山田姫奈x宮原華音x桃月なしこ、特撮アクションを経て目指すもの 「SHOGUN’S NINJA-将軍乃忍者-」インタビュー
ウルトラマン・仮面ライダー・スーパー戦隊など数多くの特撮作品を手がける坂本浩一監督が世界に向けて発信する、新たな特撮アクション時代劇「SHOGUN'S NINJA-将軍乃忍者-」。ダブル主演を山田姫奈(「ウルトラマンブレーザー」)と宮原華音(「仮面ライダーガッチャード」)、物語の中核を担う女性キャラクター役を桃月なしこ(「魔進戦隊キラメイジャー」)が務めるなど、特撮ゆかりのキャストが集結した。本作で初共演した3人がインタビューに応じ、坂本監督が演出する本格アクションの裏側、特撮界のレジェンドを相手に迎えた白熱のバトルシーンを振り返った。(取材・文:編集部・倉本拓弥、写真:杉映貴子)
「SHOGUN’S NINJA-将軍乃忍者-」の主人公は、江戸の町で萬屋を営む篝火(山田)とお喬(宮原)。風魔忍者の一族の末裔である二人は、一族の再興を願い、日々町人たちの依頼を解決して食いつないでいた。ある日、町一番の娘として知られる友人のお蘭(桃月)が、謎の集団に突然襲われる。彼らは将軍家直属の剣術指南役を務める柳生家であると名乗り、「将軍の命」によってお蘭を連れ去ってしまう。篝火とお喬は抵抗するも、柳生家の剣術に手も足も出ず。さらに柳生家は、風魔一族を滅亡に追い込んだ張本人だったということが判明し、復讐とお蘭奪還に燃える。
アクション開眼のきっかけ

Q:出演オファーが届いた時の心境は?
山田姫奈(以降、山田):やっと坂本監督と一緒にできることが、とても嬉しかったです。「ウルトラマンブレーザー」の出演は坂本監督が推薦してくださって、「ブレーザー」ではご一緒できなかったのですが、ずっと「一緒にやりたいね」と話をしてくださって、その願いがようやく叶いました。
宮原華音(以降、宮原):坂本監督とは10年近くの付き合いで、毎年のようにお仕事をさせていただいているのですが、初主演をいただけた嬉しさもあり、同時にプレッシャーも感じていました。
桃月なしこ(以降、桃月):(「魔進戦隊キラメイジャー」で演じた敵幹部)ヨドンナのスピンオフ4作品を全て坂本監督に撮っていただいて、「ヨドンナ」の撮影現場がすごく楽しかったので、特撮以外の現場でもご一緒できたらいいなと思っていました。こんなにも早くご一緒する機会ができて、すごく嬉しかったです。

Q:3人共に特撮作品でアクションを経験されていますが、ご自身がアクションに目覚めたきっかけとなった出来事や作品はありますか?
山田:私は、初主演映画がアクション作品でした。師匠に出会い、最初の3か月はその作品のためにガッツリ練習していました。アクションが好きっていうよりかは、「ダブル主演だった相手に負けたくない!」「悔しい、絶対に勝つ」というなにくそ根性でやり続けていました。当時は「アクションは向いていないからやめろ」と言われるほど、全くできなかったのですが、やり続けたら形になってきて、それが作品になったら「なんて楽しいんだ!」という気持ちになり、そのまま師匠に弟子入りして、ハマっていきました。
宮原:映画『ハイキック・ガール!』(2009)を観た時、空手日本一だった私は「空手映画なんて……」と正直ナメていたんですが、いざ観たらすごすぎて……。X(旧Twitter)に『ハイキック・ガール!』がすごすぎたと投稿したら、(映画を手がけた)西冬彦監督から、「一緒にアクション練習してみる?」とリプライが来たんです。道着を着て、いざ練習に参加してみたら、西監督から「次の作品、お前を主演にするから。やる気はあるか?」と言われて、そこから3か月、部活のように毎日練習して、西監督が手がけた『ハイキック・エンジェルス』(2014)で主演デビューしました。
桃月:初めて殺陣を経験したのは舞台でした。役が決まるまでは、身体を動かしたことが全然なくて……。経験者ばかりの中、1人だけ初心者で、めちゃくちゃ下手くそな状態がトラウマでした。作品の質を落としてしまっていることが嫌になって、二度と殺陣はやりませんって言っていた中、「キラメイジャー」のヨドンナ役が決まりました。ヨドンナは、もともとアクションをやる役ではなかったのですが、登場シーンでキラメイイエローを蹴っ飛ばす軽いアクションがあって、いざ挑戦してみたらすごく楽しくて!「アクション、楽しいです! もう少しやってみたいです」と言ったら、結果的にめちゃくちゃアクションをするキャラクターになりました。ある意味、「キラメイジャー」が自分のトラウマを払拭してくれた作品になりました。
“ミスター平成仮面ライダー”との死闘

Q:「SHOGUN’S NINJA-将軍乃忍者-」でみなさんが演じたキャラクターの魅力、演じる際に意識していたことはありますか?
山田:篝火はオンオフがすごくしっかりしているキャラクターです。自分の確固たる信念があるので、そこを曲げられないからこそ、だらける時はだらけるし、行くときは行くと決めています。一つ一つの行動の目的がはっきりしていて、すごく好きなキャラクターです。
宮原:お喬は仲間思いで、情に厚いところが魅力的です。もしかしたら最善の策ではないかもしれないけど、とにかく助けたり、自分より他人を大事にする部分が好きです。私も人見知りで、周りと積極的にコミュニケーションを取るのが苦手なタイプなのですが、今回は頑張って、いろいろな人と話そうと思いながら演じて、少しでもいいから、演者の人柄を知って作品に挑みたいという思いがありました。
桃月:お蘭は、ほぼ私です(笑)。“町一番の娘”という美少女的なキャラクターで、守られる側かと思いきや、強気な部分もあり、戦えるわけでもないのに戦場に向かうかっこいい姿もあります。役づくりをするよりかは、素に近かったかなと思います。演じていて楽しかったです。

Q:(山田さん&宮原さんへ)劇中では、“ミスター平成仮面ライダー”の異名を持つ伝説のスーツアクター・高岩成二さんがラスボス・柳生宗矩にふんして、篝火&お喬と死闘を繰り広げました。高岩さんを相手にしての2対1のバトルシーンはいかがでしたか?
宮原:高岩さんと戦えることが今までなかったので、すごく光栄でした。
山田:私たちは前日がお休みで、高岩さんとの戦いを練習してから本番に挑んだのですが、高岩さんはその日に振り付けを入れて、丸1日アクションをやり続けていて、しかも、ちゃんと(動きを)頭に入れて、いい場所にいてくださるんです。
宮原:2対1で向かっているのに、勝てなさそうな感じがしました。姫ちゃん(山田)が戦っている最中に、私が後から合流する展開だったので、「本気で行かなきゃ本当にやられる」と思いました。私は感情で行きすぎてしまい、正確さが落ちることもあるのですが、高岩さんは百発百中いいところに来てくださるし、圧はあるけど痛くなく、怪我しないようにコントロールされているので、すごくありがたかったです。普段は仮面をして視界が狭い中で正確さを追求している高岩さんだからこそ、視界全開だったら無敵状態です(笑)。
山田:とにかくアクションのディテールが細かい。さまざまな仮面ライダーを演じてきて、それぞれ動きを変えていかなきゃいけないから、すごく繊細な動きが身についているのだと思います。全ての作法が美しかったです。
坂本組で変身したい!

Q:こちらは坂本監督から預かった質問です。坂本組に再び参加することになったら、次はどんな役に挑戦したいですか?
山田:変身したいです!
桃月:私も変身したい! そして正義側もやりたい!!
宮原:私、変身しちゃったなぁ……。(※坂本監督も参加した「仮面ライダーガッチャード」で仮面ライダードレッド弐式に変身済み)
桃月:特撮以外であれば、百合作品をやらせていただけないかと……お待ちしております。
宮原:私は普通の人間を演じたいです(笑)。アクションはもちろんありで、普通の生活をしている人をやりたいです。(坂本監督が原案・総監督を務めた)舞台「NINJA ZONE ~FATE OF THE KUNOICHI WARRIOR~」ではくノ一役、「仮面ライダーガッチャード」では人間ではない役、『妖獣奇譚 ニンジャVSシャーク』では少し気が狂っていたキャラクターだったので、普通の女の子で強い役に挑戦したいです。

Q:今後の俳優人生において、アクションはどの程度まで極めていきたいですか?
宮原:私が目指しているのは、海外で通用するアクションです。日本には海外のように綺麗なドレスやヒールを履いたままアクションをする作品があまりないので、身長を生かして、海外作品に出ても負けないアクションをやりたいです。ガンアクションもさらに極めたいと思っています。
山田:私も海外を意識しています。「ウルトラマンブレーザー」に出演した時、自分の本当にやりたいことが終わったと思ったんです。役者は続けたいけど、卒業式みたいな感覚で挑んでいて、次の役者人生をどのように歩んでいきたいのか悩んでいた時に、「ウルトラマン」をきっかけに世界中の人たちと出会って、アクションを特に褒めてくださったり、(自分のアクションを見て)「元気が出た」「頑張ろうと思いました」と言ってくださって、アクションであれば言葉が通じなくても世界に行けるということを実感しました。役者人生の第2弾として、アクションを通じて世界中の人たちに作品を届けていきたいです。
桃月:「アクション女優」まではいけないことを、二人を目の前にして、身に染みて感じましたが……でも「ここでアクション入れようか」と言われた時に、動けるぐらいにはなっておきたいです。全く動けないことは嫌なので、今も定期的に坂本監督からアクションを教わったりしています。多少は動ける、受け身は取れる状態に常にしておきたいです。そして、可能ならばもう少し上達したいです!
【取材後記】

“負けず嫌い精神”でアクションを習得してきた3人は、吹き替えなしのアクションにこだわる坂本監督と相性抜群。活気あふれる坂本組の撮影現場は「部活みたいな雰囲気」だという。特撮作品で磨かれたアクションは、「SHOGUN’S NINJA-将軍乃忍者-」でより洗練され、新たな境地に突入した。海外でも活躍する坂本監督の下、己のアクション街道を突き進む3人が今後どんな“変身”を遂げるのか。再タッグ作が今から待ち遠しい。
「SHOGUN’S NINJA-将軍乃忍者-」は Prime Video チャンネル「時代劇専門チャンネルNET」で国内配信中、YouTubeチャンネル「SAMURAI VS NINJA」にて海外配信中