「ビーストウォーズ」声優無法地帯ぶっちゃけ同窓会 イボンコ暴走秘話、エビチャーハンには「ドラマがある」
実写映画『トランスフォーマー/ビースト覚醒』の公開によって人気が再燃している伝説のアニメ「ビーストウォーズ 超生命体トランスフォーマー」(1997~1998)。作品に関係のないアドリブ満載で声優無法地帯とも称された同作から、『ビースト覚醒』の吹替版にも参加した高木渉(チータス/チーター役)、映画では出番がなかった千葉繁(メガトロン役)、山口勝平(ラットル役)、加藤賢崇(ワスピーター役)、音響監督の岩浪美和が再集結し、当時のアフレコ現場や印象的なエピソードを語り合った。(取材・文:編集部・倉本拓弥)
■4人中3人は出番なし…落選理由は「ビーストウォーズ」成分が強すぎるから?
Q:『トランスフォーマー/ビースト覚醒』でビースト戦士たちが実写化されると聞いた時は、どんな心境でしたか? みなさんの続投も期待していたのですが……。
加藤賢崇(以下、加藤):3年くらい前にこの映画が製作されるとネットニュースで報じられてから、「ビーストウォーズ」ファンと会う毎に「ワスピーター出るんでしょ?」と聞かれました。公開が近づくにつれてニュースが更新されると、ワスピーターは出ないらしいことがわかってきて……更新される度に可能性がどんどん減っていきました(笑)。悔しいと思っていたら、(声優無法地帯版)予告編に出演しないかとオファーが届いて、まさかの展開ですよ!
山口勝平(以下、山口):賢崇さんと一緒です! 情報が更新される度に、ラットル登場の可能性が減っていくと思いつつ、子安(武人)くん(オプティマスプライマル/当時はコンボイ役)が出ていれば大丈夫だろうと思っていました。僕としては、チーターのキャスティングが誰になるかが問題だったんです。ここで(高木)渉ならば、新シリーズは3部作と聞いたので、今後ラットルが登場したら絶対オファー来るじゃないですか!
岩浪美和(以下、岩浪):無法地帯版の予告編でも言っていたけど、ラットルを実写化すると巨大なドブネズミになっちゃいそうなんだよね(笑)。
高木渉(以下、高木):『ビースト覚醒』が製作されることは、(山口)勝平くんから聞きました。「チータスっぽいのが出るけど、声やるよね?」と言われたのですが、そんな話聞いてないし、違う人に変わると思っていたので……。その後、岩浪さんから吹替版のオファーをいただいて「よっしゃー!」と思って参加したら、ここにいるメンバーが誰もいなくて……少し心細かったです(笑)。
岩浪:映画の素材を観たら、意外と「ビーストウォーズ」成分が少なくて、どうしようかと……(笑)。飛田展男さん(スカージ役/当時はテラザウラー役)、柚木涼香さん(ナイトバード役/当時はブラックウィドー役)、チョーさん(ストラトスフィア役/当時はタランス役)を違う役でキャスティングして、「ビーストウォーズ」成分を少し補っています。ここにいる(高木を除く)三人は、「ビーストウォーズ」成分が強すぎるという理由で、落選した方たちです(笑)。
千葉繁(以下、千葉):メガトロンは、映画に出たとしても絶対僕じゃないから……。過去作でも別の方が担当されていたので、今回も仮にメガトロンが登場していたとしても、僕ではないという気はしていました。そもそも、映画が真面目なテイストですし、僕は大作映画に馴染まないんですよ(笑)。低予算役者なので、もう少し低予算じゃないと……。でも、渉くんがチーターで出ていますから! 我々の希望の光ですよ!
高木:まぁ『ビースト覚醒』とはいっても、こちら(「ビーストウォーズ」)のテイストに寄せすぎてしまうわけにもいきません。ここにいる全員が出てるよりは、誰か一人が参加して「ビーストウォーズ」を匂わせる程度の方が、いい配分だったのかもしれません。
Q:(高木さん&岩浪さんへ)『トランスフォーマー/ビースト覚醒』吹替版はどんな仕上がりになっていますか?
岩浪:もちろん、当時のノリを期待していた方もいらっしゃると思います。そのための贖罪企画として、今回サービス予告を収録させていただきました。当時の空気感を味わいたいファンのみなさんは、ぜひそちらをご覧ください(笑)。映画は真面目ですが、チーターの第一声は「じゃん」なので、一瞬で「ビーストウォーズ」が帰ってきたと思えるムードになれたのはよかったと思います。
高木:「ビーストウォーズ」観てた世代の武内駿輔くん(ホイルジャック役)が、いっぱいアドリブを入れてくれてね、「やらなきゃ!」と思ったんでしょう。全部「ダメです」って言われて(笑)。武内くん、かわいそうだったなぁ……。
■ 伝説の「イボンコペッタンコ」
Q:放送から26年経った今も、「ビーストウォーズ」は“声優無法地帯”アニメとして多くのファンに愛され続けています。
山口:25年以上も前の作品を未だに話題にしていただいて、本当にうれしいです。時々「ビーストウォーズ」シリーズを観返してみると、「イボンコペッタンコ」の回(注:「超生命体トランスフォーマー ビーストウォーズ リターンズ」第16話オープニング)とか、本当に酷いんですよ……(笑)。「リターンズ」第14話のトークが「今日は名前を逆さまにして言ってみよう!」から始まり、「おいらラットルだからルトッラ」になって、最終的にコンボイが「私はイボンコ」で、イボの子供みたい! ってヒドいこと言ったりしているんです。しかも、僕は当時「イボンコペッタンコ」を言い出したのは渉だと思っていたんですよ!
高木:その後の話でも、ずーっと「イボンコペッタンコ」って言ってた(笑)。
岩浪:「イボンコペッタンコ」はタカラ(現:タカラトミー)さんから本気で怒られました(笑)。
Q:コンボイの「ダメだ! 真面目にやれ!」というセリフもありましたが、実は子安さんの心の叫びだった……?
岩浪:台本にはあったけど、あんなに情熱的に言うとは思わなかった(笑)。コンボイだけはアドリブ禁止だったので、相当フラストレーションが溜まってたんだと思います。
千葉:(コンボイがいないと)話わかんなくなっちゃうんだもんね! 台本には、ヒントっぽいものが散りばめられていて、「これは言っても大丈夫だ」っていうことが汲み取れたんです。
加藤:千葉さんは最初から「ゴーヤーチャンプルー!」しか言っていない芝居とかあって、どこのヒントからそうなったのか、まるでわからないんですよ!
山口:エビチャーハンをずっと言い続けるとか、当時の千葉さんのブームが何となくわかるんですよね(笑)。
高木:しかも、そこにドラマがあるんだよね! ずーっと「俺のエビチャーハンどこ?」って探しているんだから(笑)。
岩浪:「ビーストウォーズ リターンズ」はもともと地上波放送じゃなかったから、何の規制もないし、好き勝手にやらせてもらえたからね。それで、ふざけまくっていたら、後に地上波でも流れちゃって……。「えーーー聞いてないよーーー!」って。事前に聞いていたら、もう少し上品に作っていました(笑)。
千葉:下ネタ&実名がバンバン飛び交っていましたね……。
■ 「ビーストウォーズ」はいろんな意味で勉強になりました
Q:「バナナをわすれた!」(「超生命体トランスフォーマー ビーストウォーズ メタルス」最終話)では、突如モノマネ大会が始まりました。山口さんは別作品で担当している役を披露しようとしたり……。
山口:あのエピソードはほぼ自由でしたね! 今だったら絶対アウトですね。別のアニメを降ろされる可能性があります(笑)。
加藤:本編では、スポーツ選手の中で一番インタビューの声が低い人で、野球の桑田真澄投手とサッカーの中田英寿選手のモノマネをやりましたが、最初リハーサルの時は、貴乃花親方だったんです。岩浪さんから「やめて!」って即NG出されました(笑)。
岩浪:本番後、テレビ局のプロデューサーさん、玩具メーカーさん、代理店さんがみんなで「大丈夫……?」とコントロールルームで深刻な感じで話し合っていましたね。「ビーストウォーズ」スタート直後は殺伐としていたのですが、おもちゃの売上げが上がったら、偉い方々もゲラゲラ笑っていました。
Q:声優無法地帯の中でも特に暴走していたメンバーは?
(山口、高木、加藤、岩浪が一斉に千葉を指さす)
山口:千葉さんは本番で突然違うことを仰ったりするんです。チータスとラットルが敵陣に潜入する真面目なシーンがありまして、メガトロンの台詞は「俺の目が黒いうちは、お前らに勝利はない」だったはずが、本番では「俺の目が黒いうちはお前たちの食卓にエビフライはない!」って変えてきたんです。何か返さないと、渉と二人で「エビフライは嫌いだよーん」と同時に言えた時、今までの経験が生きたと思いました。もうドキドキでしたよ(笑)!
千葉:岩浪さんがベースにあるものを提示してくれるので、「ここまでの振れ幅の中では遊んでいい」ということがわかります。もちろん、僕たちも何をしてもいいというわけではなく、岩浪さんが土台のストーリーに味付けできる部分=隙間を作ってくれていたので、その隙間を自分たちの創意工夫で埋めていくことで、作品がもっと面白くなりました。
高木:「ビーストウォーズ」はいろんな意味で勉強になりましたね!
岩浪:みんなネタ合わせをこっそりやっているから、本番前だけはシーンとしていました。そこだけ切り取れば、すごく真面目な現場に見えるんだよね(笑)。
加藤:キャラクターにセリフを入れるって言うよりかは、トンチ合戦をやりにきたみたいな感じでしたよね(笑)。
千葉:台本に書いてあったもとの文字を消しちゃって、困ったこともありました。誰も信用できないから、4種類ぐらいセリフを書き込んでいたら、岩浪さんから「千葉さんすいません! もとのセリフに戻してもらっていいですか?」という指示がきて……。セリフ消しちゃったから「何て書いてあったっけ?」って周りに聞くのが日常茶飯事でした。
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当時のエピソードを語り出したら止まらない5人は、25年以上経っても冷めることのない「ビーストウォーズ」愛を爆発させていた。“声優無法地帯”はこれからも伝説として語り継がれる。『ビースト覚醒』続編が実現し、今度は4人揃って“リターンズ”する日がやってくるのを楽しみに待ちたい。
映画『トランスフォーマー/ビースト覚醒』は全国公開中
アニメ「ビーストウォーズ 超生命体トランスフォーマー アゲイン」はテレビ東京系列6局ネットにて毎週日曜朝9時15分~放送中
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