山崎賢人『陰陽師0』観たらすごかった！

　映画『キングダム』シリーズや『ゴールデンカムイ』と世代を超えて多くの観客の心をつかむ大作の主軸を担い、いつでも“次なる一手”が注目される俳優となった山崎賢人（崎＝たつさき）。最新主演作『陰陽師0』で彼が演じるのは、平安時代に実在した最強の呪術師、安倍晴明。まだ学生の晴明に、ある怪奇現象についての相談が。やがて平安京を巻き込み、恐るべき大事件へ発展します。若き晴明、その天才的な呪術の力はいかに爆発するのでしょう？　恋あり友情あり、ド派手なアクションを織り込んだ“呪術エンターテイメント”。その中身とは？

27歳の安倍晴明、学生時代がすごかった！

　山崎演じる安倍晴明は、平安時代に政治の中心的役回りを果たした省庁であり、陰陽師の学校でもある「陰陽寮」で学ぶ27歳の学生です。『ハリー・ポッター』がホグワーツ魔法魔術学校で魔法を教え、「呪術廻戦」の都立呪術高専で虎杖悠仁が呪術を身につけるように。

　一方で晴明は「狐の子」と噂され、「呪術の天才」と一目置かれながら高い地位を得ることに興味を示さない、筋金入りの変わり者です。まずは、そんな晴明の立ち姿の美しさにハッとします。人の心を射るような眼差し、周囲と異なる次元に生きるような佇まい。その全てが“こんな山崎賢人は見たことない！”と思わせるのです。

　それでいて晴明は、学生ながらすでに只者ではない呪術の才を備えています。複雑なカタチに指を組み合わせ、呪文を唱えるときの動き。それは優雅で鋭く、晴明がケタ外れの人物であることに説得力を持たせているのです。

激アツ！晴明と源博雅のバディ感がすごい

　貴族の源博雅が、晴明を訪ねて陰陽寮を訪れます。博雅役には若き演技派、染谷将太。博雅はいとこで元斎宮、伊勢の神宮に奉仕した徽子女王（よしこじょおう）を悩ませる怪奇現象を解決しようとしていました。学生なのにふてぶてしくさえある晴明と、醍醐天皇の孫で高名な雅楽家ながら素直な人柄がにじみ出る博雅。二人は不思議とウマが合い、やがて絆を深めます。

　共に巨大な陰謀に立ち向かう道中、あるときは晴明が絶望した博雅に「俺を信じろ！」と力強く言い、博雅は「目を背けるな！　事実だけを見るんじゃなかったのか」と追い詰められる晴明を救おうとする。その関係性は命を預けあう“最高のバディ”。若さゆえの純粋な必死さも加わり、豪華絢爛なエンタメ大作の中で、人間ドラマの奥行を深めるのです。

切ない恋模様にグッとくる！

　博雅は、徽子女王のためにと行動します。晴明や博雅同様に、実在した皇族の姫・徽子女王にふんするのは奈緒。奈緒はこれまで、さまざまなふり幅はあっても、等身大の女性を演じてきました。そんな彼女が持つ親近感、どこか温かみのある美しさが、平安時代の天皇家の一員という、観客の誰にとっても遠いはずの女性を身近な存在に近づけます。そのせいかいとこ同士である博雅との微妙な距離感や、互いへの秘めた強い想いのやりとりに惹きつけられるのです。

　また佐藤嗣麻子監督による丹念な演出は、俳優たちの渾身の演技を引き出します。黙って徽子女王を見つめる瞳に想いがあふれる博雅、うまく想いが伝わらないことへの失望で一瞬にして心が凍る徽子女王。恋愛の要素は、彼らの演技によって色濃く刻まれます。

犯人はだれ？スリルのある展開がすごい

　「呪（しゅ）」とは暗示や催眠術のようなもの。そうした呪いや祟りから都を守るのが陰陽師です。一流の陰陽師を目指す学生たちが集う陰陽寮を舞台に、晴明が謎の怪奇現象を捜査するうちに、ある学生が変死。さらなる事件に巻き込まれます。また晴明自身、両親を死に追いやった人物を探し続けてもいました。誰が殺人を犯したのか？　邪悪な陰謀から生まれた「呪」に、晴明はいかに立ち向かうのか？　観る者は、幾重にも巧みに練り込まれたストーリーにのめり込むことになります。

　人の作ったストーリーを信じてしまう－－。それはネット上のフェイクニュースに心を乱されがちな現代を生きるわれわれの物語でもあります。そこに晴明のまるで舞うような、重力を感じさせない、人間離れしたアクションが炸裂します。

目を奪われる！映像の美しさがすごい

　さらに衣装やセット美術、最新のVFXを駆使した映像の美しさが映画に文字通りの“彩り”を添えます。中でも見ものは、『ゴジラ-1.0』で米アカデミー賞視覚効果賞受賞の快挙を成し遂げた「白組」のVFXです。それは平安京の雅な世界を華麗に再現するだけではありません。本来、晴明自身にしか見られない彼の視点を、観客の目の前に具現化させます。

　VFXでなければ成しえなかった“圧倒的な美”。例えば博雅と徽子女王が対面し、色鮮やかな無数の花が咲き乱れるシーン。その色彩の洪水は、一瞬で永遠のときのようなきらめきをスクリーンに焼き付けます。ただ観るだけで、美に対する意識が新たに覚醒するかのような美しさです。

　若き安倍晴明が最凶の「呪」に挑む－－。『陰陽師0』は何重にも作り手の熱が込められた、純和製の“呪術エンターテイメント”なのです。（文・山崎麻見）

映画『陰陽師0』は4月19日より全国公開
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映画『陰陽師0』予告編

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