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「ザ・グローリー ~輝かしき復讐~」成功の要因は強烈な悪役たちの魅力に尽きる!【完全ネタバレ】

本作のメインヴィラン、ヨンジン(イム・ジヨン)

 高校時代に同級生たちから壮絶ないじめを受け、一度は死を選ぼうとした孤独な女性がなんとかサバイブし、綿密な復讐計画を立て、18年後にいよいよ決行に移す。

 昨年の年末に始まったパート1と、今年3月に配信されたパート2がともにNetflixのグローバルランキングで瞬く間にナンバー1に輝き、世界中でセンセーションを巻き起こしている、韓国の新たな傑作ドラマシリーズ「ザ・グローリー ~輝かしき復讐~」。身体中に深い傷を負い、魂を破壊された冷静沈着なヒロイン、ムン・ドンウンの壮大な復讐劇を、善と悪を体現する数多くの個性が際立ったキャラクターたちを巧妙に、スムーズに交錯させながら、無駄のないスマートで印象的なダイアローグで紡いだパワフルなストーリーテリングが出色な、一瞬たりとも目が離せない知的でスリリングなリベンジドラマだ。(小林真里)

※本記事はネタバレを含みます。「ザ・グローリー 」視聴後にお読みいただくことをおすすめします。

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本作の主人公、復讐の女神ドンウン(ソン・ヘギョ)

 この作品の最大の魅力は、なんといっても悪役だろう。復讐の女神ドンウンを演じたソン・ヘギョ(「太陽の末裔 Love Under The Sun」)の感情を抑えた貫禄の演技も安定感抜群で流石だが、美しく残酷で非道ないじめっ子パク・ヨンジンを演じた2人、イム・ジヨン(大ヒット官能ロマンス『情愛中毒』のヒロイン)と、高校生パートを演じた人気若手女優シン・イェウン(「代理リベンジ」主演。リベンジする側)の鬼畜でクレイジーな極悪クイーンぶりが圧倒的に、死ぬほど素晴らしい。悪魔のようなヴィランが極悪(かつ魅力的)であればあるほど復讐のカタルシスも増幅し、クライマックスに向かうにつれてテンションが高まるので、これは誠に正しい設定。キャラクター造形も秀逸で、ヨンジンは最初から最後まで一切変わることはなく、罪悪感がないどころか罪の意識がない。生まれながらの悪人、生粋の外道なのだ。まさに Pure evil(純然たる悪)。「社会的弱者だから」という理由でドンウンをいじめた過去をあまり覚えていないどころか「あの女をいじめるんじゃなかった。殺しておくべきだった」と言い放つところからも明白だ。

唯一無二のヴィランを演じきったヨンジン役のイム・ジヨン

 シリーズ全編に登場するのは、すべてを手に入れ理想的な人生を送る大人のヨンジンだが、彼女の怪物ぶりを表情豊かに体現したイム・ジヨンの演技はひたすら圧巻である。ドンウンの18年越しのリベンジに遭い、スタイリッシュな衣服をまとったヨンジンが涙目で激怒し、悶絶し、絶叫する様、その破壊力はある種モンスター映画のようでもある。笑い方も豪快で、声質も良い。図太くふてぶてしいお天気お姉さんが、悪知恵を働かせて姑息な反撃をしつつも、終盤ドンウンの復讐に絡め取られ、すべてを失い、発狂しながら堕ちていく姿も壮絶極まりない(もはやホラーである)。彼女の一挙手一投足から目が離せない。イム・ジヨンは全身全霊で唯一無二のヴィランを生み出したといえよう。

10代のヨンジンを演じたシン・イェウン

 10代のヨンジンを演じたシン・イェウンの登場シーンは多くはないが、ドンウンの地獄の始まりとなった高校時代のハードコアないじめと暴力を披露する美しく冷酷な高校生ヨンジンの強力な悪魔のイメージを構築し強烈なインパクトを残す上で、彼女の役割は等しく重要である。これを見事にやってのけたシン・イェウンの度胸と底知れぬ才能には敬服せざるを得ない。彼女は、つい先日配信がスタートした時代劇ロマンスシリーズ「コッソンビ熱愛史」で180度異なる愛らしいヒロインを演じているが、今後の幅広い活躍に期待。世代の異なるこの2人が演じるキャラクターのトーンが見事にマッチしているのも奇跡的だ。

男性ヴィランの筆頭チョン・ジェジュン(パク・ソンフン)

 男のヴィランたちも忘れてはいけない。パク・ソンフン演じる、性根が腐りきった裕福な悪党ジェジュンもただ愚劣なだけではなく、意外と頭の回転が速く皮肉混じりの機転が効いた発言をするのが印象深い。ジェジュンのパシリ的な存在であり、突如失踪しパート1とパート2のミステリーをつなぐブリッジとなる、下劣で俗悪で悪知恵が働く蛇のように狡猾(こうかつ)な悪党ミョンオ(演じるはキム・ゴヌ)もキャラクターが立っており、この2人の個性の差別化も興味深い。

ドンウンの復讐を手伝う医師チュ・ヨジョン(イ・ドヒョン)。主人公をサポートする脇役の魅力も光る

 数々の優れた脇役たち(夫の暴力に耐えながらドンウンをアシストする軽妙なおばさん、寛容で穏やかな家主のおばあさん、ミイラみたいなルックスの文字通り化け物なドンウン母等)のキャラクター造形もカラフルで素晴らしいアンサンブルを生み出している。ドンウン同様に地獄を生きながら、彼女を献身的に支え復讐を手伝う医師チュ・ヨジョンも爽やかで飄々としており、しかしラブストーリーはあまり前面に出てこないのも良い(シリアスでヘヴィな復讐譚を緩和してしまうから)。ヨジョンの悲痛な復讐劇を絡めるのも重層的でディープだ。囲碁を軸にした三角関係(ドンウンとヨジョンとハ・ドヨン)という設定もエレガントで洒脱である。

学校のいじめが一生消えない傷痕に

 学校でのいじめは韓国で大きな社会問題となっており、「今、私たちの学校は...」や「ウィーク・ヒーロー・クラス 1(英題) / Weak Hero Class 1」、「豚の王」といった数々のテレビシリーズで題材になってきた。「ザ・グローリー 」のおぞましいいじめのシーンのディテールが細かく戦慄が走るが、韓国を代表する人気脚本家キム・ウンスク(「太陽の末裔」「トッケビ ~君がくれた愛しい日々~」)は入念なリサーチを行い、2006年に韓国清州市の女子中学校で実際に起こった凄惨ないじめ事件を基に脚本を執筆したという。核となるテーマが確かな根拠と真実に裏付けされ、見事なリアリティと説得力を生み出すことに成功している。加害者となるいじめっ子が富裕層、いじめられる被害者が貧困層というわかりやすい構図で格差社会の問題を取り入れている点も、昨今の韓国作品らしい。

 「ザ・グローリー 」は、時に血生臭くヘヴィな作品だ。いじめが被害者に与えるダメージと罪の重さをドンウンの体に刻まれた痛ましい傷や、トラウマ(自動車修理工場でサムギョプサルを焼く音がトリガーとなりヘアアイロンで体を焼かれた過去を思い出したドンウンが卒倒するシーンは衝撃的)という形で、正面から視覚的にリアルに描写している。そのいじめの代償として、ドンウンが直接手を下すことなく、悪党たちはそれぞれの地獄にたどり着く。ある者は死を迎える(そういえば殺されるのは男だけだ。ミョンオはギョンランにとどめを刺され、ジェジェンはハ・ドヨンに命を奪われる)。人生を賭けたリベンジを終えたドンウンは、死を選ぼうとする。だが突然屋上に姿を現したヨジョンの母に懇願され、ヨジョンの復讐を助け彼を地獄から救うために彼女は生きる道を選ぶ。母、強し。過去はもう振り返らず、今度は他人のために自分を犠牲にする覚悟を決めたドンウンは、ようやく失われた時間を取り戻すのだ。

Netflixシリーズ「ザ・グローリー ~輝かしき復讐~」独占配信中

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