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全編モノクロ映像!ジーンとして潜伏中にソウルが顔を出す

今週のベター・コール・ソウル

ジミー
「ブレイキング・バッド」のその後のジミーを描く。「ベター・コール・ソウル」シーズン3より Netflixシリーズ「ベター・コール・ソウル」シーズン1~6独占配信中

 第9話の感極まる展開から一転、第10話「迷子犬(Nippy)」は、丸々1話を使って、モノクロームの映像で「ブレイキング・バッド」のその後のジミーが描かれる異色の回となった。(文・今祥枝)

※ご注意 この記事は「ベター・コール・ソウル」シーズン6についてのネタバレが含まれる内容となります。視聴後にお読みいただくことをおすすめします。

今週のベター・コール・ソウル~シーズン6第10話

 シーズン1~5の第1話のアバンタイトルは、「ブレイキング・バッド」の後、ネブラスカ州オマハにあるショッピングモールのシナモンロール屋シナボンの店長、ジーン・タカヴィクとして生きるジミー(ボブ・オデンカーク)の姿が描かれた「ついに始まった!「ベター・コール・ソウル」のファイナルシーズン」参照)。シーズン6第1話のアバンだけは違っていたが、キム(レイ・シーホーン)を失った顛末を知った上で味わうジーンの物語には、また違った感慨深さも

 第10話と直接関係があるのは、シーズン4&5の初回のアバン。だが、シーズン1~5の第1話のアバンは通しで見ると一つの物語を描いており、まさにシーズン5初回のアバンの続きが今回描かれているので、改めて通しで観ておくとより楽しめそうだ

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シナボンの店長ジーン
ショッピングモールのシナボンの店長ジーンとして生きるジミー。「ベター・コール・ソウル」シーズン2より Netflixシリーズ「ベター・コール・ソウル」シーズン1~6独占配信中

 表向きは掃除機修理屋で夜逃げ屋を請け負っているエド(ロバート・フォスター)の手によって別人となり、色のない世界で生きるジミーはひどくおびえて暮らしていた。シーズン5の第1話のアバンで、アルバカーキにいたというタクシー運転手ジェフ(ドン・ハーヴェイ)にモールでランチ中に話しかけられ、ジーン=ソウル・グッドマンだとバレてしまい、ジミーは再びエドに連絡する。だが、途中で考え直し、自分で何とかすると言って電話を切った。その続きが第10話で展開する。

 ジーン(ジミー)は、まずジェフ(ハーヴェイは他作品との契約の都合で出演できず、パット・ヒーリーが演じている)の母親マリオン(キャロル・バーネット)に近づき、家に入り込む。ジェフと仲間をそそのかし、ジーンが働くショッピングモールの店舗から高級スーツやスニーカー「エアジョーダン」、ケイト・スペードのバッグなど数千ドル相当の強盗計画を提案する。ちなみに彼らを説得する際に、ジーンの口から「ブレイキング・バッド」のウォルター・ホワイト(ブライアン・クランストン)の話が名前は出さずに語られる。

ジミー
色のない世界で生きるジミーはおびえて暮らしているように見えたが……。「ベター・コール・ソウル」シーズン2より Netflixシリーズ「ベター・コール・ソウル」シーズン1~6独占配信中

 この計画のために、ジーンはシーズン4第1話のアバンで店舗で倒れた際に救命士を呼んでくれたモールの警備員のもとを訪れ、お礼に食べてもらおうとシナボンを差し入れる。監視モニターをチェックする警備員フランク(演じるジム・オヘアが本当に素晴らしい!)が、大好物のシナボンを1個食べ終わる時間を時計で正確に計る。この一連の行為を、何度も繰り返すジーン。実は、シナボンを食べながら自分と雑談することでフランクの注意をモニターからそらし、その間にジェフが商品を盗む計画だった。

 この計画を実行する過程は、これまでの白黒の世界のジーンとは異なり、ソウルの軽くユーモラスなノリを思わせるタッチで描かれる。フランクやマリオンの懐に得意の話術で入り込み、信用を得て、その裏でだます。計画はアクシデントがありつつもうまく行き、ジーンはジェフらにジーン=ソウルであると口外しないこと、モールにも近づかないこと、さもないと今回の強盗で軽く30年以上は刑務所に行くことになると脅すことに成功する。

 前述した通り、在りし日のソウルの片鱗がジーンの中に浮かび上がるわけだが、思いがけずジミー(本来の彼の姿)が顔を出すくだりが、今回の山場と言えるだろう。計画実行中に、強盗を働くジェフが足を滑って転倒し、床の上に倒れ込んでしまうのをジーンはフランクの肩越しにモニターで見る。フランクはシナボンを食べ終わるところで、ジーンは慌てて大仰な身の上話をしてモニターをチェックしないよう、時間を稼ぐ。

ジミー
ジミーの孤独がにじむ。「ベター・コール・ソウル」シーズン2より Netflixシリーズ「ベター・コール・ソウル」シーズン1~6独占配信中

 嘘泣きをしながら、ジーンはフランクには家で待つ奥さんがいるが、「自分には誰もいない。両親は死んだ、兄貴は……兄貴も死んだ。それに妻もいない、子供も友達もいない、今死んでも誰も気にしない」と嘆く。「兄貴は」のところで言葉が詰まり、そこからは演技のはずが、まさにその通りであるわが身を思ったのだろうか。ふと目線を下に落としたジーンの表情に、ジミーの孤独がにじむ。ジーンとしてオマハに潜伏し続けるために今回の危険を冒したわけだが、その理由はキムに関係しているのだろうか(キムはネブラスカ州で生まれ育ったことが第6話で判明している)。

 ラストでジーンはモールでスーツを眺めながら、いかにもソウルらしい派手なシャツに派手なネクタイを合わせて、自分に当てて鏡に映す。周囲を見回しながら、まんざらでもない表情を浮かべた後、すぐに複雑な表情になりラックに戻して立ち去る。最終話まで3話を残すところで意表をついた第10話だったが、ジミーとソウル、ジーンが混然一体となったさまが感じられて興味深い回であった。

 そして次回第11話のタイトルは、avclub.comなどが報じているように「Breaking Bad」となるようだ。ついにウォルター&ジェシー(アーロン・ポール)の登場となるのだろうか? 今から心して待ちたい。

Netflixシリーズ「ベター・コール・ソウル」シーズン1~6独占配信中

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