的。ネオの弾避けだけでなく、宙に舞うトリニティーのキックや、ネオとエージェント・スミスが空中で組み合うシーンなどが、この技法で描写された。こうして、観客の度肝を抜くビジュアルは、『マトリックス』3部作を象徴するものになった。1作目の『マトリックス』における特殊効果は、1999年のアカデミー賞において視覚効果賞を受賞している。

Warner Bros. / Photofest / ゲッティ イメージズ
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1作目を支えたコミック作家が参加!

 この、アニメの美学を実現した映像は、その後、多数の映画に影響を与え続けてきた。その3部作に続く『マトリックス レザレクションズ』は、3部作を継承しながら、さらに進化を遂げているに違いない。

Warner Bros. / Photofest / ゲッティ イメージズ

 『レザレクションズ』には、気になるスタッフが2名、参加している。もともと『マトリックス』第1作の企画段階で、この作品が目指すビジョンを第三者に伝えるために、ストーリーボードを描いたコミック作家が今回も参加しているのだ。ひとりは、3部作でコンセプチュアル・デザイナーを務めたジェフ・ダロウ。もうひとりはストーリーボード・アーティストを務めたスティーヴ・スクロース。新作でも2人は同じ役を務めている。

 ダロウはフランク・ミラーの名作コミック「ハードボイルド」の画を担当、スクロースはマーベルコミックの「アメイジング・スパイダーマン」に参加したことがある人物。3部作が実現したコミック描写の映像化には、この2人のセンスが寄与した点が大きいのではないか。『レザレクションズ』の斬新な映像に期待しよう。

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