岸辺露伴の衣装、コンセプトは中世の修道士!人物デザイン監修・柘植伊佐夫が解説

荒木飛呂彦の人気コミック「ジョジョの奇妙な冒険」のスピンオフ「岸辺露伴は動かない」を高橋一生主演で実写化する映画の第2弾『岸辺露伴は動かない 懺悔室』(公開中)。実写シリーズの楽しみの一つが、ドラマ4期(2020・2021・2022・2024)、映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』(2023)と全作にわたって人物デザイン監修として参加してきた柘植伊佐夫の手掛ける衣装。主人公・岸辺露伴(高橋)、その相棒となる担当編集・泉京香(飯豊まりえ)、新キャラクターの田宮(井浦新)、マリア(玉城ティナ)、ソトバ(戸次重幸)、水尾(大東駿介)の衣装の裏側を、柘植のコメントを交えて解説します。
岸辺露伴(演:高橋一生)
人の心や記憶を本にして読み、さらに命令を書き込むこともできる “ヘブンズ・ドアー” という特殊な力を持つ漫画家。ベネチアの教会で、仮面を被った男の恐ろしい懺悔を聞いたことから「幸せの絶頂の時に“絶望”を味わう」呪いが降りかかる。シリーズを通じてのキーカラーとなるモノトーンの衣装で、基本コンセプトは「中世の修道士」。ロングシャツドレス、ジャ ケット、ジレ、ダスターコートなど。
「『中世の修道士』としたのは、映画のタイトル『懺悔室』からに尽きます。信仰、祈り、呪いに関係していると思います。加えて、金属製の装飾をつけたりすることで少し現代に寄せています。ダスターコートに関しては、当初は予定していなくてスタンダードな形状だったんですけど、何かが足りないように感じ、一生さんと相談しながら変更しました。ジレやシャツの袖も長めにしたのも中世的なるもののイメージで、シャツの袖はかなり細かくやり取りしていて。 紐をつけて、縛ることによって長さを調節できるようにしています。パンツについているスタッズ(飾り鋲)に関してはジョジョの熱狂的なファンでもあるスタイリストの羽石輝くんの提案で取り入れました」
泉京香(演:飯豊まりえ)
大手出版社「集明社」に勤務する露伴の担当編集。原作エピソードには登場しておらず、 衣装デザインはすべてオリジナル。映画第1弾『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』ではパリの街並みに合わせ、黒、ベージュ、紫など抑えた色味だったが、今回は彩度をあげ黒、白のほかショッキングピンクを用いている。
「ベネチアのロケーションが、意外と僕が思っているよりも色彩豊かだったというのが大きいです。加えて、京香が担うのは『生命力』なので、マジェンダ寄りのピンクを用いました。我々の間ではショッキングピンクと呼んでいました。このコートのほかに、バルーンのマシュマロみたいな色違いのジャケットを作りました。オペラ鑑賞のときが白、結婚式の時が黒。これまでの京香の文脈ではあるんですけれども、今回は少しだけ異質な感じにしようと思いました。京香が少し変化してきている感じです」
田宮(演:井浦新)
岸辺露伴に「懺悔室」で自らの犯した「あやまち」を告白する謎の男。黒の山高帽にコー ト、白シャツに赤のネクタイを着用。原作エピソードのデザインとは大幅に変わっており、ルネ・マグリットの絵画「人の子」をモチーフにしている。井浦とは彼がモデル時代からの付き合いで、井浦が崇徳上皇を怪演した大河ドラマ「平清盛」(2012)でも組んでいる。
「新さんを見たときに直感でマグリットにしたいと思った感じです。なぜマグリットだったのかはわかりませんが、新さんがジョジョの大ファンで、そうした背景をまとっていたからなのかも しれません。新さんのお顔の小ささや、身長の高さ、縦長感、揺らぎ、そしてジェントルな雰 囲気っていうのがマグリットの『人の子』にドンピシャだと思ったんですよね。あとはマグリットのコンセプトの一つに物事の二重性、表に表れていることが全てではないということがあるので、その意味でも『懺悔室』のテーマと近いように感じました」
マリア(演:玉城ティナ)
露伴が出会う仮面職人。ミッドナイトブルーのドレス、マントなど。キーワードは「聖母マリア」。京香と同様、ドレスやアクセサリーなど全てオリジナル。
「マリアは聖母マリアのイメージで描きたいと思ったので、青は絶対に出そうと思っていたんですね。ロケーションをはじめ映画全体のキーカラーが赤だったので、青を加えることで聖母マリアの象徴色である赤と青を表せる。なおかつ、僕の場合は一人のキャラクターに役割を担わせるのではなく、全体にちりばめて連続性を持たせるスタンスなので、露伴のコートのボアにミッドナイトブルーを取り入れたりしています。マリアが身に着けている不吉ジンクスのアクセサリーも既製品ではなく手作りです。逆さのテントウムシのピアスは七宝で金と黒、割れた鏡のブローチはオーバル形(卵形)。鏡の割れ方をリアルに寄せるのか、デフォルメにするのか悩みました」
ソトバ(演:戸次重幸)
田宮が告白する恐ろしい話のカギを握るホームレス。デザイン画には「イタリア新聞」「トレンチのソデトル」といったユニークなアイデアが。靴が左右異なるのは原作を踏襲。
「ソトバも露伴のデザインを踏襲して『中世』『Aライン』がポイントです。襟元と袖口に新聞紙を突っ込んでいるのは防寒という目的がありますが、それはあくまで表向きの理由で。露伴の中世的な装飾をリンクさせたい意図です」
水尾(演:大東駿介)
ソトバを死なせてしまったことで、幸運に襲われる呪いをかけられてしまった男。茶革のブ ルゾン、グリーンのスカーフ&タートル。髪型はモヒカン風。
「水尾は、髪型が大事で。原作の特徴的な形状をそのままトレースするわけにもいかないと思ったので、ナチュラルな表現でする方法を模索していきました。茶色の革のジャケットとグリーンのスカーフに関しては、なぜそうしたのか自分でも理由がわからなくて。ただ、他のキャラクターたちは黒、赤、黒だったりするのでグリーンが重要だと思ったし、実際に効いているように思いました」
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